ダイレクトアジェンダ2023座談会 #01
2023年 ダイレクトマーケティングの最新潮流、ユナイテッドアローズ、ヤフー、mederiのキーパーソンが議論【ダイレクトアジェンダ2023座談会】
2023/02/15
2023年3月23日から25日にかけて、直販・通販事業に携わるトップマーケターが集結する合宿型カンファレンス「ダイレクトアジェンダ2023」が鹿児島で行われる。開催にあたり、カウンシルメンバーであるユナイテッドアローズ チーフデジタルオフィサーの藤原義昭氏、ヤフー リテールEC事業本部長の輿水宏哲氏、mederi 代表取締役の坂梨亜里咲氏の3人がダイレクトマーケティングの最新潮流をテーマに座談会を実施。前半では、2022年におけるダイレクトマーケティングの振り返りや2023年のポイント、お客さまと継続的な関係を築くための方法などを聞いた。
コロナ禍で低迷していた需要がぐっと盛り上がった2022年
――2022年はダイレクトマーケティングの潮流について、どのように感じましたか。
藤原 義昭 氏
藤原 やはり、コロナ禍の影響をなくしては語れないでしょう。2020年から、外出しにくくなったことにより「必要になったもの」と「必要ではなくなったもの」が生まれ、大きく伸びた業界もあれば、逆に下がった業界もあったと思います。我々のようなアパレルは、どちらかというと必要ではなくなったものでした。
しかし、昨年の夏ごろから、それまで消費者が我慢をしていた分の需要が戻り、盛り上がってきました。実際に、ECと店舗の売上比率で見ると、店舗での売上が大きくなっています。そのため、昨年はその動きに合わせてコミュニケーションを変えたり、在庫の在り方を意識したりしながら、細かい調整をしていましたね。
輿水 藤原さんの言う通り、「リオープニング(経済再開)」の影響は間違いなく受けています。それによって、コロナ禍で追い風を受けていたプレイヤーほど、今では逆風になりやすいのではないかと思います。ただ、一度ECを使い始めたお客さまがECを使わなくなるということは考えにくいので、あくまでも短期的な影響です。
もうひとつ昨年は、資源高や物価高の影響も大きかったですね。商品・サービスの価格は上がっているのにもかかわらず、消費者の可処分所得自体は上がっていません。むしろ電気代などの必要経費が上がり、可処分所得はマイナスになっているとも言えます。
我々は日用品や食品を扱っていますが、お客さまの行動を見ていると、たとえば1ケース購入していたビールを6缶パックに変更するなど、バスケット単価(お客さま1人当たり購入総額のこと)を上げないように工夫して買い物しているなと感じます。もちろん社内では、「値上げしたら受け入れられるのか」という議論をかなりしていますが、そんなに甘くないなということを感じていますね。
輿水 宏哲 氏
坂梨 私たちの事業では、同梱物の一部で倍の値段になってしまうようなことが起きていて、事業主としてどこまで価格を改定するかはお客さまの反応を見て、常に考えていますね。
藤原 今のお客さまは、賢く買うシーンと我慢するシーンを考えているかもしれないですね。お客さまにとって本当に欲しいもの、必要なものであれば、客単価を上げることもできるのではないかと思います。
輿水 そうですね。値上げしているのにまったく売上金額が落ちていない商品も実際にあるので、二極化しているなと感じています。2023年は、より売れるものと売れないものがはっきりするのではないかという気がします。mederiさんは、サービスを使い始めたら、価格で選ぶサービスでもないと思うのですがどうですか。
坂梨 亜里咲 氏
坂梨 私たちは、生理に悩む女性に寄り添ったオンラインピル診療サービスを提供しています。ただ、ピルは飲み始めると継続しなければいけないので、価格にシビアな人が多い印象です。1回ではなく、継続したときの金額を気にするので、毎月の固定費のようにとらえられています。そのため、どちらかというと本当に価格にこだわりたい商品になってしまっていると思います。
ダイレクトマーケティングの潮流については、2022年は新しく出てきたスタートアップに注目していました。フードロスやSDGs、サステナブルなどを意識したサービスが増えたという印象が強いです。
一方で、2019年ごろに非常に多かったパーソナライズのサービスは減ってきた印象です。既存の企業がパーソナライズ化したものを提供するようになったので、スタートアップならではの商品・サービスは生まれにくくなってしまったのかなと思っています。