ダイレクトアジェンダ2024座談会 #01
激変の2024年、ダイレクトマーケの最新潮流をI-ne、GDO、スクロールのキーパーソンが読み解く【ダイレクトアジェンダ座談会】
2024/02/14
2024年3月7日から9日にかけて、EC・通販事業に携わる全国のトップマーケターが集結する合宿型カンファレンス「ダイレクトアジェンダ2024」が鹿児島で開催される。それに先駆けて、カウンシルメンバーであるシンクロ代表取締役社長の西井敏恭氏、ゴルフダイジェスト・オンライン 執行役員の志賀智之氏、スクロール360 常務取締役の高山隆司氏に、特別ゲストとしてダイレクトアジェンダ2024のキーノートのスピーカーであるI-ne執行役員の伊藤翔哉氏も加えたトップマーケター4人が、ダイレクトマーケティングの最新潮流を読み解く座談会を実施した。
前編では、全体的に苦戦を強いられた2023年の動向から見えてきたものや、DtoC(Direct to Consumer:メーカーがオンラインストアなどを通じて直接顧客と取引するビジネスモデル)、ファンマーケティングの本質について議論が交わされた。
前編では、全体的に苦戦を強いられた2023年の動向から見えてきたものや、DtoC(Direct to Consumer:メーカーがオンラインストアなどを通じて直接顧客と取引するビジネスモデル)、ファンマーケティングの本質について議論が交わされた。
ダイレクトアジェンダ2024公式サイトは、こちら
コロナ禍の反動で大苦戦
――2023年のダイレクトマーケティングの潮流をどのように振り返られますか。
西井 EC(電子商取引)はコロナ禍の影響で3年分の売上を先取りしてしまったような印象があります。その反動で、昨年は各社苦戦していたのではないでしょうか。EC・オンラインは定着したものの、5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが変わり、「日常」が戻ったとき、それまでの伸びが止まってしまったケースが多いのです。
シンクロ 代表取締役社長
西井 敏恭 氏
1975年福井県生まれ。2年半にわたる世界一周の旅行記を更新したWebサイトが人気となり、帰国後、旅の本を出版、EC企業にてデジタルマーケティングに取り組む。二度目の世界一周の旅をしたのち、2016年にシンクロを設立。大手通販・スタートアップなど多くの企業のマーケティング支援やデジタル事業の協業・推進を行うほか、複数企業の取締役を兼任する。その傍ら旅を続け、訪問した国は150カ国近く。 全国のマーケティングイベントやビジネスフォーラムでの講演、雑誌・新聞・テレビなどメディア掲載多数。
西井 敏恭 氏
1975年福井県生まれ。2年半にわたる世界一周の旅行記を更新したWebサイトが人気となり、帰国後、旅の本を出版、EC企業にてデジタルマーケティングに取り組む。二度目の世界一周の旅をしたのち、2016年にシンクロを設立。大手通販・スタートアップなど多くの企業のマーケティング支援やデジタル事業の協業・推進を行うほか、複数企業の取締役を兼任する。その傍ら旅を続け、訪問した国は150カ国近く。 全国のマーケティングイベントやビジネスフォーラムでの講演、雑誌・新聞・テレビなどメディア掲載多数。
志賀 国内最大級のゴルフポータルサイトであるゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)の場合は、コロナ禍は少し特殊でした。特に2021年は顧客であるゴルファーが急増し、新規会員・顧客をたくさん獲得できましたが、2022年から「財布内シェア」に次第に旅行や飲み会が復活してきて、昨年は厳しい1年でした。
コロナ禍で在庫が想定外の時期に一気に納品されるなど、サプライチェーンの乱れも特徴的でした。値引きなどで粗利(売上高から売上原価を引いた額)を削りながら、在庫を売り捌かなければいけないケースが出て、西井さんがおっしゃる通り、昨年のEC業界はどこも苦しかったのではないでしょうか。
原材料価格の高騰、インフレによって、ゴルフクラブは驚くほど高額になり客単価は上がったものの、プレー人口は下降傾向になり、リテールの売上としては大変難しい年でしたね。
ゴルフダイジェスト・オンライン 執行役員 CMO /CIO
志賀 智之 氏
2008年入社後、IT戦略室長、情報活用推進部部長を歴任し、お客さま体験デザイン本部(現UXD本部)設立後、同本部長を経て執行役員CMO/CIOに就任。データの活用と徹底した顧客中心のマーケティング設計により、会員基盤やサービスの相互利用を着実に拡大し売上の連続成長を実現している。
志賀 智之 氏
2008年入社後、IT戦略室長、情報活用推進部部長を歴任し、お客さま体験デザイン本部(現UXD本部)設立後、同本部長を経て執行役員CMO/CIOに就任。データの活用と徹底した顧客中心のマーケティング設計により、会員基盤やサービスの相互利用を着実に拡大し売上の連続成長を実現している。
高山 我々スクロール360は、さまざまな企業の出荷を受託しています。店舗の稼働率が落ちた2021年は、多くの企業がECの売上が前年比1.3倍ほどに増え、中には10倍という出荷量もあり、社員総出で対応したのが印象的でした。2022年は受託した約120社のうち、前年比で売上が上がったのは全体の2割ほどしかなく、他はマイナスです。その傾向は2023年にも続いており、伸びていた企業でも売上は前年比で90%になるなど、特に食品通販系が不調でしたね。
DtoCにおいては、サブスクリプション系は、昨年10月から景品表示法の規制(※1)が厳しくなったこともあり、非常に苦しくなった印象です。コロナ禍でリアル店舗の広告が減った時に、サブスク系企業がテレビCM枠を大量に買って売上を伸ばしていましたが、リアルが戻ってきたことで相対的に広告費が高くなり、CPO(顧客獲得単価)が合わなくなるといった現象も起きていました。
スクロール ソリューション事業セグメントオフィサー 兼 スクロール360 常務取締役
高山 隆司 氏
1981年スクロール(旧社名ムトウ)入社以来、42年にわたり通販の実戦を経験。 2008年には他社のネット通販企業をサポートするスクロール360の設立に参画、以後、200社を超えるネット通販企業の立ち上げから物流受託を統括。 その経験を生かし2015年2月に「ネット通販は物流が決め手!」「シニア通販は『こだわりの大人女性』を狙いなさい」(ダイヤモンド社)を出版。
高山 隆司 氏
1981年スクロール(旧社名ムトウ)入社以来、42年にわたり通販の実戦を経験。 2008年には他社のネット通販企業をサポートするスクロール360の設立に参画、以後、200社を超えるネット通販企業の立ち上げから物流受託を統括。 その経験を生かし2015年2月に「ネット通販は物流が決め手!」「シニア通販は『こだわりの大人女性』を狙いなさい」(ダイヤモンド社)を出版。
西井 DtoCは3年ほど前から急速に盛り上がりましたが、その裏側は本質的なマーケティングをしなくても、コロナ禍の影響で伸びていた可能性があると思います。景品表示法によるステルスマーケティングへの規制は、特にアフィリエイト広告を多用する通販系スタートアップにとって影響が大きかったようです。
2024年に注目されているクッキーの規制(※2)も含めて、私は正しいことだと思っています。きちんとやれていた企業は売上や顧客との関係をキープできますが、やれていなかった企業の売上はガクンと落ちるでしょう。「DtoCはもう終わっている」と言われる向きもありますが、そうではなく、あらためて本質的なマーケティングをやれているかが問われているのではないでしょうか。
志賀 近年、収益認識基準(売上高の会計処理の基準)が新しくなって、それまで一括で計上していた売上を複数月に按分するようになり、見かけ上の売上が伸びなくなったという面もありますね。