Rising Academy powered by ノバセル ~若手マーケターの登竜門~ #08
花王 廣澤祐氏の強さとは? 愚直なインプットとアウトプットで呼び込む「計画的偶発性」
花王の社史を読み込む
大言壮語しない廣澤氏だが、日本を代表する日用品メーカーのマーケターとして「日本発のイノベーションで人々の生活が豊かになってほしい」という思いがある。脳裏には、母子家庭で日用品すら節約に励んでいた母の姿がある。
廣澤氏がマーケティングに興味を持ったのは、学生時代に大手外資系メーカーのインターンシップとビジネスコンテストに参加したのがきっかけだった。
「このブランドで何億の利益を目指せるか。その数字を担保するためのロジックや具体的なアクションプランは何か。店頭の売り場はどうするか…。細かいところまで考え抜く経験をして、とても勉強になりました。ここまで考えられる仕事って面白いなと思ったのです」
就職活動で花王を選んだのは「真面目」が決め手だった。面接官に「最後に質問はありますか」と問われると、全企業で「御社を一言で表したら何ですか」と返していた廣澤氏。まともに答えてくれる企業も限られる中、花王は全員が「真面目」と答えたという。「そこまで真面目な会社って面白そうだなと(笑)」、入社を決めた。
入社後は社史の『花王120年』を入手し、膨大なページを読み込んだ。明治時代、自ら化学的なノウハウを身に付けて高品質な「花王石鹸」を発売した創業者の長瀬富郎氏や、研究者として革新的商品を開発しながら、流通網の整備など事業改革まで成し遂げた中興の祖の丸田芳郎氏の姿勢に感銘を受けた。
「商売人とか技術者とか関係なく、自分がやりたいことに対してアップデートする姿勢がビジネスパーソンとして素晴らしいと思いますし、長瀬の遺言『天祐ハ常ニ道ヲ正シテ待ツベシ』も好きです」。道徳に則った正道を歩んでいれば幸運を得られるという意味のこの言葉は、企業理念であり、社員の行動指針「花王ウェイ」に繋がっている。
自社とはいえ、年号や固有名詞をスラスラと暗誦する姿に、花王に対する深いリスペクトが滲む。転職の誘いも受けるが、「せっかく仲間になれたので、自分が何かを成し遂げられるまでは花王にいたいです」と語る。