B2Bアジェンダ2023レポート #03

Sansan、パーソル、マクニカのB2Bマーケターがセールスマーケで陥いる罠を赤裸々に語る【B2Bアジェンダ2023レポート】

 

すべての課題は「顧客理解と解像度問題」


甲斐 顧客理解が全体量とスループット量と継続拡大という2つの問題の根幹としてあるという仮説を立ててみました。まずは、こちらからディスカッションしてみたいと思います。
  

繁田 私も顧客との継続的なビジネス拡大において、まさにクロスセルが上手くいかないのは「顧客理解とその解像度の問題」に起因していると感じます。パーソルホールディングスは数十万から数百万のリードを「人手不足」や「生産性向上」など大きく10項目の悩みで分類しています。

ただ、具体的にどのお客様がどの悩みに当てはまるのかを特定することが難しく、さらに時間の経過とともに悩みの内容も変わっていくので、10項目の悩みに当てはめるのが難しい場合が多いです。これは顧客理解と解像度が上がっていないことに起因していると思います。

原田 Sansanでは、リードの入り方によってセールストークの展開が変わります。そこが噛み合わない場合は失注してしまいますが、「顧客の本当の課題(真因)は何なのか?」をヒアリングするには、ある程度テクニックが必要です。
 
Sansan セールスディベロップメント部/部長
原田 京昌 氏

 株式会社リクルートにてメディア営業・事業スタッフ・全社スタッフ、および関連会社の統轄等に従事後、 2023年4月 Sansan 株式会社にジョイン。現在は営業 DX サービス 「 Sansan 」 やインボイス管理サービス 「 Bill One 」などの法人向けサービスにおいてインサイドセールス組織の責任者を担当。より多くの企業様にプロダクトを知っていただくため日々情熱をもって取り組んでいる。

ただ、社員ごとに経験もレイヤーも異なるため、スピーディーにスキルを育成することが重要です。また、ルーティン業務だけでは若手のモチベーションが低下してしまうので、チーム構成を変えるなど試行錯誤しています。ただこのやり方だけではまだ理想の全体量につなげられておらず、一方で経営層からの数字が求められており、更なる進化に向けて日々奮闘しております。

木村 サイバーセキュリティやAIなどの新規事業では、顧客解像度がほぼないまま進んでいるため、全体量が多いのに若手が何度コールしてもアポにつながらず、疲弊してしまう状況です。既存商材であれば過去のデータから解像度を上げる工夫はできますが、新規商材ではデータがないため、優秀な人を集めても成果が出しづらく、もどかしさを感じています。

甲斐 各社、事業やフェーズによっても異なりますが、やはり前線で活躍しているマーケターやインサイドセールスの部隊でも顧客の解像度が低いという課題は共通していそうですね。ターゲットのペルソナはつくっていますか?

木村 新しいソリューションについては紙一枚でわかりやすいペルソナを設定し、常にアップデートしながら進めています。

原田 Sansanでは、すべての領域に対してプロダクトを提供しているので、正直つくりづらいです。その代わり、部長、社長などレイヤーごとに職務内容や決済権の有無などを整理してアプローチのトレーニングを行っています。

繁田 マーケティングの立場でペルソナを考えても、営業の立場では本当にいいペルソナなのかよくわかりません。そこの議論が活発にならないこともあり、頭でっかちなペルソナになっている感覚がすごくあります。

甲斐 ペルソナはプランニングの段階では重要でも、戦術の実践面においてはあまり役立っていないと。このあたりはまた別の機会に議論したいと思います。続いて「人的リソース問題」を絡めたテーマに移ります。今のセールスマーケティングでは、KPIを達成することばかりがフォーカスされてしまい、顧客解像度を上げようという力学が働きづらい側面があるのではないでしょうか。
 
ユニファイド・サービス 執行役員 CMO
甲斐 博一 氏

 テクノロジーの力とマーケティングを融合させ、経営に貢献することをモットーに、23年のマーケティング経験のうえで現在は経営企画本部にて、全社視点から事業ポートフォリオの健全化のために成長が必要な事業の立て直しを図る。また、B2B領域のビジネスにフォーカスし、マーケティングを推進すると同時に、事業の立て直し、及び成長を支援する活動を実践中。さらに、マーケティングと経営、リーダーシップを次世代に伝えていくための活動も並行して行う。

繁田 甲斐さんのおっしゃる通りだと思います。戦略はあるけれど戦術がないがゆえにKPIに追従してしまい、具体的にどのような対応をするべきか不明瞭な点が問題であると感じています。

パーソルホールディングスでは、マーケティング戦略をアウトソーシングしているのでリソースの調整はしやすいのですが、その分ボラティリティ(数値やデータのばらつき)も激しくなります。そこに関しても、顧客解像度の問題と関連していると思います。

原田 おっしゃる通りですね。ただ、特に従業員数が多いエンタープライズのお客様の場合、そもそも突破するために高い顧客解像度が求められるため、どうしてもハイレイヤーの人材を当てる必要が出てきます。その人材捻出において、スピード感が欠けてしまうなと思います。

甲斐 事業拡大されているからこそ、ものすごいスピードが必要ですよね。やはり、基礎スキルと応用スキル、対人スキルなど、業界特化や職種特化で持ち合わせていないとスピードに対応するのは困難だと思うのですが、いかがですか。

原田 はい、相当難しい部分ですね。さらに顧客に合わせて、さまざまなツールを比較して最適な提案をする能力も深めないといけないので、より難しいと思います。また、自社だけではない競合の製品や機能を含めた上で、自社の強みは何かなども当然考えなければいけません。

甲斐 インサイドセールスがハブとなって、顧客解像度を高める取り組みなどにトライされていますか?

繁田 しているつもりですが、しているとは思えていないという感じですね。このセッションで私も聞きたかったのは、インサイドセールスの役割と定義についてです。顧客理解というのはインサイドセールスの仕事のようでありながら、実際には顧客理解はKPIに落とし込まれていません。そうなると、どうしてもKPIになっている指標を追いがちになるため、顧客解像度を高めることがすごく難しいと感じます。

原田 インサイドセールスは、フィールドセールスから下に見られているように感じてしまうことが一般的です。しかし、このあとキャリアをステップアップしていくにあたり、単なるアポ取りではない価値やスキルを習得しなければならないと思います。

その上で重要なのは、営業企画の機能ではないでしょうか。例えば、クライアントをセールスフォースなどのツールを使ってセグメント分けし、戦略的にこのクライアント群を狙おうと分析して決めていくスキルをSansanのインサイドセールスのメンバーは持っています。それは自信やプレゼンス(存在感)につながる価値だと思うので、インサイドセールスで重視しています。

木村 マクニカネットワークス カンパニーのインサイドセールス部署は、元営業出身の2人が立ち上げたため、ある程度は営業目線で、顧客解像度の重要性を理解した組織になっている点は強みです。ただ逆に、アポイントを獲得するテクニックが少なかったので、今では外部人材のナレッジを吸収しながら、社内に蓄積していっています。

また、そもそも実際のインサイドセールスに取り組むにあたり、本当はどのようなマーケティング施策からキャンペーンにつながっていくのかという、上流の企画部分も少しずつインサイドセールスに理解して組み込んでもらい、戦略的に取り組みましょうという形になったので、とてもやりやすくなりました。
  

甲斐 私も経験がありますが、インサイドセールスを営業の下に置くか、マーケティングの下に置くかについては、どう考えていますか。

木村 インサイドセールスは、マーケティングについているので私は業務に取り組みやすいですが、営業は違うかもしれません。営業からしたら、インサイドセールスは遠く感じていると思います。

繁田 企業のフェーズや商品・サービスによっても大きく変わってくると思います。ただ、どちらにせよインサイドセールスは、CRM(顧客管理システム)を使いこなせないと浸透しないと思います。

原田 今まさしく、その組織をどうするか考えています。エンタープライズの企業規模が1000人以上だとした場合には、営業と連動してインサイドセールスを回した方が、結果的に良いのではないかという仮説のもと進めています。

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