リテールアジェンダ2024レポート #02
セブン-イレブン・ジャパンとロート製薬の協業事例に見る、顧客体験価値を向上させるリテールメディアの可能性【リテールアジェンダ2024レポート】
セブン-イレブンとロート製薬が共同開発した事例
木村 ここからはセブン-イレブンさんとロート製薬さんで共同開発した商品の事例をもとに、データ活用のポイントを紹介します。
角田 今回、題材にする事例はセブン-イレブンでも商品が展開されている「Cycle.me」というブランドのパウチゼリーです。Cycle.meは、「なにをどれだけとるべきか」という今までの栄養学に、「いつ」という新しい視点を取り入れた「時間栄養学」に基づいた商品を展開しています。午後の時間に目の疲れを感じたときに、息抜きや小腹を満たすことも兼ねながら目の疲れも軽減できるような商品をセブン-イレブンさんなどと一緒に開発しました。
木村 商品開発の当初のターゲット層はどこですか。
角田 当初は20代~40代の女性を想定していました。
木村 このCycle.meという商品自体がそもそも非常にユニークで、特に1日の購買頻度を向上させるという戦略が面白い取り組みだなと感じました。また、パウチゼリーという商品の購入タイミングをイメージして、具体的に提案していく試みも非常に面白く注目していました。
杉浦 今はリテールメディアとメーカーさんとの対話の形が大きく変化しています。以前は単純な広告出稿の金額交渉や、アプリやサイネージといったメディアとして選択するときの議論が中心でした。しかし、現在ではデータを活用した深い分析が可能になり、より戦略的な協業が実現できていると感じます。
また、私たちリテーラーとしてのデータは、広告配信だけに留まらない価値があることもわかってきました。たとえば、これまでよりも詳細なペルソナの抽出や、購買パターンの分析を通じた商品戦略の精緻化などに活用しています。このような深いレベルでのデータ活用に関する議論が、メーカーさんとの間で増えてきています。
ロート製薬さんと共同で開発した商品のデータを見ると、当初のターゲット層である20代から40代の女性の中でも、特に30代から40代の女性の利用率が高くというデータが出ました。また、意外にも30代男性の利用率も突出していました。この男性層の高い利用率は意図された結果なのでしょうか。
角田 いえ、男性の購買は意外な発見でした。

杉浦 そうですよね。居住エリアの分析でも興味深い傾向が見られました。北から南まで地域別の販売構成比を見ると、Cycle.meの商品は他のパウチゼリーの商品と比較して、関東で49.3%と最も高い結果になりました。また、それ以南の中部、関西、九州と西に向かうほど構成比が低くなっていることも分かりましたね。
このような地域特性は、販売エリアの拡大を検討する上で重要な指標となります。そして最も注目すべき発見は、購買時間帯と曜日のパターンです。
通常のパウチゼリーでは、平日は仕事前の朝食代わりとして、週末は部活前の学生などによって主に朝の6時から8時に購入されるという傾向を示しています。一方、Cycle.meでは他の商品では見られない週初めの月曜日への顕著な集中と、平日の昼以降から夜遅くなるほど販売数が増加していくという独特な時間帯の特性が確認されて、面白く見ていました。
角田 Cycle.meではゼロやフラットな状態からさらにプラスのポジティブな方向へと向上させるという新しい価値を消費者に提供できているのかもしれません。すると、地域特性や購買時間帯などのさまざまなデータが、今後の商品開発にいろいろとヒントになるなと感じています。