マーケティングアジェンダ2024レポート #02
YOASOBIのヒットをフェーズごとに徹底解剖、最適解を探し続けることの大切さ【マーケティングアジェンダ2024レポート】
2024/09/04
状況に合わせて「最適解」を探し続ける
徳力 プロモーションするために山本さんと屋代さんが何に取り組んでいるかというと実はシンプルで、その状況に合わせて「最適解」を常に探し続けるということですよね。もう少しSNSの投稿など情報発信について詳しく教えてください。
屋代 「アイドル」では、前提としてアニメ「【推しの子】」のタイアップ企画ではありましたが、そもそもAyase自身が原作漫画の大ファンということもあり、熱量のこもった強い楽曲が仕上がっていたのでコンテンツの強さもあります。その上で、たとえばSNS上では、YOASOBIに関するどんな内容がどれほど広まっているのかという話題の総量やボリュームはかなり意識していました。
ファンが今注目してくれている内容とは違う内容の投稿を増やしてもなかなか興味をもってもらえません。ただ、すごい盛り上がっている内容があれば、あえてファンのひとりにフォーカスすることで、より話題化するので臨機応変にバランスをみながら投稿しています。
徳力 SNSへの投稿を「アイドル」のときには普段の2.5倍ぐらい取り組んでいたと伺いました。
屋代 そうですね、意識して通常よりも多く投稿していました。いわゆるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進では、それこそ踊ってくれたり歌ってくれたりするファンが多くいたので、SNS上に上がっている動画を一つひとつ見て、しっかりとコメントするようにしていました。
また、先ほど話にあがった英語版を制作しているときも、完成までに時間がかかるので、「今、制作しています」みたいなことも投稿することで、盛り上がっている空気を消さないようにしていました。
というのも、今の時代、音楽コンテンツは忘れられていくスピードも速いですし、そもそも世の中にコンテンツがあふれていて、かつデジタルなのですべて並列が可能で何かひとつだけが勝つことは基本的にないと思います。あとは、もう徹底的にやりきるだけで差がつくと思います。
徳力 「アイドル」のヒットまでにもさまざまな要因がある中で、山本さんは振り返ってみて意識していたことはありますか。
山本 音楽の場合、アーティストありきなので、YOASOBIの場合でももちろんAyaseがやりたいことを尊重しますが、売れる作品を必ずつくるというよりは素晴らしいものをつくることを意識して取り組んでいます。
ただ、こういうタイミングでこれを出すなど、時系列はしっかり考えています。幅を見せたいタイミングや若い人に聞いてほしいときもあれば、小説を曲にするというコンセプトをしっかり伝えていこうというフェーズなど、さまざまです。この曲はこういう目標が達成できたらいいよねということを一つひとつ定めながら、売上以外の評価軸でもいろいろと検討していました。
徳力 YOASOBIプロジェクトとして、従来の音楽のプロモーションの常識とは全然違う視点でさまざまな施策を実行されてきたと思いますが、それをどう突破していくかということについて、最後に締めのコメントをいただければと思います。
屋代 私の場合は冒頭で紹介したように、新規事業で立ち上げたサービスがなかなかうまくいかず、試行錯誤しながらYOASOBIにたどり着きました。それ以前も苦労の連続で、うまくいかないときに、あらためて自分たちの強みに立ち返るようにしています。あと、周りを見渡して、そこで頑張っている近い距離の人間を頼って、そこからも人の力を借り続けて、今回とうとう沖縄まで来てしまったみたいな感じなので、それがすべてだなという風に思っています(笑)。
徳力 ありがとうございます。辛いときに仲間を見つけることは意外にやらないかもしれないですもんね。山本さんからも締めのコメントをお願いします。
山本 どうしてもミスは発生しますし、横やりが入ったり、さまざまな事情でできないことも当然あったりしますが、それはそれとして割り切っています。それに仮に横やりが入ったとしても、その人も関わろうとしてくれていると考えて、そこも巻き込んでうまくプラスに変えていけばいいですし、失敗したとしても、その失敗も含めて最終的にプラスに持っていければそれでよいと思うんです。
うまくいかないこともありつつ、うまくいくようにカバーしていくことが重要です。また、それを繰り返すことで徐々に成果がついてきたりするので、そういう前向きな考え方が私のチーム内でも浸透しているんだと思います。
徳力 ありがとうございます。新規事業がうまくいかなくて試行錯誤していた人たちが、5年でグローバルまで突き抜けられるということが証明されています。ぜひ皆さんも刺激を受けて、次なる事例の参考にしてください。
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