B2Bアジェンダ2023レポート #01

マーケティングのスキルは人事でも使える。みずほフィナンシャルグループ CPOが挑む変革【B2Bアジェンダ2023レポート】

 

右脳のワクワクするアプローチが人事領域に必要


阿部 人事領域で特に必要なアプローチは何ですか。

秋田 人事領域には、右脳と左脳のアプローチが必要です。従来の人事や経営企画などは、非常にロジカルかつ王道的なアプローチで左脳的です。ただ、それだけでは心に響かない人も多いのではないでしょうか。そこで心を開いてもらうため、心に訴えかけてワクワクしてもらうような右脳的なアプローチと合わせ技にしています。

実際に、社内で実施した事例を紹介します。ひとつはデジタルコミュニケーションツール「Viva Engage」です。昨年末に導入し、既に1万7,000人以上が利用しています(2023年9月末実績)。「何を発信してもいいよ」と伝えているので、コミュニティも自発的につくられ、今や200以上のコミュニティが存在します。発信数が多い、もしくは「いいね」の数が多い社員を月間ランキングで発表したり、コミュニティをリードしてくれる人にアンバサダーになってもらったり、いろいろなアプローチを取りながら、誰もが自由に発信する楽しさを広めています。



阿部 そのほかに社員がワクワクする仕掛けはありますか。

秋田 遊び心のある自販機も導入しました。2023年5月に企業理念を一新し、パーパスを「ともに挑む。ともに実る。」と定めました。それをもじって「ともに挑む。ともに飲む。自販機」と名づけた自販機を導入したのです。社員2人同時に社員証をかざし、10秒以内にドリンクを選択すると、無料でドリンクが出てくる仕組みです。

10秒は意外と短くて、2人で譲り合ったり、欲しかったドリンクが直前で売り切れて戸惑っていたりすると、すぐに時間が経過してしまうんです。だから「(10秒の壁に)ともに挑む。」なのです。そうした仕組みをも含めて、社員同士のコミュニケーションを活性化させています。

パーパスは企業にとって重要である分、いじってはダメだと思われがちですが、私はそこに遊び心を加えてもいいと思うのです。

阿部 パーパスに引っ掛けた自販機は、ユニークな取り組みですね。


組織活性化に向けて~社員同士が繋がる仕組みの導入

秋田 その他の取り組みでは、いろいろなシーンで動画を駆使しています。たとえば、働き方の見直しに向けた取り組みでは、最初に役員向けの研修を行い、その後のパネルディスカッションを社員にオンラインで配信しました。研修後に「いい話を聞いたな」で終わってしまえばそれまでですが、自分の言葉で発すれば、責任感も当然生まれますし、思いも高まります。動画を見た社員にも本気度が伝わるわけです。その意識を役員だけで止めてしまわないように、部店長とも同様のセッションを行って全社への浸透をはかっています。

さらに、アルムナイ(従業員として勤務し、自己都合またはこれに準じる理由で退職した人)への取り組みにも力を入れています。退職者も、社員やお客さま、株主と同じく大事なステークホルダーです。カムバック採用だけが狙いではありません。一度でも一緒に働いた人は会社に思いを残してくれているので、アルムナイネットワークは企業にとって大切なファンコミュニティだと思っています。

2023年7月に「みずほアルムナイネットワーク」に登録されている人が1,000人を突破しました。同月に、生成AIの活用法に関してアルムナイと現役社員によるパネルディスカッションを実施したり、3周年記念イベントでは伊藤羊一さんを招いたり、役職員を巻き込んだ対話型の交流会などに取り組んでいます。その結果として、アルムナイ研究所による「ジャパン・アルムナイ・アワード2022」「ジャパン・アルムナイ・アワード2023」において、グランプリを連続受賞しました。

阿部 アルムナイも大切にされるのは素晴らしいと思います。

秋田 まとめると、マーケティングのスキルは人事にも活かせるということだと思います。徹底した情報収集やインサイトの深掘り、前例にとらわれない発想、そして社内を巻き込むコミュニケーションが重要です。マーケターが、ブランドに好意的で一緒に盛り上げてくれるユーザーを巻き込んでいくように、人事領域においても社員と一緒にワクワク感をつくって、当事者意識を持ってもらうことが大事だと考えています。

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