マーケティング・Advanceコース「ザ・インサイト」 #03

「マーケターに人間理解が必要だ」と気付かされたハードシングス【富永朋信氏×鹿毛康司氏 スペシャル対談再掲載】

前回の記事:
なぜマーケティングに人間理解が必要なのか? 【富永朋信氏×鹿毛康司氏 スペシャル対談】
  ナノベーションは2023年11月5日、マーケティングの核となる「人間理解」や「インサイト」を理解できる実践的なプログラムとして、マーケティング・Advanceコース「ザ・インサイト」を開催します。講師を務めるPreferred Networks執行役員 最高マーケティング責任者の富永朋信氏、かげこうじ事務所代表 マーケター/クリエイティブディレクターの鹿毛康司氏による対談が実現しました。人間理解・インサイトのスペシャリストである2人からマーケティングにおける重要性など、ここでしか聞くことのできない話を聞いた企画の後編をお届けします。2022年6月22日の記事を再掲載します(内容はすべて当時のもの)。(前編は、こちら

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消臭力のメッセージは人間の本能から誕生


富永 「人間理解」の重要性についてより深く理解するために、鹿毛さんが詳しい芳香剤を例に考えてみましょう。これは冗談ではありますが、男性がエステーの消臭力を買うのは「嫌な臭いがすると、奥さんに怒られて怖いから」かもしれません。

 でも、マーケターが顧客インタビューの場で、お客さんに消臭力を買う理由を尋ねても、きっと返ってくるのは「部屋の臭いを消したいからです」という表面的な答えです。これは、人間を理解しようという強い思いがないとインサイトは見つからない、ということを示唆するストーリーでもあると思います。

鹿毛 そうですね。昔の芳香剤のテレビCMは、「玄関に入ったら嫌な臭いがする。だから玄関に芳香剤を置きましょう。そうすると、ドアを開けたら、この家はいい匂い」という世界感をつくって訴求していました。しかし、なぜ顧客が家に来たときに、嫌な臭いを出したくないのか。もちろん、そこには「嫌な臭いがすると恥ずかしい」という理由もあります。

 ただ、そもそも人はなぜ匂いを感じると思いますか。それは人間が「動物」だからです。動物は、もともと敵から身を守るために匂いを感じます。動物には、嗅覚があるので、匂いによって相手と味方になるのか敵になるのかという判断を本能的にするんです。動物は嫌な臭いがすると、相手を敵と判断してしまいます。つまり、嫌な臭いがすることを突き詰めると、争いにまで繋がってしまうかもしれません。一方で、いい匂いの場合には友好関係がつくれることを、人間の本能でなんとなく理解しているんです。

 家に芳香剤を置き、嫌な臭いを消し、お客さまに会うという話が根本にあるから、「消臭力によって空気が変わるよね、人と人との関係が変わるよね」ということを訴求して、「空気をかえよう」というステートメントを開発しました。ここまで深く考えることができたのは、商品起点ではなく、人の生活や人間を起点として考えたからです。

富永 消臭力のCMは「人間と臭いの関係」や「人間と消臭力の関係」という人の本能に着目して、人の生活や人間観察から生まれているんですよね。
 
対談中の富永朋信氏(左)、鹿毛康司氏(右)

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