ネプラス・ユー京都2024 #08

アバターで売上7倍、マーケティングへの実装をロボット学の石黒浩氏が解説【ネプラス・ユー京都2024レポート後編】

 

アバターのビジネス活用効果は


馬渕 なるほど。先生とは以前にも対談させていただいたのですが、今のお話を聞いて、アバターのユースケースのレベル感がかなり上がっているという印象を受けました。とはいえ、大規模言語モデルは本当に人間を理解しているかというと、理解していないと思うのですが、その辺りはいかがですか。
 
Deloitte Consulting パートナー 執行役員
馬渕 邦美 氏

2009年:世界No2広告代理店グループのオムニコムのデジタル・エージェンシーTribal DDB Tokyo ジェネラル・マネージャーに就任。日本における事業の立ち上げを成功させる。
2012年:WPPグループである世界No1広告代理店オグルヴィ・ワン・ジャパン、ネオ・アット・オグルヴィの代表取締役に就任。オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャ パン・グループのデジタルビジネスを牽引。グループの再生を成功させた。
2016年:オムニコム・グループのNo1PRエージェンシーであるフライシュマン・ヒラード SVP&Partner。
2018年:Facebook Japan (META) Director / 執行役員
2020年:PwC Consulting パートナー 執行役員
2024年:Deloitte Consulting パートナー 執行役員 より現職。
•日本ディープラーニング協会 有識者会員
•一般社団法人 Metaverse Japan代表理事

書籍:
2013年 データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」 日経BP社
2016年 ブロックチェーンの衝撃 日経BP社
2022年 東大生も学ぶ「AI経営」の教科書 東洋経済新報社
2022年 Web3新世紀 デジタル経済圏の新たなフロンティア 日経BP社
2023年 Generative AIの衝撃 日経BP社
2024年 AI時代のベンチャーガバナンス 日経BP社 

石黒
 多くの対話パターンを基に、「こう言われた時はどう答える」というのが、ある意味で人間よりも適切に答えられるようになっているのは事実です。そもそも「理解とは何か」というのは非常に難しく哲学的な問題で、人間が人間を理解しているかというと怪しいと思います。このため、大規模言語モデルが人間を理解していないというのはある意味、当然であり、それも人間らしさかなと思います。人間との一番の違いは、マルチモーダル(テキストや音声、画像など複数の情報を組み合わせること)や、ローカルな情報を取り入れられるかどうかでしたが、そこの違いはどんどん無くなってきていますね。

馬渕 マルチモーダルは言葉や映像を組み合わせて別の画像をつくるといったことですが、その方向性はどんどん出てきていますね。ところで、先ほどアバター保険相談ではアバターの方が、人間の接客より売上が相当に伸びているんでしょうか。

石黒 1.5倍ほどですね。新人がアバターを使って接客すると7倍ほど売上が伸びたという例もあります。本当に爆発的に、スキルが上がる人がいますね。

馬渕 驚異的な数字ですね。会場にいるマーケターの皆さんは、売上が上がるならぜひやってみたいと思うのではないでしょうか。アバターやAIで売上が伸びるのは、単にアバター接客だからという理由だけではないと思うのですが、どんな秘訣があるのでしょうか。

石黒 保険市場のケースですと、当社のスタッフがきちんと張り付いて、細かい情報をもらった上でデザインしています。一緒に作り上げてみて、フィードバックをもらってまた修正するということを繰り返しています。

馬渕 保険を売るということに関しては、AIもそれほど学習しているわけではないので、スタッフさんが張り付いて恐らくは別のデータベースなども参照させて、チームワークで改善していっているんですね。生成AIが大幅に普及しましたが、そういった目的をうまく出力させるためのプロンプトエンジニアリングを繋いでいくのが大事で、全体的な仕組みづくりを考えないと、なかなかビジネスに転用していくのは難しいと思いました。

また、AIが広がってきたことで、 逆に「人間ってなんだろう?」ということを問う機会が増えたような気がします。たとえばAIはいわゆる「ハルシネーション」、もっともらしい嘘をつく、という話がありますが、人間の方がよほど、適当なことを言ったりすると思うんです。そのあたり、いかがでしょうか。

石黒 僕はハルシネーションという言葉を聞いた時に、もう完全にAIは擬人化されたなと思いました。エラーやバグとは言わず、「妄想」と呼んで、「AIは人間だ」という前提で議論しています。その上で、人間とAIのハルシネーションはどう違うのかということを議論します。AIによって人間についてより深く考えられる社会になってきたし、繰り返しになりますが、それが人間の生きる目的だと思います。

2025年の大阪万博で、50年先の未来を展示する予定です。人間が科学技術によってどのように命を広げていくか、50年後にどのような生活をするか。 協賛企業と共創するパビリオンでは、約20体のアンドロイドと約30体弱のロボットを展示し、非常に迫力のあるものになります。千年先の人間の姿を表現したアンドロイドも展示する予定です。



馬渕 ありがとうございます。日本政府は今、テクノロジーフレンドリーに変わりつつあり、AIやメタバースに関しても規制緩和やイノベーションを促す法律の検討に向かっています。私は今こそチャンスという風に捉えています。

石黒 チャンスだと思いますが、法律改正に関して日本はかなり遅れています。どんどん新しい判例をつくりながら新しい世界に適用させていかないと、また遅れをとってしまうと危惧しています。これからの社会を日本は変えていかないといけないです。

馬渕 まだまだ話すことはたくさんありますが、お時間が来ましたので、こちらで終了したいと思います。石黒先生、本日はありがとうございました。


 
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 ナノベーションは、やさしいAI教育によってAIを使いこなす人材支援を行う「AI for U」と共同で、新たな教育プログラムとして「AI UNIVERSITY For Marketers」を9月3日に開講する。本スクールの開講を記念して、生成AIの基礎知識としてマーケティングにおける活用事例やプロンプトエンジニアリングの応用事例を解説・実践できる無料セミナー(説明会)を8月2日に実施する。Deloitte Consulting パートナー 執行役員の馬渕邦美氏が登壇し、AI時代のマーケターのキャリアパスや求められるスキル、企業におけるAI活用の課題と展望について語る。

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