ネプラス・ユー大阪2023レポート #01
1店舗に1日2400人が来店。大阪で長年愛される「串かつだるま」の成功秘話【ネプラス・ユー大阪2023レポート】
店舗をガラス張りにしている理由
世耕 道頓堀店はいつも行列で入れないのですが、1日に何回転くらいしているんですか?
上山 忙しいときは20回転ぐらいします。道頓堀店は120席ほどあるので、1日で約2400人が来店されるんです。日本の飲食店でこれだけの回転数と来客数を誇る店はなかなかないと思います。
我々はお客さまにドリンクをいち早く出せるように、ドリンクと厨房を分けています。「生ビールをちょうだい」と言われて、すぐに出てきたらうれしいですよね。串かつを提供する前に1杯飲んでくれたら、それだけで客単価が上がるのでお店としてもラッキーです。
あとは、お客さんがビールグラスを飲み干してテーブルに置く瞬間に「次、いきましょか?」と声をかけたら、大概はそのままグラスを渡して注文してくれます。これが人間の心理なんです。
世耕 でも、それでずるずると飲んでいたら20回転にはならなそうですね。
上山 そうですね。正直、お店としてはできるだけ新しいお客さまの胃袋がほしいのが本音です。それに、ひとりでも多くのお客さまにうちの串かつを食べてもらいたいと思っています。だから、それをどのように伝えたらいいのかと悩んで「混雑時は45分以内でお願いします」と言うようにしました。すると、お客さまは店の前で並んでいる人を見て「はよ飲んで食って帰ろう」となるんです。これも人間の心理ですね。
世耕 行列はプレッシャーになるんですね。
上山 そうです。だから、お客さまの卓から店の外が見えるように、ガラス張りの店舗にしています。それに昔は新世界エリアは恐ろしい場所だと思われていたので、ガラス張りにすることで、店内の様子が見えて入りやすくしたという理由もあります。
世耕 そういうことは会議で決めていくのですか?
上山 いえ、私の発想が多いですね。「こうしたら間違いない」と閃くんです。
串かつだるまの人形 誕生秘話
世耕 初代「串かつだるま」から味をほとんど変えていないと聞きました。それは何か考えがあるのでしょうか。
上山 私は料理ができなかったので「味を変えたらあかん!」と思ったのです。味が変わると、お客さまが離れてしまうことがあります。だから、絶対にやっちゃあかんと、信念を持っていました。
世耕 先代の味を守ることに注力して、今でも評価されているのですね。串かつの美味しさに惹かれているお客さまが多いと思いますが、店頭の上山さんの人形から「串かつだるま」を知る人も多いですよね?
上山 はい、多いと思います。店頭の人形(170cm)のもとになった40cmくらいの人形があります。それは法善寺にあるなんば本店の店舗をオープンするときに赤井さんからいただいたものです。
赤井さんがオリジナル人形をつくってくれたのが嬉しくて、私の身長と同じ170cmの人形をつくって店の前に置き始めました。最初はなんば本店と通天閣店前に置き、それから徐々に他の店舗にも置くようにしたんです。
「ネプラス・ユー大阪2023」の会場に、串かつだるまの店舗の前にある上山氏の等身大人形を特別に置いた。
世耕 上山さんの怒っている顔が店の看板になっているのは面白いですね。
上山 怒っている顔は「ソースの二度付けは禁止やで!」と注意喚起をしているんです。人形からは10分に1回声も出ますよ。
世耕 それも上山さんのイマジネーションで思いついたのですか?
上山 そうですね。やっぱり、おもしろくなかったらあかんと思いました。地方から来る人が何を求めて大阪に来ているかというと、おもしろさなんです。それと美味しいものです。だから、エンターテインメントと美味しいものの融合を目標にしたんですよ。
実際に、人形をつくるときに赤井さんとお酒を飲みながら、「ただ人形を置くだけではあかん。おもろいことをせなあかん」となって、「ソースの二度付けは禁止やで!」と言わせることになったんです。
世耕 今では道頓堀の中心に「串かつだるま」の巨大像「だるま大臣」として2020年に設置されました。完成したのは、コロナ禍のまっ最中でしたよね?
道頓堀のシンボル、串かつだるまの巨大像「だるま大臣」(画像提供/一門会)
上山 はい、コロナ禍でした。でも実はコロナ前から計画していたんです。現在、私は道頓堀商店街の会長をしていて「道頓堀で何かおもろいことをしたろ。こんなのもありやろ」と考えて「だるま大臣」をつくりました。実物は12メートルもあるんですが、20分ごとに道頓堀川や戎橋などのほうを向いて、1時間に1回転する仕掛けになっているんです。
世耕 そんな仕掛けもあるんですね。ちなみに、「だるま大臣」は制作にいくらかかったのですか?
上山 全部合わせたら2億円くらいです。
世耕 2億円!?
上山 はい。道頓堀の中心なので宣伝になりますし、InstagramやTikTokなどSNSを通して世界中に広まるという狙いもあり、それぐらい掛けても元が取れると思いました。