リテールアジェンダ2024レポート #02

セブン-イレブン・ジャパンとロート製薬の協業事例に見る、顧客体験価値を向上させるリテールメディアの可能性【リテールアジェンダ2024レポート】

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 国内外のリテールのマーケターとメーカーのマーケター、そしてパートナーをつなぎ、一気通貫のマーケティングを実現するためのカンファレンス「リテールアジェンダ2024(主催:ナノベーション)」が11月11日と12日、東京(大手町三井ホール)で開催された。

 スペシャルセッション「リテーラーとメーカーの協業から生まれるリテールメディアの価値と可能性」と題し、セブン-イレブン・ジャパン マーケティング本部 デジタルサービス部 兼 リテールメディア推進部 総括マネジャーの杉浦克樹氏と、ロート製薬 リテールマーケティング部/部長の角田康之氏がスピーカーとして登壇した。

 近年、注目を集めているリテールメディアは、メーカーとリテーラーの協業により、消費者に新たな価値を提供できる可能性を秘めている。リテールメディアが提供するデータを活用し、どのように新たな価値や収益モデルを築くことができるのか。グーグル リテール業界 インダストリーヘッドの木村直樹氏がモデレーターとして切り込んだリテールメディアの価値と可能性に迫るセッションをレポートする。
 

リテールメディアのあり方は顧客中心のコミュニケーション


木村 Googleとしてもリテールメディアには注目していて、さまざまなリテーラーさんやメーカーさんと一緒に取り組んでいます。しかし、リテールメディアにはまだ最適な解がなく、定義自体もさまざまなのが現状です。

今回はリテーラーとしてセブン-イレブン・ジャパンの杉浦さん、メーカーとしてロート製薬の角田さんの話を伺いながら、リテールメディアの価値や可能性を探っていきたいと思います。
 
グーグル リテール業界 インダストリーヘッド
木村 直樹 氏

 Google 合同会社における流通小売業界に対する広告営業組織の責任者。国内の Google 組織横断のリテールメディア事業、国内市場向けショッピング領域のプロダクト開発についても中心メンバーとして牽引している。Google には 2019 年に入社。SMB 領域における YouTube 広告のアジア太平洋地域の事業企画として、日本市場への広告ソリューションの Go-To-Market 戦略の立案、クリエーターエコシステムの事業開発、広告代理店とのパートナーシッププログラムの遂行などを実施。2021 年より流通小売業界を担当。Google 入社以前は外資系コンサルティングファームにて、日本を代表する消費財・流通小売業界・テレコム業界クライアントに対して、全社戦略策定・実行、セールス・マーケティング領域の改革、DX支援を 10 年弱にわたり推進。クイーンズランド大学 経営学修士。

角田 現在はロート製薬でリテールマーケティング部の部長をしていますが、実はこの部署ができたのは2024年の4月です。それまでは商品開発や広告の業務を行っていました。リテールメディアはまだ勉強中の段階なので、このセッションで皆さんと対話しながら学びを深めたいと思います。

杉浦 私はセブン-イレブン・ジャパンに入社以来、店舗の経営相談や店長などを経験し、お客様に商品を売ることを追求してきました。2021年からセブン-イレブンアプリの責任者を務め、ID POSデータの活用を模索してきました。リテールメディア推進部を立ち上げたのは2022年9月で、データとリテールメディアの接着点の重要性を感じています。

木村 まずはロート製薬さんのリテールマーケティングについてお伺いします。2024年からリテールマーケティング部を立ち上げられたとのことですが、背景や取り組みについて教えてください。

角田 新しい部署を立ち上げたのは、お客様との向き合い方を見直す必要を感じました。ロート製薬はBtoBtoC企業として、エンドユーザーであるお客さまの満足を最大化することを目指しています。それは商品を買っていただく場でこそ、顧客体験価値を最大化できると考えています。
 
ロート製薬 リテールマーケティング部/部長
角田 康之 氏

 早稲田大学教育学部卒業。1996年入社。営業職や国内ヘルスケア事業の販売企画立案に従事したのちに、2007年より商品企画部に配属、Vロート目薬やパンシロン胃腸薬、メンソレータム外用薬など主として医薬品の商品開発を担い、多くの新ブランドを世の中に生み出した。2020年からはマーケティング&コミュニケーション部にてHealth&Beauty事業における多様なブランドのブランディングやコミュニケーション設計に従事。24年4月から現職。

また、コロナを経て、ブランド価値の変化を感じています。機能性だけでなく、お客さまにとっての価値が重要になっていると思います。メーカーが言いたいことを一方的に伝えるだけでは、お客さまに選ばれなくなってきたと感じています。

リテールメディアは、店舗のサイネージやアプリだけでなく、お客様を中心に置いたコミュニケーションが本来のあり方だと思います。今後はリテーラーさんと一緒に、お客様にとってよりハッピーな場面や場所をつくっていきたいと考えています。

木村 リテールメディアの取り組みで難しいと感じていることはありますか。

角田
 それはリテーラーさんと一緒に仕事をするとき、お互いの事情を考慮してプロジェクトを進めることです。自分たちがやりたいことだけでなく、リテーラーさんのメリットになるかどうかを考えなければなりません。
 

リテールメディアを始めてデータの生かし方に気づく


木村 セブン-イレブンさんの取り組みについて教えてください。

杉浦 セブン-イレブンは全国に2万1000店以上あり、1日あたりレジ通過客数で約2000万人のお客様にご来店いただいています。これはメディア化する上でも、すごく大きな視点です。また、アプリのID POSデータも重視しています。
 
セブン-イレブン・ジャパン マーケティング本部 デジタルサービス部 兼 リテールメディア推進部 総括マネジャー
杉浦 克樹 氏

 セブン-イレブン・ジャパン入社後、長野・山梨エリアと東京西部エリアで1000店規模のゾーン責任者を務める。2018年セブン&アイ・ホールディングスで新規事業会社を立ち上げ、2021年セブン-イレブン・ジャパン デジタル販売促進 総括マネジャーとしてセブン-イレブンアプリの責任者を担い、2022年リテールメディア推進部 の責任者としてリテールメディア事業を立ち上げ。2024年よりデジタルサービス部の総括マネジャーも兼任し、デジタル領域での革新を推進。

以前は商品軸で物事を見る癖が抜けず、アプリを通じて入ってくるID POSデータの活用も進んでいませんでした。しかし、リテールメディアを推進し始めて、メーカーの皆さんにデータ分析を提示する機会が増え、私たちは非常に購買データに恵まれているんだと感じています。

木村 杉浦さんとリテールメディアの議論を始めた当初は、ID POSデータの魅力について懐疑的でしたね。

杉浦 そうでしたね。リテールメディアを始めてから、データの生かし方に気づかされましたね。

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