B2Bアジェンダ2023特別企画

パナソニックで実践、BtoBマーケティングで顧客の「解像度」を高める方法【パナソニック コネクト 関口昭如氏】

 

解像度を高めるためには、お客さまと会って話して観察する


――では、パナソニック コネクトさんでは、BtoBマーケティングを的確に実践する上で、具体的にどのようにターゲット設定を行っているのでしょうか。

 まずはビジネスのタイプを明確にします。我々の考えるBtoBビジネスでは、簡単に分けると、「1 to 1(大口顧客向けの顧客特化型ソリューション)」、「1 to Some(横展開可能なパッケージ型ソリューション)」、「1 to Many(多数向けの単体商品・サービス)」の3つに分かれ、考え方が大きく違いますし、価値の提案方法も違います。

「1 to 1」は、基本は顧客一社のために作るものなので、お客さまと対等に価値を共創していく方向なのに対し、「1 to Many」ではさまざまなお客さまに使っていただくソリューションや商品で、標準化・カスタマイズできる部分が明確化されていることなども重要です。我々の商品がそういった開発になっていることをまず確認することが必要です。そのような違いを明確に認識したうえで、顧客の解像度を高めていく必要があります。

 また、BtoBの顧客といっても、「企業名」「その企業の中のある事業部」「そのなかのどのような機能の部署」「エンドユーザ」「選定部署」「影響を及ぼす人、部署」、あるいはリードのような「個客」なのかによって関係者のイメージも違います。そこを明確にすることから始めます。顧客とは何かの定義がまずは必要です。

 それからよく、「1 to 1」でうまくいったことビジネスを安易に「1 to Some」や「1 to Many」で汎用しようとする企業やビジネスオーナーも多いと聞きます。たとえば「1 to 1」で、A社の引き合いからに導入したシステムを、ほかの同業界のB社にも提案できるのではないかと考えるんです。同じ業種という理由からついそのように考えてしまう気持ちもわかりますが、そもそも最初に「1 to 1」を目指して作られたものを横展開するのは無理があります。他の企業にも導入するのであれば、最初から「1 to Some」や「1 to Many」で横展開を考えた上で商品やサービスを考えないといけないと思います。きちんと顧客を開発前に定義や仮説をしておく必要があります。

 まずは我々が目指しているものはどういったビジネスなのかの定義から必要だと思います。ですので、企画段階からのマーケティングの関与も重要になります。これらもソリューション・商品企画用のブループリント(Blueprint:商品やサービスが顧客に提供されるまでのプロセスを、顧客体験・提供者の動きを合わせて時系列に可視化するツール)という私が推奨しているテンプレートに落とし、Howのまえに何が目的で、どんな顧客像で、我々の提案できる価値は何なのか、関係者とまずは意識や目的統一をすることからはじめます。

――BtoBマーケティングにおいて、ターゲットの解像度を高める重要性とは何でしょうか。

 今度は共通部分をお話しします。「1 to 1」と「1 to Many」には違いはあるものの、顧客の便益と我々しか出せない独自性を考えなければならないのは一緒です。そのためにN1ヒアリングなどの定性評価と、その確証のためのコンセプトテスト(定量評価)の両方が必要だと考えます。一番の目的は関係する社内の関係者全員が顧客の具体的なイメージを持ち、かつ我々の価値の種を一緒に作り上げていくという意識を高めたり、関係者の共通理解、なによりも、価値を提案する点においても、顧客の解像度を高めることが重要だと思います。

――「1 to Many」は「1 to 1」より顧客の解像度が低くなる傾向にあると思いますが、どうしたら解像度を高めることができるのでしょうか。

 解像度を高める手法ひとつは、数が少なくても「直接、お客さまと会ってヒアリングする、または観察すること」だと思います。お客さまへのヒアリング、または観察することで、商品やサービスにおける便益のヒントを深く聞き出すことができます。そこには顕在的なものもありますし、顧客さえも気づいていない、顕在的な困りごとでもない「隠れた前提」も含まれることもあります。これらのことから、顧客への価値になるかもしれない仮説が生まれることも多いです。繰り返しになりますが、これは仮説であるので、可能であれば検証も必要になります。現代においては、大きな戦略に時間をかけるよりも、仮説を作って検証してPDCAを回すことのほうが重要になってきていると考えています。

 また、既存商品やサービスの次のバージョンなど新商品をつくる場合は、特に既存のロイヤルユーザーに話を聞くことが重要です。これがある意味、リレーションシップマーケティングの要であるCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)の重要な目的でもあります。

――関口さんご自身は「1 to Many」や「1 to 1」の解像度を高めるために、どのような取り組みをされていますか。

 やはり、特に潜在課題の掘り下げや独自性をもった便益になりそうな種を探ることを重要視しています。これはソリューションの企画にも、既存商品のプロモーションにも有効だと思います。

 ただしインタビューそのものも重要ですが、そのあとの社内レビュー会のほうが重要ですね。SEやサポートの方から意外な顧客の便益を聞くことがあります。それらのワークショップを主導しています。ただし、仮説はあくまでも仮説。新商品のコンセプトテストをしたり、データを使ったり、比較試験をすることもあります。極端な話、ブループリントで戦略や戦術の整合や、関係者との認識合わせができていないものは、マーケティング活動をしないようにしています。

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