ライジングキャンプ2024レポート #01

感動を生み出し続けるトリドールが掲げる「二律両立」 南雲克明CMOの思考法【ライジングキャンプ2024レポート】

 若手マーケターに必要な議論と共創のための学びのキャンパス「ライジングキャンプ2024(主催:ナノベーション)」が2024年7月23日と24日に東京(東京大学 伊藤国際学術センター 伊藤謝恩ホール)で開催された。

 キーノートでは「『感動』を生み出すマーケターになるには」と題して、トリドールホールディングス 執行役員CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長の南雲克明氏がスピーカーとして登壇した。同社は想像を超えたヒット商品を数多く生み出し、コロナ禍や物価高で打撃を受ける外食産業の中でも、新たな価値を創造し続けている。

 一方で、「丸亀シェイクうどん」や「丸亀うどーなつ」など、従来の価値観を塗り替えたヒット商品は企画当初、社内から大反対を受けたという。「反対されたほうが売れる」と豪語する南雲氏の思考と戦略、そして消費者に感動をもたらすマーケターに求められるスキルセットとは何か。花王 DX戦略部門 インタラクティブプラットフォーム統括センター オウンドメディアインプリメント部の廣澤祐氏がモデレーターとして切り込んだセッションをレポートする。
 

二律両立で感動創出につなげる


廣澤 今回は「『感動』を生み出すマーケターになるには」というテーマで、感動を生み出しながら、最終的には利益も生み出して勝ち続けるビジネスパーソンの要諦を明らかにしていきたいと思います。

トリドールホールディングスと聞くと、みなさんはまず「丸亀製麺」を思い浮かべると思いますが、海外も含めてさまざまなブランドを展開されています。

南雲 はい、約20ブランド展開しており、売上は国内と海外で6:4くらいの割合です。
 
トリドールホールディングス
執行役員CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長
南雲 克明 氏

 早稲田大学大学院商学研究科卒、MBA。コナミスポーツ、サザビーリーグなどBtoCの事業会社において様々なブランドのマーケティング責任者を歴任。2018年トリドールホールディングス入社。2022年より現職。“感動(KANDO)”を起点に、感性とデータサイエンス両側面から持続的に選ばれる確率を高める「感動ドリブンマーケティング」を推進。ブランド×CX×EXのスパイラルアップモデル、消費者に選ばれるパーセプションと衝動を二律両立させるマーケティングモデル、丸亀うどん弁当・丸亀シェイクうどん・丸亀うどーなつなどのコンセプト・コミュニケーション・クリエイティブ開発も手掛ける。ビジネス・ブランド・企業価値を持続的にグロースさせ続けるマーケティングの革新に取り組む。

廣澤
 「MARUGAME UDON」は、海外でも非常に人気ですよね。

南雲 そうですね。客単価でいうと日本の2~2.5倍くらいです。海外のお客さまは天ぷらをたくさん食べるんですよ。国内のお客さまは平均して2個程度ですが、海外は5、6個食べるんです。

廣澤 少し胸やけしそうですね(笑)。続いて、中期経営計画についてです。新3カ年計画をみると、引き続き海外展開に向けて積極的に投資していく予定ですね。

南雲 はい、日本国内は人口が縮小していきますし、市場規模が小さいです。国内もまだ伸びる余地はありますが、海外展開に注力することでよりダイナミックに業績を伸ばしていくことができると考えています。

廣澤 一般的に店舗ビジネスの場合、店舗数を増やして売上と利益の両方を伸ばしていくのがビジネスモデルの軸になっています。その中で、トリドールでは、いかに感動体験を創出しているのでしょうか。

南雲 私は感動体験を創造するために「二律両立」というキーワードを掲げています。皆さんも「二律背反」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。ビジネスにおいては、どちらか一方を選んで、もう一方は諦めざるを得ないという場面があります。しかし、当社はその両方を追求していくことを目指しています。
   トリドールホールディングスの中長期経営計画の中で、強みの源泉を「二律両立」というキーワードで表現している(※参考ページ

「二兎を追うものは、一兎をも得ず」ということわざがありますが、二兎を追わなければ二兎を得られない、という発想です。狭い道かもしれませんが、探求し続けて両方を手にすれば、感動体験を創出したり、ブルーオーシャンにポジショニングできたり、最終的にはビジネスの成長につながったりするという考え方です。

廣澤 非効率に見えたとしても、両方を追求し続けるということですね。具体的な事例について教えてください。

南雲 丸亀製麺は国内に850店舗、グローバルも入れると1100店舗を展開しており、それらすべての店舗でうどんを小麦粉からつくっています。外部のコンサルタントからは「最近の主流はセントラルキッチンで、そんな非効率な方法をしていては利益を伸ばせません」とよく言われます。ただ海外の店舗も含めて、その非効率な方法がお客さまから評価されているんです。

「そこでしかできない体験」と「世界中どこでもできる体験」、そして「手間暇かけてこだわって展開すること」と「スピーディーに効率的に展開すること」という、相反する2つの事象の追求が、結果的に当社の強さにつながっていると思います。

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