リテールアジェンダ2022レポート #03

シェアードサービスをBPOに切り替え、トリドールホールディングスがDXを推進する上で大切な覚悟とは?【リテールアジェンダ2022レポート第2回】

 

社員一人ひとりのキャリアプランを面談


鈴木 シェアードサービス会社にする会社は比較的多いですが、ここからがさらにすごいと思います。

磯村 最終的には、シェアードサービス会社の業務をすべてBPOに出し切り、会社を清算しました。そして、ホールディングスの持株会社から、直接BPOベンダーをコントロールしました。

鈴木 ここでビジョンが出てくるわけですよね。

磯村 はい、そうですね。このシェアードサービス会社の社員は100人以上いました。その社員一人ひとりと面談を行い、自分自身の将来をどのように描いているのか、きちんと対話しました。実際に、社員には解散するという方針も半年以上前には伝えて、一人ひとりのキャリアプランについて話をしました。企画や戦略をやりたいという人には、持株会社に転籍してもらい、いまと同じ業務に取り組み特定業務の専門家になりたいという人には、BPOに転籍してもらうなどの選択肢をつくりました。

それからDXの推進体制については、CIO/CTOがDX推進、BPO推進、データマネジメントを統括するBT本部の責任者を兼務し、グループ会社のバックオフィス業務を担うシェアードサービス子会社の社⻑も兼務することにより業務改革を強力に推進しています。
  
トリドールホールディングスのDX推進体制(2022年8月25日(木)時点)
 

DXを推進する上で、大切なこと


鈴木 最後にDXを含め、変革や改革を進めるのに一番大切なことは何でしょうか。

磯村 まず、DXの推進責任者は事実を把握しなくてはいけません。どのような事実かというと、7つの事実を把握するようにしました。
 
  1. 経営方針、自社の強み
  2. 中長期経営計画
  3. 全部門の業務上の課題やシステムへの要望
  4. IT設備投資額の累計、現在の残存簿価(ITの事実を金銭面で把握するため)
  5. 実際のIT費用(通信費、システム利用料)
  6. IT部門の人件費(社内工数、業務委託費)
  7. 全部門の人件費(社内工数、業務委託費)

これら7つをすべて把握するようにします。これを踏まえてDX戦略を立案するのですが、少人数のチームが機動性が高く、我々は3人で実行しました。

立案にあたり、まず目的と完成イメージの共有のために「DXの目指す姿」をつくりました。次に、DX推進のシナリオとして、完了年月とフェーズ分けを行い、さらにDXの初期費用やDX前後の年間ランニング費用を明確にしました。最後に、DX開始から終了までのPL・BS・キャッシュフローに、どのくらい影響するかを出しました。これがDXを推進する計画の骨格です。

そして、DXの推進には、2つの重要なことがあります。ひとつ目は、DXの進捗状況を取締役会や各部門の責任者に定期的に報告することです。たとえば、社外取締役は状況を理解しにくい環境にあるので、特に報告が重要になります。ときには、理解してもらうのに3時間ぐらい一方的に話し続けるなど、最初は辛い業務です。それでもきちんと対話することが本当に重要です。2つ目は、DXトピックスを社内外へ告知することにより、社内の従業員が外から自社を見たときに、他社と比較してDXが進んでいることを認識してもらうことも重要です。

鈴木 本当に参考になることばかりだと思います。最後に、ここまでの話を含めて磯村さんが一番大切していることは何ですか。

磯村 やはり「覚悟」だと思います。
  
対談中の鈴木氏(左)とDXを推進する上で最も大切なことを「覚悟」と語った磯村氏(右)

鈴木 そうですよね。特にシェアードサービス会社の清算という決断には、覚悟がいりますよね。覚悟をもって実行することが非常に大切なんだと改めて思いました。このセッションの事前打ち合わせで、磯村さんと話していましたが、「結局は、覚悟を持って未来へ進むしかないよね」という部分は一致しました。

日々の業務でも、常に常識を疑ったほうがいいと思います。そして自分自身がこのような未来をつくりたい、という覚悟をもって進めていくとDXも自分がやりたいことも実現するのではないかと思います。本日は、磯村さんありがとうございました。

磯村 鈴木さん、ありがとうございました。
  
対談後の鈴木氏(左)と磯村氏(右)
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