マーケティングアジェンダ東京2023レポート #01
万年シェア3位から1位へ。味の素「ザ★チャーハン」に学ぶ、アイデアが上手くいく4つのポイント【マーケティングアジェンダ東京レポート】
2024/02/08
国内外のブランド企業などのトップマーケターが集結するカンファレンス「マーケティングアジェンダ東京2023(主催:ナノベーション)」が2023年12月7日から8日にかけて、東京都内(ベルサール渋谷ファースト)で開催された。
このカンファレンスのレポート記事をnoteプロデューサー/ブロガーとしてビジネスパーソンのキャリア構築や、企業の広報やマーケティングのサポートを行っている徳力基彦氏に特別に寄稿してもらった。今回はその第1弾になる。
初日のオープニングキーノートでは「50歳で社内転職した冷凍食品ビジネスの成功と失敗」と題し、味の素 執行役常務 岡本達也氏が登壇。モデレーターはPreferred Networks SVP 最高マーケティング責任者の富永朋信氏が務め、ヒット商品誕生の舞台裏に迫った。
このカンファレンスのレポート記事をnoteプロデューサー/ブロガーとしてビジネスパーソンのキャリア構築や、企業の広報やマーケティングのサポートを行っている徳力基彦氏に特別に寄稿してもらった。今回はその第1弾になる。
初日のオープニングキーノートでは「50歳で社内転職した冷凍食品ビジネスの成功と失敗」と題し、味の素 執行役常務 岡本達也氏が登壇。モデレーターはPreferred Networks SVP 最高マーケティング責任者の富永朋信氏が務め、ヒット商品誕生の舞台裏に迫った。
「そのチャーハン、誰が食べているの?」消費者を徹底調査
日本の冷凍チャーハン市場が拡大するきっかけになったとされる、味の素冷凍食品の「ザ★チャーハン」をご存じでしょうか? 従来ファミリー向けが常識だった冷凍チャーハンを、男性向けに切り替えて大ヒットしました。実はその誕生の裏側にはさまざまなドラマがあったようです。
1987年に味の素に入社された岡本氏は、調味料のマーケティングを中心にキャリアを積んでこられましたが、50歳になったタイミングで味の素冷凍食品に出向の辞令を受けます。
味の素 執行役常務
岡本 達也 氏
1987年味の素入社。1996年から家庭用商品(「ほんだし」、「CookDo」、「ピュアセレクトマヨネーズ」、「クノールカップスープ」他)の開発・販売戦略などのマーケティング業務に従事。2014年味の素冷凍食品に出向。執行役員マーケティング本部家庭用事業部長着任後「ザ★」シリーズを手掛ける。2019年味の素執行役員就任。2022年執行役常務食品事業副本部長就任。2023年4月にマーケティングデザインセンターを設立しマーケティングデザインセンター長として、味の素のマーケティングプロセスの組織改革を推進し、100年先も愛されるブランドを目指す。
岡本 達也 氏
1987年味の素入社。1996年から家庭用商品(「ほんだし」、「CookDo」、「ピュアセレクトマヨネーズ」、「クノールカップスープ」他)の開発・販売戦略などのマーケティング業務に従事。2014年味の素冷凍食品に出向。執行役員マーケティング本部家庭用事業部長着任後「ザ★」シリーズを手掛ける。2019年味の素執行役員就任。2022年執行役常務食品事業副本部長就任。2023年4月にマーケティングデザインセンターを設立しマーケティングデザインセンター長として、味の素のマーケティングプロセスの組織改革を推進し、100年先も愛されるブランドを目指す。
冷凍食品と調味料は全く事業構造が違い、赴任当初はその独特さや業界の常識に驚くことが多かったとか。何しろ冷凍食品は、すべてのメーカーの商品がスーパーの冷凍食品棚に横並びで「全品50%オフ」で売られることが多いという特殊な市場です。
当時、日本の冷凍食品市場は5社がシェア20%で並んでいて熾烈な競争が展開され、味の素冷凍食品も赤字になる月があるほど利益が出にくい市場でした。
その競争の結果なのか、当時の冷凍食品棚には、赤と黄とオレンジという暖色のパッケージの商品ばかりが並び、デザインも長方形で同じ。しかも、商品ごとに各社が同じような容量で、料金まで横並びに販売しているという非常に特殊な状況でした。
そんな市場において、岡本氏は当時の味の素冷凍食品の社長から、市場で3位だった冷凍チャーハンを1位にするというミッションを受けることになります。
Preferred Networks SVP 最高マーケティング責任者
富永 朋信 氏
1992年大学卒業後、コダック社に入社。以来、日本コカ・コーラ、西友、ドミノ・ピザジャパンなどマーケティング関連職務を9社で経験。うち、西友、ドミノピザでなど5社ではCMO、マーケティング部門責任者を拝命。2019年7月より現職。マーケティングの核=人間理解という考え方に基づき、社内にとどまらずブランド、コミュニケーションから人事・組織戦略等多岐に渡るアドバイザリー業務を行う。 内閣府・厚生労働省など政府系機関の広報アドバイザー多数拝命。マーケター・オブ・ザ・イヤー審査員をはじめ、マーケティング系団体・カンファレンスの理事、議長などを多数拝命。OFFICEしもふり代表。著書に「幸せをつかむ戦略」(日経BP社)など。
富永 朋信 氏
1992年大学卒業後、コダック社に入社。以来、日本コカ・コーラ、西友、ドミノ・ピザジャパンなどマーケティング関連職務を9社で経験。うち、西友、ドミノピザでなど5社ではCMO、マーケティング部門責任者を拝命。2019年7月より現職。マーケティングの核=人間理解という考え方に基づき、社内にとどまらずブランド、コミュニケーションから人事・組織戦略等多岐に渡るアドバイザリー業務を行う。 内閣府・厚生労働省など政府系機関の広報アドバイザー多数拝命。マーケター・オブ・ザ・イヤー審査員をはじめ、マーケティング系団体・カンファレンスの理事、議長などを多数拝命。OFFICEしもふり代表。著書に「幸せをつかむ戦略」(日経BP社)など。
そこで、岡本氏が取り組んだのは、まず既存の商品を見直すことでした。当時の味の素冷凍食品のチャーハンは、「具だくさん五目炒飯」という名称で具材が8種類も入っていてコンセプトが曖昧。さらに買っている人も30~40代の主婦という認識はあるものの、実際に誰が食べているかを把握していなかったため、さまざまな調査を実施したそうです。
消費者のデプスインタビューなどを通じて、主婦が買ってはいたものの、実は「自分が不在で家族が困ったときの保存食」として買っているという事実が判明。それだけでなく、冷凍チャーハンを実際に食べているのは10代後半~20代前半の男性だったことが見えてきます。
そこで「食べる人のためのチャーハン」というコンセプトで、実際の顧客である食べ盛りの男性が求めているチャーハンはどういうものか、飲食店を徹底的に調査しました。その調査結果と、味の素冷凍食品がもともと持っていた技術を組み合わせて、他社では作れない「米の食感と、米の味付けを活かした新しいチャーハン」をつくれるという確信を持ったそうです。そこから、新商品である「ザ★チャーハン」の提案を社内に行いました。