ネプラス・ユー大阪2023レポート #01
1店舗に1日2400人が来店。大阪で長年愛される「串かつだるま」の成功秘話【ネプラス・ユー大阪2023レポート】
マーケターは「おもろいこと」をする
世耕 串かつだるまの特徴は、やはり「ソースの二度付けは禁止やで!」ですよね。今では当たり前になりましたが、西成にはソースを共有する文化があり、それを逆にブランドとして使ったことで全国的に有名になったと思います。その辺りはいかがですか?
上山 地方から来るお客さまにとっては、串かつを「二度付け禁止」のソースにどぼっと付けて食べるのが、ひとつのエンターテインメントですよね。
ソースの二度付けは禁止が広まったきっかけとして一番大きかったのは、故・安倍晋三元総理が通天閣の店舗に来たときのことです。安倍総理が串かつを食べる前に、「最初に総理にお願いがあります」と私は言いました。
そうしたら、「このおっさんは何を言い出すんだ?」と場の空気が張り詰めたのですが、そこで「ソースの二度付けは禁止です」と言ったところ、大きな笑いが起きたんです(笑)。このエピソードが新聞やテレビにニュースとして取り上げられて、全国的に広がりました。
世耕 総理大臣に「ソースの二度付けは禁止です」と言ったのは、前代未聞でしょうね。上山さんの功績で大きいのは、恐いイメージのあった新世界という場所に店舗を出して、そのイメージを変えたことですね。上山さんが「串かつだるま」を始められた2001年頃、そのときは「串かつ通り」はなかったですよね?
上山 なかったですね。当時と比べたら、今は串かつの店舗数は3倍くらいに増えましたよ。
世耕 近畿大学の大学案内にも道頓堀と並ぶ一大観光地として新世界を紹介しています。以前だったら新世界は絶対に使わなかったのですが、今では完全に観光地化していてシンボリックなエリアになりましたよね。上山さんとしては、新世界という街をどのように変えていこうという考えがあったのでしょうか?
上山 正直、最初はそういう考えはなかったです。ただ、串かつだるまの店舗数を増やしてそこに行列ができると、近くの他店にも人が入るようになり、新世界という街全体が少しずつ進化しました。
それまでは県外から来る観光客にとって大阪名物といったら、たこ焼きとお好み焼きだけでしたが、今では串かつも入っています。
世耕 街全体を変えたことでも評価されていると思うのですが、それについてどのように感じられますか。
上山 まだまだ、現役でボクシングをしていて生活やお金に苦労している後輩もたくさんいたので、「飯を食わせなあかん」と思っていたこと、串かつだるまをもっと広げようと考えて行動した結果、新世界という街の活性化が進んでいきました。そのため、机の上で絵をかいて戦略を立てて取り組んだのではないんです。
世耕 上山さんが串かつだるまを引き継がいて飲食業界に入ったのが40歳のときでした。今年でおいくつになりましたか?
上山 実は今日(7月12日)が誕生日で、お陰さまで62歳になりました。
世耕 22年間の経験をもとに、ネプラス・ユー大阪に参加するマーケターに対して、アイデアの出し方などアドバイスがありましたらお願いします。
上山 偉そうなことは言えませんが、今まで取り組んできたことを振り返ると「おもろいことをする」が大切です。「俺たちがおもろいんやから、みんなもおもろいやろ。おもろいことをしたらお客さんも喜ぶ」と信じることですね。「美味しい」に「おもろい」が加わると、プラスアルファの価値になります。それが成功の秘訣だと思います。
世耕 大阪ならではの発想ですし、やはり上山さんは天才マーケターだと思いました。皆さんも、このセミナーを聞いたことをきっかけに、これまでのマーケティングとは異なる視点から「おもろいこと」を考えてください。上山さん、本日はありがとうございました。
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