ライジングキャンプ2024レポート #04

「反省する人」だから成長できた、元P&G出口昌克氏が徹底する「Yes, And」思考法【ライジングキャンプ 2024レポート】

 

「Yes, And」の思考をクセつける


出口 ひとつのテーマは、先ほどの質問のように困難な課題に面した時や、高い目標を掲げられた時に対する「理想のマーケター」と「理想じゃないマーケター」の思考の違いについてです。
  

中村 まずは困難な課題に面した時というのは、先ほどのクマの例ですね。「バーを下げにいく、逃げる」は理想じゃないマーケター。一方で「まかせてください、なんとかします」は理想のマーケターですね。これはどういう意味ですか。

出口 何か頼まれたときに、最初から「できません」と言うのではなく、「まかせてください、なんとかします」と言えたら、かっこいいですよね。それを言えたら、その人に仕事が集まるんですよ。

中村 たしかに、仕事を任せる上で安心感はとても大事ですよね。本当は自信がなかったとしても、「なんとかします」と自信をもって言ってくれる人に仕事を任せると思います。

一方で、理想じゃないマーケターの思考として「バーを下げにいく、逃げる」もありますが、このバーを下げにいくのは、期待値のコントロールで必ずしも悪くないと思いました。その辺りは、どのように考えていますか。

出口 それは順番が大切です。できない約束をして欲しい訳ではないです。上方修正した目標に対して、その場しのぎで「まかせてください、なんとかします」と言っておいて、後で失敗して会社に損をさせてしまったら元も子もありません。
  

出口 自分はP&G時代、上司や先輩から何か頼まれたとき「はい、おっしゃることは分かりました。でも無理です…」や「いや、それは難しいです…」と答えてしまっていました。

P&Gは会話のほとんどが英語だったので、「Yes, But」が口癖になり、上司からは「今後は『Yes, But』を禁止する」と言われたこともあります。

そして、上司から「今後は、Yes, Andしか言ってはいけない。まずは本当にできないのか、全力で前向きに検討し、本当にできないのなら、そのときは教えてくれ。もしかしたら解決策を思いつくかもしれないのに、出口はいつも『やれない理由』ばかりしか言ってこないから、面白くない」と告げられました。

そこから少しずつ「Yes, And」の思考を意識して、その上で難しい場合は上司や先輩に対して相談を持ちかけるようにしました。最初に受け入れて初めてバーを下げることができるんです。最初からバーを下げに行ってしまうと「やる気がないでしょ?」や「努力もしていないじゃないか」という話になってしまいます。

中村 確かにそうですね。上司からハードルの高い依頼がきたときに、最初から「無理です」と言うのではなく、「できますよ、ただし予算を2倍にしてください」と言うだけで、決断が上司側にいきます。もしそこで上司から「では、予算を2倍にしていいよ」と言われたらこっちも得ですよね。「Yes, And」の思考は、「No」と言う代わりに、進め方の条件を相談するということですよね。
  

出口 そうですね。でも、注意してください。私の場合は、「Yes, And」の思考ができるようになったのですが、それを家庭にも持ち込んでしまい、妻に「何かをやって」と言われたら「いいよ、その代わり…」と言ってしまうんですよ。そしたら今度は妻から「その代わり禁止!」と言われました(笑)。

中村 家庭では、注意が必要ですね(笑)。

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