ダイレクトアジェンダ2023レポート外伝 #03
WBCで日本代表が優勝した背景も分析。そこにはI-neの社員教育と三井住友カードのアジャイル運営が隠されている!?【ダイレクトアジェンダ2023レポート外伝 第2回】
2023/05/01
社員のモチベーションをあげるアジャイル型の利点
続いて、三井住友カードの佐々木氏から「ゼロから立ち上げて、進化し挑戦する組織や人材育成について」の話が語られました。以下、佐々木氏のコメントを紹介していきます。
佐々木 近年、キャッシュレス決済市場は凄まじい勢いで拡大していますが、それと同時に顧客ニーズの多様化や、厳しい競争に見舞われています。
デジタルプレイヤーとして競争の源泉である機動性や顧客嗜好を取り入れていかなければ、競争力を失う可能性があるという危機感のもと、「顧客価値」に根差したスピーディな意思決定を実現するためにアジャイルな働き方を取り入れました。
アジャイル組織の形成は、変化する顧客の声を聞き、徹底的に顧客価値を追求することで、顧客のニーズに応える商品やサービスを提供できます。また、意思決定のスピードが遅く責任範囲がわかりにくい“大企業病"から脱却し、デジタルプレイヤーのスピードに対抗できる機動的な業務運営を実現することが狙いでした。
結果的に、デリバリースピード、生産性、顧客価値、従業員モチベーションの4つのメリットが生まれます。
佐々木 丈也 氏
藤原 とはいえ、いきなりアジャイル型の組織にするのは難しいと思います。どのようなプロセスでこの組織体系にしたのですか。
佐々木 それまでは、マーケティング機能が各部署に点在していて、予算もKPIもバラバラで、横断的に顧客ベースでみるべき指標が管理できていませんでした。まずは、2年ほど前にマーケティングを本部化し、お客さま起点で横串の役割と各事業のKPI押し上げ、全体の売上創出をミッションとしました。
その後、マーケティング本部の機能が十分に役割を果たしてきたタイミングで、2022年の途中からアジャイル型の編成に変え、現在では25以上のプロジェクトに取り組んでいます。
当初は反対もありましたが、既存の部署からアジャイル組織に人員を出すことも評価に入れました。結局、部下の成長につながり各部署に還元されるので、得しかないような制度も含めて設定しています。
また、アジャイルのプロジェクトオーナーには、部長待遇の権限委譲しています。そして、取り組んだことのないメンバーばかりなので、実践しながら学んでいけるように「アジャイルプレイブック」をつくり、インプットしながら進めていけるようにしています。
藤原 実際に、アジャイル組織にしてから数値の変化はありましたか。
佐々木 はい、スプリントプランニング(スプリントのゴールを話合い、そのゴール達成のために必要な作業計画を立てるイベントのこと)を徹底することで、無駄な会議への参加がなくなったので、コアメンバーは業務に集中することができるようになり、当事者意識が高まったという評価があります。
月1回のサーベイを行っていて、会議にかけた時間や意思決定にかかった時間、運営のしやすさなどを定量的に見ているので、実際に無駄な時間が減ったという結果がでました。その結果、メンバーの評価も上々です。
佐々木 さらに以前までは、1から要件の認識を合わせる手間や情報伝達のロスがありましたが、改善後は、その手間やロスがなくなり、LPの改善数が倍になり、ミスも減りました。結果的に、数値改善のスピードも早まりました。
以上です。ここからは、私の感想に戻ります。私は2021年まで三井住友カードに所属していました。その当時、抱えていた課題がアジャイル型の組織になることで 見事に解決していることに驚くとともに、このアジャイル 型の組織運営こそがスピーディーに効果を出していく上で必要なことだと、上記の結果からみてもわかります。
そして、私が最も大切だと感じたのは、従業員モチベーションが高まっているという点です。発言もせずに内職しながら ただミーティングに参加するだけのメンバーが多いというのは、 当事者意識を与えられていない、またはそのメンバーのポテンシャルを生かそうとしていないという組織自体にも課題があると思います。アジャイル型組織の運営は難しい面もありますが、まずは部内、チーム内でトライしてみるといいでしょう。