リテールアジェンダ2024レポート #01
ネットスーパーの売上比率が50%を超える日も。三重県の隠れた優良企業 スーパーサンシが取り組む4つの必勝法【リテールアジェンダ2024レポート】
「習慣化」による顧客の囲い込み
村尾 他の企業がスーパーサンシさんのようにネットスーパーを真似しようとしたとき、たとえば「サブスクは社内で通らないよ」みたいな話がありますが、4つの要素は「絶対に外せない」と確信されていますか。
高倉 はい、確信しています。これら4つの施策を同時に実施することがネットスーパー必勝の秘訣です。
3つ目の宅配ロッカーについては、都心のマンションなどでは置き配で代替できる場合もあります。しかし、それ以外の3つの要素を省いてしまうと、競争力が大幅に低下し、事業の黒字化が難しくなります。
特に近年は、4つ目のアプリの進化が非常に重要です。これは実際に私たちが開発したアプリの例ですが、部門別の表示を工夫し、顧客の購買意欲を刺激する仕掛けを取り入れています。スーパーの売り場が派手で購買意欲をかき立てるのと同じように、アプリも「デジタル上の売り場」としてその役割を果たすべきだと考えています。
また、繰り返しになりますが、ネットスーパーの勝ちパターンは「店舗出荷型ネットスーパー」が鉄板です。たとえば、高単価・大商圏・低密度で運営されるセンター型ネットスーパーでは、配送効率が低く、高い収益化は非常に困難です。一方、地元密着型のスーパーが低単価・小商圏・高密度で運営する場合、低コストかつ効率的に事業を展開できます。
高単価なマーケットは生協と大手数社が占めレッドオーシャンとなっていますが、低単価・生鮮品中心・高頻度(週2回程度)の購買層を狙うと、競合が少なくブルーオーシャンとなります。また、生鮮品や惣菜の強化により店舗より3%の粗利アップが見込めます。
さらに、私たちの地元である三重県でのシェアは他社を圧倒していて、これは村尾さんが言われた「習慣化」による顧客の囲い込みができていると思います。たとえば、私たちのネットスーパーのサブスクに1度加入すると、別のネットスーパーのサブスクにダブルで加入することはほぼありません。最初に顧客を囲い込むことが極めて重要です。
ネットの場合は空中戦ですので、立地の壁がありません。そのため地元ネットスーパーの商圏の「制空権」を取れるのは、最初の1社だけです。そこに選ばれることが重要であり、ネットスーパーは先行者が市場を制する総取りモデルだと思います。またスマホの小さな画面の中でも、画面を開いたホーム画面の指定席にアプリを配置してもらうことが習慣的に使ってもらう上で重要となります。
結果として、スーパーサンシでは地元密着型ネットスーパーとしてアプリやサブスクを活用し、顧客の習慣を形成することで競争優位を確立しています。ネットスーパーは、今後リアル店舗を補完する存在から主要な販売チャネルに変化していくと考えています。
村尾 地元密着型のネットスーパーとして「習慣化」につなげることがポイントですね。