マーケティングアジェンダ2024レポート #02
YOASOBIのヒットをフェーズごとに徹底解剖、最適解を探し続けることの大切さ【マーケティングアジェンダ2024レポート】
2024/09/04
当たり前のことを地道に細かく、「10~100」のフェーズ
徳力 コロナ禍ではオンラインで開催するライブが中心となる中、YouTubeでの無料生配信では30万人が視聴し、2020年にはNHK紅白歌合戦への出場も果たしましたね。
屋代 紅白への出場は、「その後」のことを特に意識しました。基本的に世の中は、初めて知ったアーティストがその翌年何をしているかなど、あまり興味ないですよね。
そのため翌年の2021年はアルバムを2枚リリースしました。さらに、アニメもやるし、CMもやるし、いろいろな企画でさまざまなところに接点をつくることで、紅白で一瞬でも注目してくださった人からYOASOBIという存在をもう少し一般的なものにするフェーズとして動きました。
徳力 その後は、インドネシアのジャカルタやフィリピンのマニラで開催された音楽フェスに出演するなど、海外へと活動の幅を広げていますね。
屋代 ジャカルタやマニラで出演した「Head In The Clouds Festival」は、米国を拠点にアジアの音楽をグローバルに広げる活動をしているレーベルの88risingが主催をしているフェスで、出演オファーをいただきました。
YOASOBIとしてもインドネシアやフィリピンでのストリーミング再生のシェアはすごく大きいので、もしかしたらお客さんがいるかもしれないと思って出演してみたところ、ジャカルタではほぼ全曲日本語でお客さんが熱唱してくれたんです。
意外だったのが、通常スマホを掲げて撮影する場合ステージ上のアーティストを撮ると思いますが、自撮りしている人もいたんですよね(笑)。YOASOBIのパフォーマンスを見て、歌って感動している自分をSNSに投稿してバズるためにやっているわけです。
Mba I feel you mba, I feel you :sob:#YOASOBI #HITCJAKARTA pic.twitter.com/dPcS0iJnxI
— OJI :watermelon: :umbrella_with_rain_drops:️ (@nexgill) December 4, 2022
日本語で大合唱する自分を撮影しているファンの様子
徳力 この熱量と感動はすごいですね(笑)。
屋代 そうなんです(笑)。海外では楽しみ方がアーティストのライブを思い出に残したいというよりも、楽しんでいる自分自身のことを多くの人に共有したいや、残しておきたいという考えの人が多いんだなという印象を受けました。
もちろんアジアの中でも国や地域によって、その思考は千差万別だということも海外ツアーを通してわかったので、ひと口に「海外」とくくると落とし穴があるなというのもすごく学びになりました。
徳力 英語版もリリースしていたから、海外からの注目やYouTubeの視聴も増えてきていたんですよね。時系列としてはどういう順番だったんですか。
屋代 順番でいうと、2020年に「夜に駆ける」が海外でも聴かれ始めて、2021年の春先ぐらいに英語版を制作しました。そもそも、ボーカロイドをバックグラウンドにしている音楽は、海外リスナーの比率が高いんです。そのため、海外リスナーのベースがあることは分かっていました。
また、たまたまボーカルのikuraが幼少期に米国のシカゴに住んでおり、英語の発音がよいという武器がありました。それは1つの強みになるということで、試しに英語版を制作してみたところから始まりました。
徳力 今やアジアだけでなく米国にも進出していますよね。2023年は「突破」というフレーズをつけられています。世代や国籍も幅広くヒットし、アニメ「【推しの子】」のオープニング主題歌「アイドル」に関しては、どう狙いを定めてきたのでしょうか。
山本 これまでのさまざまな情報や要素をもとに仮説を立ててプロモーションを実行し、場合によってはクイックに判断を変えることもありました。たとえば「【推しの子】」の第1話がテレビで放送されるタイミングで最初のピークを持ってくるために、「アイドル」のリリースとMV公開も同じタイミングに設定しました。基本的には何か出してみて、その反応がよければ、そこに燃料を集中投下して、その火を大きくしていくことを意識していましたね。
音楽チャートで1位になったときも「チャートで1位になりました!」とポジティブな情報をすぐに投稿したり、応援してもらえるようなことがあればそれをこまめに発信したりしていました。補足情報が多ければ多いほど、その情報をみてくれた人が友人や知人に「アイドル」をおすすめしてくれます。
そのときに、たとえばチャートでも1位になっていて「【推しの子】」というアニメのオープニング主題歌にもなっていて、そもそもアニメが面白くて、というように次の人におすすめしてもらいやすいんです。イメージとしては、そのときの武器みたいなものを渡せるように、どんどんと情報を発信していきましたね。「アイドル」をリリースしたときも、基本的には当たり前のことを地道に細かく取り組んでいました。