あなたのクリエイティブ・ジャンプは何ですか?~ネプラス・ユー京都2024 特別企画~ #08

「男梅」をヒットさせたノーベル製菓の「特徴の極大化」と「定番化」戦略【ネプラス・ユー京都2024特別企画】

 

タッチポイント増やし「定番化」にジャンプ


 他社との差別化とお客さまの満足度。当社の場合、この2点を両立させるのが「特徴の極大化」だと思います。「成功体験は二度通用しない」が基本姿勢なので、特定の「勝ち筋」というわけではありませんが、ヒット商品を見ると「特徴の極大化」がうまくいっている例が多いです。

 たとえば「男梅キャンデー」なら梅の塩気と旨みを極大化した圧倒的な梅干し感。看板商品の「VC-3000のど飴」ならビタミンCが1袋に3000mgも入っているという圧倒的なビタミンC感。「ペタグーグミ」は圧倒的な薄さ、「ソルベットグミ」なら圧倒的なシャリシャリ感、といった具合です。

「男梅」に関しては、実は1980年代~90年代にかけて一度、前身となる梅キャンデーの「梅酸っぱい」をつくったのです。当時は、キャンデーは女性や子供が食べるものというイメージが強くて、塩分の強いこの商品はあまり売れなかったのですが、実は製造工場で働く男性陣に試作品が大好評だったと聞きました。分厚い作業服を着ていて滝のように汗をかくので、塩気が好評だったのでしょうね。

 当時の開発部長だった社員がそのことを覚えていて、2000年代に世の中で「ちょいワルおやじ」など「男ブーム」があった時に、「『男の塩分補給』を打ち出したら売れるのではないか」と提案したのです。そこで梅の「塩味」と「旨味」をさらに極大化した「男梅キャンデー」を2007年に売り出しましたが、当初は全く売れませんでした。
 

 売上が伸びず、仕方なく販売を縮小していきました。すると、買ってくださった人から「どこで売っているのか」と問い合わせをたくさん頂いたのです。そこで営業がもうひと頑張りして、市場を広げたところ、夏場にドカンと売れました。梅の季節ということで深く考えずに2月に発売開始していたのですが、夏にこそ塩分の需要が伸びるということに、その時気づきました。今でこそ「塩分補給」という概念が広がっていますが、「男梅」はその新たな市場を広げるきっかけになった商品だと思います。

―― 「男梅」というネーミングも印象的ですが、異論はなかったのですか。

 当時はキャンデーを買うのは女性が多いという認識が主流でしたが、コンビニなどの販売動向をあらためて精査すると、女性より男性のほうが圧倒的に購買数が多かったのです。おそらく「のど飴」というジャンルが登場して以降、キャンデーは甘い嗜好品というだけでなく、仕事に役立つ機能的な食品というイメージが加わっていたことが背景にあると思います。

 キャンデーは実は男性が買っているということが分かったので、敢えて「男性向けにこだわってつくった」ということを前面に出したネーミングにして、パッケージも黒と銀を基調としたシックなデザインにしました。「女性が買いにくくなる」という意見がありましたが、男性向けの商品は実は女性も買っているということも、データから分かっていました。「男梅」というネーミングは現代のジェンダー観からすると、違和感があるかもしれませんが、結果的に性別を問わず関心を持っていただける、ユニークな世界観を確立できたと思います。

――長く愛される商品になれたのはなぜですか。

 キャンデーは一つの商品がヒットしたら、別のフレーバーに横展開していくのが一般的ですが、梅味はそれが難しくて、別タイプの商品にして失敗も犯しました。たとえばタブレットタイプにしたら硬すぎて噛めなかったり、のど飴にすると塩分が強すぎて喉が痛くなったりと、うまくいかなかったですね。そこで素材を生かした「男梅ほし梅」を出したら、これはうまくはまりました。実は干し梅のようないわゆる「素材菓子」は、通常の工程よりかなり手間がかかることもあって、当時のノーベル製菓では正直「諦めムード」だったのですが、「男梅ほし梅」のおかげで起死回生できました。

 同商品は「男梅」のブランドを広げるきっかけになり、異業種からもお声が掛かるようになってサッポロビールさんとの「男梅サワー」や、大森屋さんとの「バリバリ職人 男梅味」が生まれました。いずれも「男梅」の圧倒的梅干し感を再現するのに苦労はありましたが、長く安定的にご愛顧いただけています。

 私の個人的なマーケティング的な野心なのですが、スーパーの売り場の各レーンに「男梅」を並べたいという思いがあります。飲料や乾物など、他の棚にも「男梅」ブランドの商品が並ぶことによって、幅広いお客さまとのタッチポイントが生まれ、最終的にお菓子コーナーにある「男梅キャンデー」に行き着いてくれたら、誰に対しても寄り添える本物の「定番」になれると思うのです。そのために現在も、広告宣伝部などと協力してアパレルなど異業種との協力を広げ、「男梅」がより多くの方に親しんでもらえるブランドになるよう試みています。

―― 幅広いタッチポイントを設けて「定番」になることが、長期的な利益を最大化する「クリエイティブ・ジャンプ」になるのですね。本日はありがとうございました。
 

クリエイティブ・ジャンプにつながるアイデアが結集


 5月20日、21日に京都で開催される「ネプラス・ユー京都2024」にはクリエイティブなアイデアを実行して成果に結び付けるスピーカーや、全国のマーケターが多数集結する。バラエティーに富んだ施策や思考法から多彩なインスピレーションを得て、ビジネスの成果へとつなげる機会にしてほしい。
 

ネプラス・ユー京都2024 開催概要

  
名称
Ne Plus U 京都 2024(ネプラス・ユー 京都 2024)
日時
2024年5月20日(月) - 21日(火) *2DAYS
会場
京都テルサ テルサホール
〒601-8047
京都府京都市南区東九条下殿田町70 JR京都駅(八条口西口)より南へ徒歩約15分
参加方法
ブランド(2DAY):無料(事前審査制)
ブランド(ワンデイ):無料(事前審査制)
プレミアムブランド枠:100,000円(税込110,000円)
パートナー枠:250,000円(税込275,000円)
定員
250名
ハッシュタグ
#NPU24
主催
株式会社ナノベーション
特別協力
アジェンダノート(Agenda note)
ネプラス・ユー京都2024 公式サイトは、こちら
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