ライジングキャンプ2024レポート #02

トリドールCMO南雲克明氏が語る「感動体験の追求」に必要な戦略的思考とは?【ライジングキャンプ2024レポート】

前回の記事:
感動を生み出し続けるトリドールが掲げる「二律両立」 南雲克明CMOの思考法【ライジングキャンプ2024レポート】
 若手マーケターに必要な議論と共創のための学びのキャンパス「ライジングキャンプ2024(主催:ナノベーション)」が2024年7月23日と24日に東京(東京大学 伊藤国際学術センター 伊藤謝恩ホール)で開催された。

 キーノートでは「『感動』を生み出すマーケターになるには」と題して、トリドールホールディングス 執行役員CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長の南雲克明氏がスピーカーとして登壇した。同社は想像を超えたヒット商品を数多く生み出し、コロナ禍や物価高で打撃を受ける外食産業の中でも新たな価値を創造し続けている。

 第1回では、トリドールホールディングスが感動体験を追求するために取り組んでいることや、南雲氏のマインドセットについて紹介した。第2回では、感動を生み出すために必要な具体的なスキルや戦略的思考ついて詳しく紹介する。
 

感動を生み出し続けるために必要な7つの素養


廣澤 先ほどはマインドセットの話でした。次は、具体的に何を磨き込んでいくべきかというスキルについてです。まずは参加者のみなさんの意見を聞きたいと思います。

参加者 言語化する能力が大事かなと思います。

南雲 ありがとうございます。やはり何事も言語化しないと伝わらないですよね。

廣澤 続いて、もう1人聞いてみたいと思います。

参加者 自分の中で突き詰めていくことだと思います。「ここってどうなんだろう?」というように深掘りして、思考力を高めることが大事だと思います。

廣澤 ありがとうございます。どれも正しいと思いつつ、南雲さんの考えをみていきましょう。
 
勝率を上げ続けるために必須の能力、ハードスキルとは?

※すべては目的がスタート地点
1. 戦略的思考 (大きいところから考える、仮説思考、しないことを決める)
2. 少し先の未来を想像し、仮説をつくり、画を描く力
3. マーケティング思考(Why・Who・What・Howで整理。WhoとWhatが大事) 
4. スピード (考えるスピード・意思決定スピード・行動するスピード)
5. インサイトを見つける力
6. 感性とデータサイエンスの両方を駆使できる力
7. 信じてやりきる力

南雲 すべてのスタート地点は、目的です。その前提に立って、7つのポイントを挙げています。まず1つ目は「戦略的思考」です。大きな視点から全体を考えたり、仮説を立てて思考したりしていくことが重要です。そして、何をしないかを決めることも大事です。
 
トリドールホールディングス
執行役員CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長
南雲 克明 氏

 早稲田大学大学院商学研究科卒、MBA。コナミスポーツ、サザビーリーグなどBtoCの事業会社において様々なブランドのマーケティング責任者を歴任。2018年トリドールホールディングス入社。2022年より現職。“感動(KANDO)”を起点に、感性とデータサイエンス両側面から持続的に選ばれる確率を高める「感動ドリブンマーケティング」を推進。ブランド×CX×EXのスパイラルアップモデル、消費者に選ばれるパーセプションと衝動を二律両立させるマーケティングモデル、丸亀うどん弁当・丸亀シェイクうどん・丸亀うどーなつなどのコンセプト・コミュニケーション・クリエイティブ開発も手掛ける。ビジネス・ブランド・企業価値を持続的にグロースさせ続けるマーケティングの革新に取り組む。

2つ目は、「少し先の未来を想像する」です。たとえば、これからどういう世の中になり、消費者のマインドがどう変わっていくかを予測し、その仮説に基いて戦略を描くことです。

3つ目は「マーケティング思考」です。当社では「Why(なぜ)」「Who(誰に)」「What(何を)」「How(どのように)」というフレームワークを使って物事を整理しています。

4つ目は「スピード」です。スピードは大きな価値ですし、センスが求められます。考えるスピード、意思決定のスピード、行動するスピードなど、あらゆるスピードを上げていきます。

5つ目は、「インサイトを見つける力」。消費者や市場の深層にある本質を見抜く力が必要です。

そして6つ目は、「感性とデータサイエンスの両方を駆使する力」。データに基づく論理的な判断と、感性を活かしたクリエイティブな視点の両方をバランスよく活用することが求められます。

最後の7つ目が「信じてやりきる力」です。たとえ周りが反対しても、自分が信じたことを最後までやりきる力が結果を出すためには不可欠です。

廣澤 ありがとうございます。スピードが必要ということでしたが、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。

南雲 私もさまざまな人と話す機会がありますが、スピードが遅くて成功している人は、ほとんどいません。スピードは成功する鍵ですし、それは鍛えるものだと思います。

廣澤 スピードは意識さえすれば、自分で鍛えることができるわけですね。1番目に挙げている「戦略的思考」はよく重要だと言われますが、実現するのは難しいと思います。南雲さんが意識していることは、ありますか。
 
花王
DX戦略部門 インタラクティブプラットフォーム統括センター オウンドメディアインプリメント部
廣澤 祐 氏

  2015年に新卒として花王株式会社へ入社し、広告宣伝部(現メディア企画部)にてデジタルマーケティングを3年経験したのち、化粧品ブランドのマーケティングに3年従事。
2021年1月より新設されたDX部門にて社内のデジタル化を推進、2023年より現職。

【 その他の経歴 】
2020年よりデジタルマーケティング研究機構 U35 Project プロジェクトリーダーを務める。2021年に一橋大学大学院 経営管理研究科(MBA)を修了したのち、現在は同大学院の博士後期課程に在籍しイノベーション・マネジメント /MOTの研究に従事。その他、メディア連載やイベント協力などを務める。

南雲 やはり勝てる戦いをしないといけません。そのためには、予算や人的リソースをどのように配分するかが重要です。それは、つまり勝てる領域に集中するために「しないことを決める」ということでもあります。

廣澤 まずは自分たちがもっている資産・アセットを理解するところからはじめる必要があるということですね。

南雲 その通りです。たとえば丸亀製麺の「丸亀うどーなつ」もそうですね。お洒落なドーナツは、すでに世の中にたくさん存在しています。最初は社内でも、お洒落なパッケージにしようという案もありましたが、そこで競争しても当社は勝てないと判断し、お洒落に「しない」ことを選びました。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録