ライジングキャンプ2024レポート #04

「反省する人」だから成長できた、元P&G出口昌克氏が徹底する「Yes, And」思考法【ライジングキャンプ 2024レポート】

前回の記事:
「スピードを磨くと、必ず自分の成果に返ってくる」トリドールCMO南雲克明氏が大事にする原則【ライジングキャンプ2024レポート】
 若手マーケターに必要な議論と共創のための学びのキャンパス「ライジングキャンプ2024(主催:ナノベーション)」が2024年7月23日と24日に東京(東京大学 伊藤国際学術センター 伊藤謝恩ホール)で開催された。

 クロージングキーノートでは「理想のマーケターになるために~マインドセットのシフト~」と題して、ソーダストリームで日本オフィスを統括するジャパンカントリーマネージャーの出口昌克氏が登壇。同氏は、炭酸水の飲用習慣が根付いていない日本市場で、消費者の行動変容を促し、市場拡張を実現している。

 P&Gで執行役員マーケティング本部長、日本コカ・コーラでバイスプレジデントと要職を歴任してきたトップマーケターである出口氏が考える「理想のマーケター」とは何か。P&G時代の同僚でもあるFacebook ジャパン マーケティングサイエンス統括 執行役員の中村淳一氏をモデレーターに迎え、出口氏の思考を解き明かしていくセッションをレポートする。
 

クマが襲ってきたら、あなたはどうする?


中村 まず出口さんの自己紹介からお願いします。

出口 P&Gで20年ほどマーケティングを担ってきました。その後、日本コカ・コーラでスポーツドリンクやミネラルウォーターを担当し、3年前に米国・ニューヨーク州に本社を置き、食品や飲料を扱うペプシコの子会社であるソーダストリームという会社に転職しました。
 
ソーダストリーム ジャパンカントリーマネージャー
出口 昌克 氏

 プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンにて執行役員マーケティング本部長、日本コカ・コーラにてバイスプレジデントとして国内外計15のブランド管理経験を持ち、消費財ビジネスにおける中長期戦略立案を得意分野とする。2021年より現職。カントリーマネージャーとしてソーダストリームの日本オフィスを統括する。

中村
 各社では、具体的にどのような仕事をされてきたのでしょうか。

出口 私の場合はブランドマーケティングやカスタマーマーケティング、コーポレートマーケティング、オリンピックへのスポンサーとしてスポーツマーケティングなど、ありとあらゆるマーケティングを担当してきました。

中村 マーケターにもさまざまなタイプの人がいます。出口さんは、ご自身をどのようなタイプだと思っていますか。

出口 「反省する人」ですかね。

中村 それは、どのような人ですか。
 
Facebook Japan マーケティングサイエンス統括 執行役員
中村 淳一 氏

 慶応義塾大学経済学部卒。現在京都芸術大学大学院芸術修士(MFA)在籍中。2002年に消費財メーカー、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)入社、消費者市場戦略本部に所属。柔軟剤ブランド「レノア」の日本立ち上げのコアメンバーや、かみそりブランド「ジレット」、店舗営業チャネルシニアマネージャーを経たのち、13年からシンガポールにてグローバルメディア、アジア地域ビッグデータ担当のアソシエイトディレクターに着任。17年6月にフェイスブック ジャパン(Meta)入社。マーケティングサイエンスノースイーストアジア統括。他JMAインサイトハブコアメンバー等。

出口 私は若い頃から本当に失敗ばっかりしていました。「失敗と苦労の数だけは誰にも負けません」と言えるぐらい、ひどい失敗をしてきたんです。なので、正直にいうと皆さんの前に出てきて、自信を持って「私はこれをやりました」という話はあまりできません。ただ、失敗なら、皆さんに自信を持ってたくさん話せます。

中村 今若手にとって一番聞きたい話かもしれませんね。「理想のマーケター」という切り口で、若手の皆さまに役に立つ話を届けたいと思います。

出口 ここで少しアイスブレイクしましょう。突然ですが、クマが襲ってきました。さぁ、皆さんは次の4つの選択肢の中からどう行動しますか?
 
 

クマが襲ってきたどうする?

① 戦う
② 逃げる
③ 死んだふりをする
④ 食べ物をあげる
 

中村 まずは参加者に聞いてみましょう。どうしますか?

参加者 逃げます。

出口 なるほど。別の方はどうですか?

参加者 私も逃げます。

出口 逃げる人が多いですね。

私自身も、この質問に対する正解を調べてみましたが、結論としては「どの選択肢も正解であり、不正解でもある」と言えます。
 

① 戦う:専門家によると「熊撃退スプレーを使え」と推奨されていますが、皆さん、そんなもの普段から持ち歩いていますか?現実的とは言えませんよね。
② 逃げる:「音を立てるとクマが威嚇してくるので、ゆっくりそろりそろりと逃げましょう」と書かれていましたが、「本当にそれで間に合うのか?」と疑問に思いました。
③ 死んだふりをする:頭を低くして、急所を守る狙いがあるそうです。しかし、実際には素早くその場を離れるほうが良いとされています。
④ 食べ物をあげる:リュックや食べ物を置くことで、クマの注意をそらすという作戦もありますが、やはり即座に逃げるべきだと思います。
 

実は、このクマの話をしたのは、ある問いかけの比喩だったのです。ここで別の質問を考えてみましょう。

嫌な上司がオフィスで、あなたに「目標をあと10%上げられるか?」と言いました。どうしますか。もし、あなたが急成長中の企業に所属しているのであれば、5%や10%は誤差だと思うので、300%や500%に置き換えて考えてください。
  

中村 これも参加者の皆さんに聞いてみましょう。どうしますか?

参加者 死んだふりをする。

出口 いいですね(笑)。次の人はどうですか?

参加者 食べ物をあげる。

出口 なるほど。では、この話をブリッジに、次の4つのテーマを進めていきます。

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