ライジングアジェンダ2023レポート #02

創業から6年で上場、急成長を実現した英語学習プログリットの「逆張り」マーケティング

  次世代を担う35歳以下の若手マーケターが集う「ライジングアジェンダ 2023」が2023年12月6日に東京・渋谷の「ベルサール渋谷ファースト」で開催された。公式セッションでは「『逆張り』の経営」と題して、英語コーチングサービスを展開するプログリット 代表取締役社長 岡田祥吾氏がスピーカーとして登壇。自らも若手起業家であるFinT 代表取締役の大槻祐依氏がモデレーターを務めた。

会場の次世代マーケターが注目する中、岡田氏がセッションで強調したのは意外にも「原理原則」「普通」といった言葉だった。英会話というレッドオーシャンを突き詰め、常識を覆すビジネスモデルで創業6年にして東証グロース上場を果たした岡田氏の、独自の経営論に迫ったディスカッションをレポートする。
  
 

経営もマーケティングも、「原理原則」がカギを握る


大槻 はじめに岡田さんの自己紹介からお願いします。

岡田 プログリットの岡田です。大阪生まれ大阪育ちで、2014年に新卒でマッキンゼーに入社し、2年3カ月ほど経営コンサルティングを行いながらビジネスを勉強しました。私はその当時から英語がとても苦手で、苦労していました。一方で、自分以外にも英語に苦手意識を持っている方はたくさんいらっしゃると感じていたので、この問題を解決するため、2016年にプログリットを創業しました。
 
プログリット 代表取締役社長
岡田 祥吾 氏

 大阪大学工学部で機械学習に関しての研究を行い、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。日本企業の海外進出、海外企業の日本市場戦略立案など、数々のプロジェクトに従事。同社を退社後、2016年9月にプログリットを創業。短期間で英語力を伸ばす英語コーチングサービス「プログリット」を主軸とし、サブスクリプション型英語学習サービス「シャドテン」も展開。2022年9月、創業6年で東証グロース市場に上場。2020年にForbes Japanが選ぶ「30 UNDER 30 Japan」、2021年には同じくForbesの「30 UNDER 30 Asia」に選出される。著書に『英語学習2.0』(KADOKAWA刊)。

大槻 私はモデレーターを務める大槻祐依と申します。「日本を前向きにしたい」という想いで、学生時代にFinTを起業しました。女性向けメディアを運営しており、おもにSNSマーケティングやZ世代マーケティング事業を展開しています。

今回はプログリットの成長の背景をぜひ聞きたいと思い、岡田さんにお声がけしきました。はじめにプログリットの事業説明からお願いします。
 
FinT 代表取締役
大槻 祐依 氏

 1995年10月生まれ。早稲田大学の起業家養成講座を受講し、学内のビジネスコンテストで優勝。在学中の2017年3月にFinTを起業。「みんなの強みを活かして、日本を世界を前向きに」というパーパスのもと、SNSマーケティング事業や、総合フォロワー数100万人の若年層女性向けSNSメディア「Sucle(シュクレ)」を展開。主要事業であるSNSマーケティング事業にて、大手企業を中心に累計200社以上の企画、撮影から運用までサポートし、2023年5月にはベトナムにも進出。歌手・AIさんと共同で、SDGsに関するメディアを開設し、共同イベントも開催。ASEAN JAPAN Generation Z Leaders Communityにも選出され、ForbesにはASEANを目指す若手起業家として掲載。

岡田 当社は、「世界で自由に活躍できる人を増やす」というミッションを掲げています。日本には、英語が苦手であるがゆえに自分の可能性をなかなか開花できない人が多くいます。そこで、2つのサービスを設計しました。

ひとつ目は、「プログリット」という3カ月の短期集中型の英語コーチングサービスです。従来の英会話スクールと異なる点は、先生がおらず、コンサルタントがお客さま一人ひとりに伴走して自学自習を徹底的にサポートするプログラムだということです。対象は、まさにみなさんのようなビジネスパーソンです。

2つ目は「シャドテン」という、リスニング力を伸ばす英語学習のアプリです。英語を聞きながらそれを真似して発音する「シャドーイング」というトレーニングがありますが、これまでプロ向けだったものを一般化し、誰でもシャドーイングを自由に行うことで、リスニング力を向上できる仕組みをつくりました。

大槻
 ここからはセッションのテーマである「『逆張り』の経営」についてお聞きしていきます。英会話を学ぶサービスは、非常に多く存在しますよね。その中で貴社は創業から6年というスピード感を持って上場し、その後も成長されていると思いますが、これまでどのようなことを大事にされてきましたか。

岡田 私は創業時から2つのことを考えています。ひとつ目は、マーケットを見ることも重要ですが、自分たちが本当に成し遂げたいことは何かを考えて行動するということです。英語学習業界はかなりレッドオーシャンで、驚くほど競合が多いのですが、私はその部分は基本的に関係ないと思っています。

2つ目は、創業以来の経営の主軸に置いているのは、「原理原則に従う」ということです。原理原則とは、たとえば「物が上から下に落ちる」といった絶対に変わらない法則のことを指します。私は、これが経営においてかなり重要だと考えています。

英語学習業界における原理原則は、「たくさん努力すれば英語が話せるようになる」です。英会話教室を経営する人は、「これをしたらペラペラになります」と主張しがちですが、結論から言うとペラペラにはなりません。英語力を上げるためには「たくさん努力する」以外、方法がないからです。

しかし創業前、この原理原則で英会話教室を経営している人は見当たらず、英語学習業界が原理原則にほとんど従っていないように思いました。ごく当たり前のことを言うようですが、英語は努力しなければ伸びません。その努力の過程をサポートするのが私たちのコンセプトです。それが、業界において大きな差別化要因になったと思います。
  

大槻 ここまで英語学習業界の話をしていただきましたが、会社の組織運営においても「原理原則に従う」というカルチャーはあるのでしょうか。

岡田 はい、組織運営も同様です。たとえば、マーケティングでKPIを設定する場合において厳しい局面があると思うのですが、その際に一発逆転を狙うとほぼ失敗します。「そんなにうまい話は世の中にない」という原理原則に反しているからです。それで成功するならみんな上手く行くので、近道に期待をしないようにというのは、仕事の中でもよく話しています。

大槻 すごくコツコツと積み重ねるカルチャーをお持ちなのですね。各事業部でまずはしっかりと原理原則の戦略を描いて、そこから一歩一歩進めていくということでしょうか。

岡田
 まさにそうです。

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