ライジングアジェンダ2023レポート #02
創業から6年で上場、急成長を実現した英語学習プログリットの「逆張り」マーケティング
2024/02/02
アーリーアダプターから世の中を変えていく
大槻 しかし、お客さまからすると、実際に3カ月受講してみないと、通常より5倍以上質の高いサービスを受けられると認識するのは難しいと思います。そこはどのようにメッセージを伝えていますか。
岡田 ポイントは2つあります。ひとつ目は、ターゲット層を絞るということです。イノベーター理論(消費者を革新者から遅滞者まで分類し、イノベーションがどのように普及するかを分析した理論)がありますが、最初は大衆から選ばれなくてもいいのです。価格が高くても、来てくれる人はいます。
大槻 価格が高くても絶対に学ぶ意欲がある「アーリーアダプター」をきちんと見つけて、その人たちを取りに行くということですね。
岡田 まさにそのとおりです。マジョリティの意見は一切気にせず、最初はアーリーアダプター層にフォーカスします。最初の頃に来てくださるお客さまは、ある意味で変わり者ですが、そこから口コミや評価が広がることで、世の中も少しずつ変わり、マジョリティもこのプライシングを受け入れてくれるのです。
もうひとつは、価値の付け方を変えるということです。従来の英会話サービスでは、たとえば50分の英会話レッスンにお客さまは5000円を払って、価値を受け取ったと考えていました。しかし、私たちは毎回のレッスンそのものに価値を見出していないため、そこには1円もチャージしません。では、何に60万円をチャージするかというと、みなさんの3カ月後の未来の姿です。あなたの3カ月間の変化に60万円払ってください、というのが私たちのメッセージです。
大槻 サービスの見せ方を変えるということでしょうか。
岡田 そうですね。私たちは価値の訴求ポイントを大きく変えました。これまでの英語学習業界で一般的だったモデル、つまりお客さまに5000円を払ってもらい、そのうち3000円を講師に支払い、残りは経費で消えるという方式とは異なります。私たちの新しいビジネスモデル、すなわち3カ月で60万円という商品設計であることを、シンプルにそのまま伝えただけなのです。
大槻 そのビジネスモデルは、どのようにして見つけたんですか? アーリーアダプターに対して、プライシングや価値の付け方を仮説検証していったのか、それとも最初から狙いを定めていたのでしょうか。
岡田 ほぼ計画どおりで、決め打ちしていました。
大槻 そうなんですね。とはいえ、プログリッドが業界の常識から抜け出せたり、3カ月で60万という価値の見せ方を見つけたりしたのは、実は非常に難易度が高いと感じます。どのようにして実現しているのでしょうか。ご自身の体験がベースになっているのでしょうか。
岡田 はい。私は自分の体験や考え方を重視し、それを伝えていくことを大事にしています。もちろん、お客さまの声を聞くこともとても大切ですから、日々アンケートや対話などを通じて意見をキャッチするようにしています。しかし、最終的なメッセージやプロダクト、プロモーションの文言に、お客さまからいただいた言葉は使いません。そうすると、他の企業と同じになってしまうからです。
大槻 なるほど。お客さまの声をそのまま経営やプロモーションに取り入れるのではなく、未来を見据えて、ご自身の意思を実践されているのですね。
岡田 おっしゃるとおり、自分の意思が重要です。私は大勢の意見がNOでも、誰かひとりのアイデアが最終的にはイノベーションやブレークスルーを起こすのではと思っています。