ライジングアジェンダ2023レポート #02

創業から6年で上場、急成長を実現した英語学習プログリットの「逆張り」マーケティング

 

常識覆す価格設定で「正の循環」


大槻
 岡田さんが考える、マーケターの原理原則とは何なのでしょうか?

岡田 原理原則に当てはまるかはわかりませんが、私はいつもマーケティングチームに「普通に考えよう」と伝えています。人は仕事をしていると、どんどん「普通に」考えられなくなっていくからです。

たとえば、クリエイティブをつくる際にも、「どう見てもこれは変じゃないか?」や「ブランド価値を毀損するんじゃない?」という場面がありますよね。これが起きるのは、同じ仕事をずっとしていると、普通に考えたら誰にでもわかるようなことが意外と判断できなくなるからです。「昔、上司に言われたから」「引き継ぎ前の担当者がこうしていたから」という理由もあるかもしれません。
  

大槻 悪しき習慣に囚われてしまっている場合はありますよね。また、マーケティングの基本的な要素とされる「4P(Product, Price, Place, Promotion)」の中で、特にプライシングはマーケターのみなさんが悩むポイントだと思いますが、プログリットではどのように考えていますか。

岡田 私は、プライシングに会社の意思が出ると考えています。その価格にしているということ自体がお客さまへの大きなメッセージなのです。たとえば、プログリットは基本的に値引きしません。もし値引きしたとしたら、お客さまに「利用者が少ないので来て欲しい」という誤ったメッセージが伝わってしまうからです。そこで、私たちは業界内でも高いプライシングをしています。

また、英語学習業界を分析すると、飛び抜けている会社がいないことがわかりました。どの会社も利益はほぼ出ておらず、苦しい状況。それにもかかわらず、同じようなサービスを売り出して、価格競争が行われていました。このままでは業界全体が沈んでしまうと思い、当社では業界の相場の約5~6倍のプライシングを決断しました。これが3カ月で約60万円の英語学習サービス「プログリット」です。

大槻
 他社サービスと比較すると、とても高い価格ですよね。

岡田 他社の英会話サービスはだいたい月に2~3万円なので、それと比べると思いっきり高く設定しています。こうすることで当然、利益率が高くなります。しかし、他社と同じサービスではぼったくりと一緒なので、5~6倍の費用を払ってもお客さまが満足してくださるレベルに、サービスクオリティを高めます。そのために私が、英語業界で最も重要だと考えたのが「人」のクオリティーでした。

大槻 講師ということでしょうか。

岡田 そうです。私は講師のクオリティーで5倍の値付けができると考えました。英語学習業界で当たり前に行われていた非正規雇用や長時間労働、低賃金を当社ではすべて廃止し、業界内ではかなり珍しく、創業当初から講師を全員正規雇用、給料も業界水準のおそらく倍をお支払いしています。そうすることで講師のクオリティーやモチベーションはもちろん、お客さまに与える印象もまるで変わったと感じます。

その結果、利益率が高くなり、お客さまに満足いただくことで、さらに講師の給料を上げることができます。私はこのような「正の循環」をつくっていくことが、英語学習業界にとっても重要であり、我々が勝つための最良の戦略だと考えました。

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