マーケティングアジェンダ2023レポート #01

ファミマ CMO 足立光氏「アイデアは、発見よりも実行のほうがはるかに重要である」【マーケティングアジェンダ2023レポート第1弾】

 2023年5月24日から27日にかけて、日本最高峰の合宿型マーケティングカンファレンス「マーケティングアジェンダ2023 (主催:ナノベーション)」が沖縄県・読谷村(ロイヤルホテル沖縄残波岬)で開催され、国内外のトップマーケターが約400人参加し、盛況のうちに幕を閉じた。
今回は、そのレポート記事をnoteでnoteプロデューサー/ブロガーとして、noteやSNSを活用したビジネスパーソンのキャリア構築や、企業の広報やマーケティングのサポートを行っている徳力基彦氏に寄稿していただいた。今回は、その第1弾として初日と2日目のキーノートを紹介する。
 

アイデアの発見から実行へ


「マーケティングアジェンダ2023」は、「アイデアの発見」をテーマに開催されました。そのテーマに沿って初日のオープニングキーノートは「顧客を動かすアイデア発見を考える」というテーマで、ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)の足立光氏、元ユニ・チャーム 常務執行役員である木村グローバルマーケティング 代表/アルダ CMOの木村幸広氏、小林製薬 執行役員 CDOの石戸亮氏が登壇し、マーケティングにおいてアイデアを発見するために重視していることをプレゼンしました。
  
(左から)筆者、木村氏、石戸氏、足立氏

 筆者は、このキーノートのモデレーターを担当しましたが、木村氏の経験を元にした「アイデアは現場にある」という信念や、石戸氏の「決断経験値を蓄積するための思考モデル」には大変刺激を受けました。

 その中でも、やはり3泊4日のマーケティングアジェンダを通してキーワードとなったのは、足立氏が強調していた「アイデアは発見よりも実行のほうが大事」というポイントでしょう。
 

一般家庭用ロボットをつくりたいという信念


 2日目のキーノートでも「アイデアの発見」というテーマに沿って、「毎日の生活をアップデートするアイデア創生の技術~常識の盲点に着目し、幾多の困難を乗り越えた3年間~」と題して、家庭用ロボット「カチャカ」を開発したPreferred Robotics 代表取締役CEOの礒部達氏、Preferred Networks / SVP 最高マーケティング責任者の富永朋信氏が登壇し、「新しいモノを世に出す、ということ」について話をしました。
  
キーノート#2に登壇した、(左から)Preferred Robotics 代表取締役CEOの礒部達氏、Preferred Networks / SVP 最高マーケティング責任者の富永朋信氏

「カチャカ」は、声やアプリで操作することで人の指示通りに自動で家具の場所を変えられる「スマートファニチャー」というコンセプトで開発された家庭用ロボットです。ただ、「カチャカ」が発売まで辿り着くには、さまざまな障壁を乗り越える必要があったそうです。

 Preferred Networksは2019年CEATECで「すべての人にロボットを。」というビジョンを打ち出すとともに、全自動お片付けロボットを発表しました。これを皮切りに、多くのロボット開発者が採用され、社内では色々なロボットプロジェクトが立ち上がっては壁に当たっていました。

 その中で残ったのが、カチャカでした。プロジェクトに関わった10人ほどのメンバーを中心にロボット開発にフォーカスした子会社Preferred Roboticsが設立され、礒部氏が社長に任命されました。親会社が求めた外部出資を、礒部氏が調達できたことが決め手となりました。設立後も決して道のりは平坦ではなく、協業予定だった家具メーカーが途中で離脱したり、円安や半導体不足が重なってコスト構造が悪化したり、苦悩の連続でした。
  

 結果的にさまざまな困難を乗り越えられたのは、「一般家庭用ロボットをつくりたい」という礒部氏の強い信念だったのではないかと、富永氏は言及しています。

 この「カチャカ」が今後、一般家庭に普及し、製品として成功するのかどうかはまだ分かりません。これまでになかったアイデアから生まれた製品だけに、まだまだ多くの困難が待ち受けている可能性もあるでしょう。ただ、今回のセッションを聞いていて改めて感じたのが、こうした革新的なイノベーションを引き起こす可能性があるアイデアや製品というのは、業界関係者から否定されることが多いという事実です。

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