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「チームラボ・ボーダレス」は、どのように生まれのか。森ビル、エプソンとの協働【BACKSTAGE レポート】
最新プロジェクションマッピング技術を活用
「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ・ボーダレス」は、作品と来場者の融合や、人々の動きに作品が反応して、アートを体感できる点が最大の魅力だ。その実現をサポートしたのが、エプソン販売のプロジェクションマッピングのテクノロジーだ。エプソンは1989年に液晶プロジェクターを開発。その後、パワーポイントに代表されるように、プロジェクタービジネスを大きく伸ばしてきた。
チームラボ・ボーダレスでは、幅広い場所に対応するレーザー光源プロジェクターや、狭いスペースでも超短焦点で壁面前面に投写が可能な超短焦点ゼロオフセットレンズ、4000ルーメンのレーザー光源で鮮やかな発色を可能にするレーザー光源超短焦点プロジェクターなどを投入。1万平米の施設面積に、世界最大規模となる470台のプロジェクターを設置した。
「機材の特徴を活かすことで、布やガラスなどの様々な素材、局面やアールのかかった面や凹凸のある面にも、滑らかな映像のマッピングが可能になりました。その結果、作品が部屋から出て通路を移動して、他の作品と反応しあったり、融合したりとボーダレスな世界を演出できたのです」と、蟹澤氏は説明する。
特に、技術的に難しかったのが「チームラボアスレチックス 運動の森」だったという。
「安定した映像をマッピングするときに障害になるのが振動です。運動の森では、来場者が走ったり、トランポリンで飛び跳ねたりするため、振動を吸収する特別なレンズを使って、チームラボの作品を最大限、表現できるようにしました。今後も当社のプロジェクション技術を使って、人々が楽しく集うような、創造性あふれる場所や街づくりをしていくためにも、もっとテクノロジーを進化させていきます」(蟹澤氏)。
街全体をアート化する構想も
モニターやプロジェクションマッピングなどの媒体を使わなければ具現化できないデジタルアート作品は、デジタルであるがゆえに固定されない。チームラボの工藤氏は、次のように語る。「固定されないからこそ、来場者が作品に触れたり変化を与えたり融合したりできるわけです。このミュージアムでの体験を面白いと思ってもらえるようであれば、街全体のような、もっと広大な場所をデジタルアート化してみたいと考えています。ベンチに座っている人の周りにデジタルの花が咲くような街はポジティブだと思いませんか。僕らが実現したいことは、そういうアートが融合した美しい町をつくることです。デジタルアート ミュージアムは、それを実現するための第一歩になると思っています」
最後に森ビルの杉山氏が、「ミュージアムのオープンで満足せず、今後も新しい技術を取り入れて、いろいろなチャレンジをしていきます。そして、その場所に来ていただいた方々に新しい経験を味わっていただきたいですね」と話し、セッションを結んだ。
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