マーケティングアジェンダ東京2023レポート #01

万年シェア3位から1位へ。味の素「ザ★チャーハン」に学ぶ、アイデアが上手くいく4つのポイント【マーケティングアジェンダ東京レポート】

 

必要なのは「共感」を広げること


 そして、アイデアを上手く行かせるためにもうひとつ重要だと言えるのが「善意も含めて反対を乗り切るのが大事」という点です。岡本氏は「製品企画をする人はひとりでは何もできないので、周囲のバリューチェーンの方々の『共感」を得ることが大事」と語ります。
  

 上からの指示や命令で、いやいややっているような状態では、当然40%程度の力しか出ません。共感を得て初めて120%の力を出してくれるというのがポイントです。「ザ★チャーハン」においても、部下のプレゼンがきっかけで社内に「共感」の輪が広がった結果、さまざまな部署が120%の力で協力してくれたそうです。

 特に岡本氏として最も記憶に残っているのは、「ザ★チャーハン」発売後に、予想を上回るペースで売れ行きが上がった結果、休売を覚悟するほどの状況に追い詰められたときに、工場長に言われた言葉です。土日も返上して勤務するようになってしまった工場に謝罪に行った際は、厳しい怒りの言葉をかけられるのを覚悟していました。

 しかし、その岡本氏に工場長は「何を言ってるんですか。このまま商品が売れてなかったら、一部のラインを閉鎖しなければいけなかったかもしれないんですよ。商品が売れて忙しいなんて、こんなにうれしいことはないですよ」と話します。
  

 ロジックで分かってもらうのも大事だが、相手の背景を理解した上で、人としての関係をつくる。その関係の上で生まれた共感こそが、ヒットを生むポイントだと、岡本氏は振り返ります。

 そして、1回良い方向に転がり出すと、「ヒットはヒットを呼ぶ」状態につながります。自信がなかった人も、良い方向に転がり出すと自信が得られるし、成功を体験していると、ひとつ2つの失敗をしても、くじけないチームになっていくそうです。

 最終的に、味の素冷凍食品の「ザ★チャーハン」は、岡本氏が本社である味の素に戻った翌年に、年間売上1位を獲得する結果となりました。

 自分のアイデアに対して反対が出てくると、そこで諦めてしまうというのは珍しい話ではないと思います。ただ、その反対の背景にある理由を理解し、周囲の人との関係をつくり、共感してもらって乗り越えることで、万年3位だったチャーハン市場で1位を獲得した。そんな味の素冷凍食品の事例は、多くの日本企業の参考になるように思います。
  
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