Rising Academy powered by ノバセル ~若手マーケターの登竜門~ #08
花王 廣澤祐氏の強さとは? 愚直なインプットとアウトプットで呼び込む「計画的偶発性」
若手マーケター育成を目指すアクセラレータープログラム「Rinsing Academy powered by ノバセル (以下、ライジングアカデミー)」。現役で活躍するトップマーケターが講師を務める本プログラムで、ずば抜けて若い講師がいる。マーケティング戦略の講義を担う花王の廣澤祐氏だ。
2015年に新卒で花王に入社した廣澤氏は31歳。受講生とほぼ同年代である廣澤氏は20代でMBAを修了し、マーケティング戦略に関してベテランマーケターも認める圧倒的な知識量と、さまざまなメディアやイベントで見せてきた抜群のコミュニケーション力・発信力を持つ。花王ではビジネスシステムの刷新からデジタル関連の人材教育に携わり、数千人の花王社員が受講する毎月のオンラインDX勉強会では司会進行を任されるなど、花王のデジタル戦略推進において不可欠の存在として活躍している。
なぜ廣澤氏は若くして成果を出し、これほどの存在感を放っているのか。Agenda noteでは改めて廣澤氏にインタビューを実施し、その「強さ」の秘密と実像に迫った。
2015年に新卒で花王に入社した廣澤氏は31歳。受講生とほぼ同年代である廣澤氏は20代でMBAを修了し、マーケティング戦略に関してベテランマーケターも認める圧倒的な知識量と、さまざまなメディアやイベントで見せてきた抜群のコミュニケーション力・発信力を持つ。花王ではビジネスシステムの刷新からデジタル関連の人材教育に携わり、数千人の花王社員が受講する毎月のオンラインDX勉強会では司会進行を任されるなど、花王のデジタル戦略推進において不可欠の存在として活躍している。
なぜ廣澤氏は若くして成果を出し、これほどの存在感を放っているのか。Agenda noteでは改めて廣澤氏にインタビューを実施し、その「強さ」の秘密と実像に迫った。
初動の英才教育
廣澤氏は何がそんなに凄いのか?
第一の答えは「インプット力」だろう。「ライジングアジェンダ」などのマーケティングカンファレンスで、多士済々なトップマーケターから希少な情報を引き出し、オーディエンスのニーズに合わせて巧みに表現する「アウトプット力」は、それ以上に膨大なインプットによって培われている。廣澤氏はその経緯を、2015年の花王入社時にさかのぼり、次のように語る。
「入社後、デジタルマーケティングセンター(当時)に初期配属されました。大学では情報コミュニケーションを学んでいたとはいえ、デジタルやテクノロジーについて専門性があったわけではなく、たまたまの配属です。
当時の上司が、花王のデジタルマーケティングを創始・牽引した石井龍夫さん(定年退職、現トレジャーデータ Executive Fellowなど)、そして現在もメディア戦略を担う板橋万里子さん(現 グローバルコンシューマーケア部門 マーケティングイノベーションセンター メディア企画開発部 メディア企画開発部長)でした。石井さんはビオレなど主要ブランドのブランドマネージャーなどを歴任した花王プロパー。板橋さんは広告制作会社や大手外食チェーン企業の宣伝部を経て花王に入社された方です。この2人が上司だったことに大きな影響を受けました」
廣澤 祐 氏
花王 デジタル戦略部門 デジタル戦略企画センター
戦略企画部
2015年に新卒として花王へ入社し、広告宣伝部(現メディア企画部)にてデジタルマーケティングを3年経験したのち、化粧品ブランドのマーケティングに3年従事。2021年1月より新設されたDX部門にて社内のデジタル化を推進、2025年1月より現職。
【その他の経歴】
2020年より公益社団法人日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構 U35 Project プロジェクトリーダーを務める。2021年に一橋大学大学院 経営管理研究科(MBA)を修了したのち、現在は同大学院の博士後期課程に在籍しイノベーション・マネジメント / MOTの研究に従事。その他、メディア連載やイベント協力などを務める。
花王 デジタル戦略部門 デジタル戦略企画センター
戦略企画部
2015年に新卒として花王へ入社し、広告宣伝部(現メディア企画部)にてデジタルマーケティングを3年経験したのち、化粧品ブランドのマーケティングに3年従事。2021年1月より新設されたDX部門にて社内のデジタル化を推進、2025年1月より現職。
【その他の経歴】
2020年より公益社団法人日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構 U35 Project プロジェクトリーダーを務める。2021年に一橋大学大学院 経営管理研究科(MBA)を修了したのち、現在は同大学院の博士後期課程に在籍しイノベーション・マネジメント / MOTの研究に従事。その他、メディア連載やイベント協力などを務める。
石井氏と板橋氏をはじめとして、異なるキャリアを持つ人々で混成された部署だったというデジタルマーケティングセンター。廣澤氏はその「新卒第一号」だった。
「デジタルマーケティングセンターには花王が積み上げたメソッドだけでなく、外部からも情報や人材を集めて、社内でも業界でも先進的な取り組みを進める使命がありました。石井さんや板橋さんも、外部に花王の取り組みや強みを発信する機会が多かったのです。そのため2人は、私にも『外に目を向けなさい』と指導しました。業務時間内でもどんどんセミナーやイベントを聴講しに行くことを許し、国内はほぼ行き尽くした2年目からは海外にも行かせてくれました」
羨ましいような話だが、もちろん、イベントに行って終わりではない。外部の情報や事例から何を得て、花王に還元できるか。事前にリサーチして目的を設定し、内容を解釈し直して、定例会で報告することを繰り返した。石井氏や板橋氏もその都度、丁寧にフィードバックをしてくれたことで、「成功事例を持ち帰るだけではなく、自社や業務にどう生かせるかというインプットとアウトプットの訓練を積むことができました」と振り返る。
そんな中、廣澤氏自身にも小さな転機が訪れる。100人規模のセミナーに講師として登壇したのだ。入社してわずか半年後のことだった。
「私個人ではなく会社に対する依頼でしたが、上司からやってみないかと言われ『やります』と即答しました。当初はあまり深く考えませんでしたが、いざ外部で話すとなると、花王社員として話していいことと悪いこと、オーディエンスの利益になること、花王の素晴らしさを伝えることなど、バランス感覚が問われました。プレゼン資料は石井さんや板橋さんに念入りにチェックしてもらったり、何度も見ていた2人のプレゼンを参考にさせてもらったりしました」
「今思うと、めちゃくちゃ拙いプレゼンテーションだった」と振り返る最初の登壇は「若いのに弁が立つ」と評判を呼び、「花王の若手マーケター」としてメディアでの取材や執筆、イベント登壇の依頼が増えた。
廣澤氏の世界が企業外に広がった背景には、先進的な上司による「初動の英才教育」があった。しかし、廣澤氏の勉強熱心さに期待以上の手応えを感じ、さらなるチャンスを与えていたであろうことは想像に難くない。