ダイレクトアジェンダ特別企画 #01

「ダイレクトとブランドマーケティングの垣根がなくなっていく?」コメ兵 藤原義昭、ビームス 矢嶋正明、電通デジタル 杉浦友彦【座談会】

 消費者と企業がオンライン上で直接つながる時代。ダイレクトマーケティングの知識や経験は、通販事業者のみならず、メーカーはじめあらゆる業界で必要になっている。自社で商品を企画・製造し、ECサイトやソーシャルで直接、販売するD2C(ダイレクト・トゥー・コンシュマー)も注目を集めている中、1月29日から大分・別府で開催されるダイレクトマーケティングの可能性を探るカンファレンス「ダイレクトアジェンダ」(詳細はこちら)のカウンシルメンバーによる座談会が行われた。
 

全ての施策がダイレクトであり、ブランディング?

藤原 マーケティングにおいて、ダイレクトとブランディングという境目がなくなりつつあると感じています。ダイレクトを重視した企画で顧客体験を損なってしまえば、当然ブランドにも悪影響を与えますし、逆にブランドを高めれば販売数が伸びます。つまり、全ての施策がダイレクトであり、ブランディングでもあると思っています。

 そういう環境下では、自社が「何を大事にするのか」という哲学こそが大事です。CRMを回してメールを送って、その内の数パーセントが購入されていくといった推計の積み重ねだけはなく、自社の哲学に共感してもらい常にお客さまが入り続けるような「大きな枠組みでの顧客獲得」が必要でしょう。
コメ兵 執行役員 マーケティング統括部
藤原義昭 氏

1999年株式会社コメ兵入社。2000年に同事業部のEC立上げに携わり、2010年現在のIT事業部の前身であるWEB事業部を新部門として設立同部長に就任。2014年基幹システムを含む社内システム全般を統括するIT事業部に業務範囲を拡大し、現在WEB事業(EC、買取)ならびに全社WEBマーケティング、全社内システムを統括している。

杉浦 私たちエージェンシーも同じ感覚で、ダイレクトとブランドマーケティングの垣根がなくなりつつあることをヒシヒシと感じています。ダイレクト系の広告主が、刈り取り中心のアプローチに陰りが見え始め、ミドルファネル、アッパーファネルのKPI開発や施策づくりにチャレンジし始める一方、店頭などオフラインチャネルのデジタル化が進み、位置情報や来店データが接続されています。そうすると、主にマスマーケティングに力を入れていた自動車や携帯キャリアといったブランド中心の広告主がダイレクト領域を強化してCPA中心の運用を求めてくるなど、広告施策やKPIにも変化が起きています。

 さらに最近のトレンドを言えば、流通側の購買データと自社のデータを紐づけて、来店前の広告接触から、購買までをデータ連携させて広告の費用対効果を分析するメーカー企業も増えています。その結果、データ・ドリブンなマーケティングが浸透し始めていると思います。   
電通デジタル 執行役員 ストラテジー部門長
杉浦友彦 氏

1998年慶應義塾大学経済学部卒業後、電通入社。2009年コロンビア大ビジネススクール通信情報研究所(CITI)客員研究員。電通フューズ、電通イーマーケティングワンなどの立ち上げに参画し、ウェブコンサルティング、オンライン広告のROIマネジメント業務を担当。主に金融・保険、Eコマース企業の顧客獲得支援や、IT、自動車業界向けのeマーケティング戦略立案・PDCA運用業務に携わる。併せて、マス広告×ウェブ統合分析のメソッド開発や、オンライン広告プランニング最適化、アトリビューション分析など、独自のデジタルマーケティング最適化ツール開発を主導。13年ネクステッジ電通代表取締役社長を経て、会社統合により2016年電通デジタルに参画。

矢嶋 ファッション業界のビジネスモデルも大きく変化しました。かつてはファッション雑誌に取り上げてもらい、消費者がそれを見て服が売れる時代でした。プレス(ファッションブランドのPR担当者)がメディアとリレーションを深めて、記事を書いてもらうことが大切だったのです。つまり、メディアの先に顧客がいたのです。

 そのモデルが崩れつつあり、今はECサイトやソーシャルなどのデジタル上で企業が顧客とつながり、その運営・管理が重要になっています。それは別の言い方をすれば企業が顧客にマンツーマンでブランディングをしている状況でもあります。
ビームス EC統括部 部長
矢嶋正明 氏

2000年ビームス入社。店舗での販売業務等を経て、2005年にEC部門を立ち上げ。責任者としてEC事業全般の拡大に取り組み、2009年に自社ECサイトを開設。以降、店舗と自社ECのサービス共通化を進め、2016年には自社ECを完全直営化。その後、全てのオウンドメディアを統合しメディアコマースサイトを構築。現在は、リアル店舗とのオムニチャネル化を推進中。

藤原 矢嶋さんの考えに同感です。そして、企業内でダイレクトとブランドで担当者が分かれないことも重要だと思います。例えば、Googleの来店計測(Store Visit)で、全てではないものの、どのような施策が来店につながったのかが分かります。その結果、他社事例でもブランド目的だった動画が一番来店につながっていたという結果が出てきたり、すべての施策で同じKPIが追えるようになりました。

杉浦 特に動画では、クリエイティブが与える影響度が大きいですよね。FacebookやInstagramにおけるストーリー広告や、アテンションが取れるアウトストリーム動画など、工夫次第でリーチやエンゲージメントに加えて、獲得もできる動画がつくれます。

藤原 我々が店舗の出店に力を入れるのは、売上はもちろん、リアルで顧客と接点を持つことで商品が売れるためです。接触頻度を見ていると、店舗ファサードが効いていることも分かりますし、やはりダイレクトやブランドなど施策ごとに担当者を分けず、トータルで考えないといけないでしょう。
 
新たなダイレクトマーケティングの可能性を探る
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