B2Bアジェンダ2024レポート #03

ヤンマー、中外製薬、横河電機が実践する、B2Bビジネスのためのブランド戦略の裏側【B2Bアジェンダ2024レポート】

前回の記事:
進化するB2Bマーケターの役割、データと肌感の融合でビジネスインパクトを最大化する【B2Bアジェンダ2024レポート】
 国内最大級のB2B特化型マーケティングカンファレンス「B2Bアジェンダ2024 (主催:ナノベーション)」が 9月12日、13日に鹿児島(鹿児島センテラス天文館)で開催された。

 キーノートでは「ビジネスに直結するBtoB企業のブランド戦略と成果の裏側」と題して、ヤンマーホールディングス ブランド部コミュニケーション部 部長の三田村有香氏、中外製薬 広報IR部長の宮田香絵氏、横河電機 執行役常務 マーケテイング本部本部長 CMO 博士(技術経営)の阿部剛士氏がスピーカーとして登壇した。

 BtoB企業としてブランド戦略をどのように構築し、ビジネス成長に結びつけているのか。ブランドの強化がいかにして売上や利益、顧客獲得に直結しているのか。ブランド戦略の裏側を、JTB 執行役員ブランド・マーケティング・広報担当 兼 CMOの風口悦子氏がモデレーターとして深堀したセッションをレポートする。
 

「共感」をテーマに仲間をつくるヤンマーホールディングス


風口 このセッションではBtoBビジネスにおけるブランド戦略において、マーケターがどのように企業成長を支えていくのか、各社の取り組みをお聞きしたいと思います。

ヤンマーホールディングスさんはブランドを浸透させていくにあたって重視したのが共感をつくることですよね。

三田村 はい、当社では2022年からブランディング戦略を大きく刷新し、社員も社外も、日本も国外も、顧客も企業も生活者さんも、すべてひとつのステークホルダーとして捉えて巻き込みながら一緒にブランドをつくっていくことを目指しています。

トップダウンではなく我々がしようとしていることに共感していただいて、その結果として仲間が増えていくことが大切だと考えています。
 
ヤンマーホールディングス ブランド部コミュニケーション部 部長
三田村 有香 氏

  P&Gマーケティング本部にてSK-IIグローバルブランドマネージャーや生理用品ウィスパー(日韓)ブランドマネージャー等を担当。その後不登校生支援に注力する通信制高校での広報・マーケティング、江崎グリコ(株)広告部、コーポレートコミュニケーション部を経て現職。国家資格キャリアコンサルタント

というのも、過去にテレビで放映していた「ヤン坊マー坊天気予報」が終了して10年が経ち、特に若年層での認知度が大幅に低下しているのが大きな課題だったのです。

お恥ずかしい話ですが、今は20代の学生では認知度が50%程度しかないため、これを何とか改善しなくてはいけないと考えています。そのため当社のブランディングのテーマとして、若い世代と一方的な関係ではなく、一緒にワクワクしながらつくり上げ、親しみやすくエンターテインメント性を持って取り組んでいます。

風口 最近、ヤン坊マー坊のリニューアルをされましたね。

三田村 そうなんです。2024年1月に企業マスコットキャラクター「ヤン坊マー坊」の新デザインを発表しました。これも思い切った刷新ですが、「インクルーシブ」をテーマに海外も巻き込みながらグローバルキャラクターとしてリニューアルすることを目指しました。また、投票によって新しいヤン坊マー坊を決定したという流れがあります。
  
9代目となる企業マスコットキャラクター「ヤン坊マー坊」の新デザインは、投票総数7万6568票のうち、6割を超える4万9628票を獲得した。赤色と青色のイメージカラーはそのままに髪型などを一新し、近未来的なイメージを打ち出した。

風口 この結果は、予想通りだったのですか。

三田村 結果的に社内でも一番人気だったデザインに決まったのですが、ここまで差がつくとは思っていませんでした。

風口 自分が選んだという気持ちの醸成が共感につながるので、あえて社員の投票が多かったデザインを選んだのでしょうか。

三田村 いえ、社員も一般投票に参加するという形式で行いました。テレビでの露出も多かったこともあり、今回のリニューアルはかなり注目されました。

風口 リニューアル後の反応はいかがでしたか。

三田村 いろいろな意見がありましたが、グローバルに羽ばたくキャラクターとして受けいれていただきたいという思いがあります。並行してイベントも実施し、小さなお子さまにもたくさんお越し頂いて、楽しい思い出のひとつとしてヤン坊マー坊が貢献できたのではないかと思っています。

風口 共感をつくっていく取り組みですね。グローバルに対する取り組みはいかがですか。
 
JTB 執行役員ブランド・マーケティング・広報担当 兼 CMO
風口 悦子 氏

 2023年9月より株式会社JTBに入社、ブランディング・マーケティング担当執行役員、チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)に着任し、ツーリズム事業に加えてB2B領域のマーケティング強化やグローバルブランドの強化を推進する。前職の日本IBM株式会社では、執行役員チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)、パフォーマンス・マーケティング・ディレクター、クラウド・AI担当プロダクト・マーケティング・ディレクターなどマーケティングの要職を歴任。システムズ・エンジニアや営業職の経歴も持つ。

三田村 ヤン坊マー坊リニューアルの大きな目的がグローバルで使えるキャラクターにしていくことでしたので、オランダのジャパンフェスティバルやバルセロナで行われた国際ヨットレースAmerica’s Cupのイベントブースでも展示しました。

やはり海外では日本のアニメがすごく人気なこともあり、ヤン坊マー坊も大好評でしたので、今後もっとグローバルに飛躍できる可能性があるのではないかと思っています。さらに、当社がプロデュースを手がけるオリジナルの商業アニメ「未ル わたしのみらい」が来春公開予定です。

風口 ここでアニメを選んだのは、日本文化を象徴するものだからでしょうか。

三田村 その通りです。日本文化を象徴するアニメというアセットを通してグローバルブランディングに取り組めれば、と考えています。『機動戦士ガンダム』などのヒット作品を手掛けられた植田益朗さんに総合プロデューサーをお願いし、ヤンマーホールディングスとしての世界観や価値観を表現していきます。

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