ダイレクトアジェンダ2023座談会 #01
2023年 ダイレクトマーケティングの最新潮流、ユナイテッドアローズ、ヤフー、mederiのキーパーソンが議論【ダイレクトアジェンダ2023座談会】
2023/02/15
より変化が求めららえる2023年のダイレクトマーケティング
――これまでのお話を踏まえて、2023年のダイレクトマーケティングのポイントは何だと思われますか。
坂梨 スタートアップが価値を出せるという点では、もう少し「社会事」化したサービスや、これまでになかったようなものがより求められ、今までの活動を継続しているだけではお客さまが離れていってしまうと思います。ただ、SDGsやサステナブルにはまだまだ課題が多いので、その中で盛り上がっていくのではないでしょうか。
藤原 私はSDGsをひとりの消費者として大切に思う一方で、企業人として、あるいは事業者として推進するのであれば、自分たちが一方的に提供するのではなく、お客さまと一緒につくっていかなければいけないと考えています。
なぜかというと、サステナブルな商品はどうしても単価が上がってしまうからです。消費者リサーチでも、「SDGs」や「サステナブル」という理由だけで購入しますかと聞くと、「ほぼ買わない」という回答がほとんどです。そのため、それをしっかりと事実として受け入れながら、世界観やお客さまとの関係性をうまく構築して伝えていかなければならないと思っています。
2023年のダイレクトマーケティングについて語る藤原氏
さらに言えば、2023年のアパレルでは、「個人メディア」がキーワードになると考えています。世の中全体として、個人の時代となっていることがその背景です。ただ、広告やPR、販促の施策、ものづくりにおいても、個人の力が大きくなっています。デジタルの発達によって、社内のスタッフ個人にもファンがつくようになっていますし、2022年は外部のインフルエンサーも巻き込みながら、プロジェクトとして世の中に影響を及ぼしていくということが少しずつできてきました。そのため、2023年はそういった動きがもっと大きくなるのではないかと思います。
輿水 その動きは出てくると思いますね。コロナ禍と比較しても、やはりお客さまの外出も増えてきましたが、可処分所得が減ってしまっているので、みんな何にお金を使うかをシビアに考えるようになっています。そのような状況の中で、2022年と同じようなマーケティングを行っていては、たとえこれまで好調だった商品・サービスであっても、つまずいてしまうことが多くなるのではないかと思いますね。
ECに限った話では、ここ3年で特にEC化率が劇的に伸びたカテゴリもあり、リアルから利便性の高いECにスイッチするという、消費者のチャネルシフトだけで成長できた企業もあるでしょう。今後は、コロナ禍から脱してリオープニングになる、かつEC化率もそこそこ高まっていることから、一気に伸び悩むということも出てくるのではないかなと思います。これは米国や中国の話を聞いていて、日本も同じ流れになること感じますね。
また、SDGsに関しては、長らく取り組んできて少しずつ受け入れられていることが増えてきたことは実感しています。以前は、化粧品メーカーさんがアウトレット商品の提供はできないと言っていましたが、最近では協力してくれるなど変化も感じています。
自社での取り組みについて語る輿水氏
藤原 そうですね、企業にもお客さまにも言い訳が必要だと思います。そこをしっかりとマッチして、ブランドが崩れないことを確認する作業が必要ですよね。
輿水 お客さま視点から見ても、理解が進んできていると思います。以前では、ブランドイメージが悪くなる面もありましたが、現在ではアウトレット商品を扱っているほうが、地球や世の中のことを考えていると思ってもらえます。
すでに、ニューヨークでは紙の洗剤ボトルが増えているんですが、まだ、紙のボトルはプラスチックよりも値段が高いです。ただ、店員さんに聞いたら紙のほうが売れている地域もあり、環境に対する意識が非常に高い人が増えているんです。
藤原 海外は、SDGsへの寛容度が高いですよね。ただし、地域や収入などによっても差があると思うので、そこを見極めたうえでプロダクトの価格戦略を立てることが必要だと思います。
たとえば、現在では我々でもポリエステルの服が増えているのですが、私や輿水さんの世代はポリエステルの素材は安いようなイメージを持っていて、コットン100%がいいと思っています。ただ、今はポリエステルが再生できる素材なので、今の時代に併せた素材であると捉えることができるんです。昔のパーセプションだけでは、判断できないことが現代ではあるので、その辺りの変化をお客さまに伝えていく必要があると思っています。
坂梨 今、リサイクルポリエステルが使用された服も増えていますよね。まさに、視点を変えて、伝え方を変えることでお客さまにも受け入れてもらえると思いますね。