マーケティングアジェンダ東京2023 #02

脱・店舗ビジネスの常識、Yogiboとコナズ珈琲に学ぶ「体験」を重視する逆転の発想【マーケティングアジェンダ東京レポート】

 

感動体験と効率、「二律両立」は可能


 従来の店舗運営の常識に逆行する2つ目の成功事例は、KONA’S 代表取締役社長の阿部和剛氏がスピーカーとして登場、はなまる 企画本部CMOの髙口裕之氏がモデレーターを務めたセッションで紹介された、ハワイアンカフェ・レストランとして人気急上昇中の「コナズ珈琲」です。
 
KONA’S 代表取締役社長
阿部 和剛 氏

 東京生まれ。2023年4月よりKONA'S 代表取締役社長に就任。前職は、グローバルダイニング(モンスーンカフェなど運営)で料理長、総料理長を歴任し、執行役員を5年間従事。2020年4月、トリドールホールディングスに入社し、同年7月、トリドールジャパンに出向。同社にてカフェBUユニットリーダーに従事し、コナズ珈琲の業務改善を行い利益率を向上し、2023年4月、同社より分社化し、現職に就任。

 コナズ珈琲は「いちばん近いハワイ」というブランドコンセプトで、丸亀製麺でお馴染みのトリドールホールディングスが開始した新業態になります。コナズ珈琲が重視しているのもまた、店舗における感動体験です。

 そのポイントは、「圧倒的なハワイ空間」「選ぶのに迷ってしまうほどワクワクする商品」「すべてのお客様を笑顔にする接客」の3つです。これらを軸に店舗の外装や内装からメニュー、家具に至るまで、徹底的に「体験」を重視した選択をしているのが印象的です。
  

 飲食店と言えば、一般的には固定費をできるだけ下げ、効率的な運営をすることが成功のための常識と言われます。しかし、コナズ珈琲は内装への投資を一般的な飲食店の1.5倍かけたり、スタッフの動きやすさよりも顧客の「感動体験」を優先した座席配置をしたり、顧客がゆったりとくつろげる空間の提供に重きを置いています。


はなまる 企画本部 CMO 髙口裕之氏(左)と阿部氏(右)

 効率よりも感動体験を重視したアプローチは、利益率が低くなると思われがちですが、阿部氏は「二律背反だと思い込むのではなく、二律両立が可能だという前提で考えることが大事」と語ります。
  

 実際に、コナズ珈琲では感動体験を重視することにより、店舗数を増加させながら、その増加ペースよりも大きく利益率を向上することに成功します。2019年から2022年にかけて、店舗数を34店舗から41店舗に増やす過程で、売上高は153%の増加、営業利益はなんと335%の増加という非常に大きな成果を獲得しているのです。

 顧客がインターネットやSNSを使いこなすようになり、単純な商品や食品の購入であればネット通販やデリバリーでも可能な時代です。だからこそ、リアルの店舗においては効率や売上を追い求めるのではなく、顧客の「体験」を重視したほうがネットやSNSを通じた顧客の口コミにもつながり、結果的に売上を押し上げることが増えているのかもしれません。
  

 この2つの成功事例から、あらためてすべての業界でこれまでの「常識」を疑って、新しいアイデアに挑戦してみることが求められているのではないかと感じます。
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