ダイレクトアジェンダ2024座談会 #02
生成AI、物流、ライフスタンス…ダイレクトマーケの最新キーワードを徹底議論【ダイレクトアジェンダ座談会】
2024/02/20
新概念「ライフスタンス」とは
――ダイレクトアジェンダ2024の全体テーマは「ライフスタンス」です。提唱者である中川政七商店 代表取締役会長の中川政七氏が会場で解説します。耳慣れない言葉かと思いますが、どのような印象をお持ちですか。
西井 実はこの言葉をカンファレンスのテーマに推したのは私です。2~3年前に中川さんから聞いて、非常に面白く感じました。この対談の前半で話題になったDtoCの話にも通じますが、企業の内側から滲み出る「スタンス」みたいなものが、SNSを含めて外部に漏れ伝わってしまう時代です。買い続けてくれるのは、会社のスタンスに共感してくれる人。ファンマーケティングと言っても、たとえばイベントなど他社の成功事例をなぞればいいというのではなく、愛用者の声を取り入れて商品を改善するなどするからファンが増えていきます。
これまでは「モノ消費からコト消費」と言われ、メーカーがお客さまに「こういうライフスタイルどうですか」と提案して売っていましたが、これからの時代は企業と消費者が共感できることを、一緒に作り上げていく。中川政七商店は、そこに形式や手法だけじゃなく、本気で向き合っているところが支持されているのだと思います。
高山 昨今、企業の経営者と話すと必ずSDGsの話題が出てきて、「それを語らないと会社の価値が下がるのでは」という強迫観念すら感じます。しかし、本来はそのような動機付けではなく、まず会社のスタンスがあって、SDGsはその中の一つというのがあるべき姿なんでしょうね。
「ライフスタンス」という言葉を聞いたとき、思い浮かべたのは米国のアウトドア用品メーカー「パタゴニア」でした。トランプ政権に対してメッセージを発信するほど、企業としての強固なスタンスを持っているところが印象的です。
「SDGs」について語り合う志賀氏(左)と高山氏。西井氏と伊藤氏は滞在先からリモートで参加した
志賀 だから、パタゴニアは支持されているんでしょうね。「あのメーカー、かっこいい」と。日本では今、SDGsの取り組み自体が、いわば「手法」になってしまっていないか懸念しています。その前には「CSR(企業の社会的責任)」がブームでしたが、CSRもSDGsも、「どうしたら熱心に取り組んでいるように見えるか」というテクニカルな話になってしまって、一部では利権と化しているように思えます。もちろん、SDGsは大事なことです。企業が自社の利益だけでなく、社会や環境、人権との循環システムの中で因果応報的に思考することは、とてもいいことだと考えます。
高山 現代の消費者は、SDGsの取り組みが単なる手法なのか、その企業のスタンスに基づくものなのか、見抜けてしまうでしょう。従業員にとっても、単に紙の利用を削減しなさいと上から命じられるだけでは、カタログ担当者が途方に暮れるだけだと思います。
志賀 だからこそ、ライフスタンスというか、自社のスタンスを内外に明確にするのはすごく重要ですね。共感できない人がいたとしても、それはそれでいいと思います。
伊藤 企業の上層部が投資家やお客さま向けにはアピールするけれど、企業全体やブランド全体で体現できていないとみられるケースも多いです。まずは身近な社内から理解・浸透を目指すべきだと思います。
西井 企業がどんな形で社会貢献をするかは、企業によって絶対に異なるはずです。パタゴニアのような「スタンス」は、恐らく社員にも浸透していて、出てくるアウトプット、つまりマーケティングや商品が、そこに寄り添っていることが分かります。
一方、日本で少し気になるのは、みんなが「多様性」と言いながら、投資家向けに同じようなアピールをする結果、多様性が失われているように感じることです。個々人がそれぞれのスタンスに合う会社への入社や、商品を選択することで、社会全体の多様性が保てるはずです。顧客との関係においても、モノづくりではいい会社がたくさんあるのに、独自のスタンスが伝わらないことで離脱されてしまうのは、すごく勿体無いと感じます。
「ライフスタンス」については、ダイレクトアジェンダ2024で中川さんご自身が、その真意や重要性を解説してくれます。参加者はそこから、これからの時代の企業やマーケティングのあり方について、思索を深めていっていただきたいです。
情報やノウハウを得るだけだったらオンラインでできますが、ビジネスは人間関係で動くことが多いです。今回の座談会もオンラインと対面とハイブリッドですが、これも元々の信頼関係があってこそ。3月のダイレクトアジェンダ2024に参加される皆さんには、リアルならではのネットワーキングも活用していただきたいですね。
――本日はありがとうございました。
ダイレクトアジェンダ2024 開催概要
- 名称
- ダイレクトアジェンダ 2024
- 日時
- 2024年3月7日(木) - 9日(土)
- 会場
- SHIROYAMA HOTEL kagoshima(城山ホテル鹿児島)
〒890-8586 鹿児島県鹿児島市 新照院町41番1号 - 参加者
- 250名(通販事業主125名、パートナー125名)
- 参加方法
- ブランド枠:無料(事前審査制)
プレミアムブランド枠:180,000円(税込198,000円)
パートナー枠:450,000円(税込495,000円) - ハッシュタグ
- #DA24
- 主催
- 株式会社ナノベーション
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