リテールアジェンダ2024レポート #02

セブン-イレブン・ジャパンとロート製薬の協業事例に見る、顧客体験価値を向上させるリテールメディアの可能性【リテールアジェンダ2024レポート】

 

リテールメディアは新しい顧客体験を創出するチャンスがある


木村 その場合にはクリエイティブも少し変わってきますよね。

杉浦 Cycle.meの販促においては、サイネージがある店舗では時間帯に応じてクリエイティブを変えて広告配信を行いました。このような時間帯別のコミュニケーション戦略は、リテールならではの強みを活かした取り組みです。

私たちは気温の急激な変化に合わせて中華まんやおでんの仕込み、運動会前の商品準備、雨予報時の傘の在庫確保など、365日を1日単位ではなく、1時間単位で分析しています。こうした特徴的なデータや視点を提供するのは、大きな意義や意味があると思いますし、元来得意としていることです。

このようなデータをメーカーさんと共有し、一緒に確認できるようになることで、私たちのようなリテールメディアをはじめ、世の中にあるさまざまなメディアや販売手法において新たな工夫ができ、その結果としてリテールメディアの役割や価値がさらに高まると感じています。特に、パネルデータでいう認知や関心から購買に近い領域を担うリテールメディアの強みは、大きな意義を持つと思います。

木村 それはセブン-イレブンさんだからこそのデータの価値もあると思います。全国に店舗があり、客層も多様なため、曜日や時間帯別の傾向を細かく把握できますよね。

角田 本当にそうですね。規模が大きいからこそのデータだと思います。Cycle.meのデータでは月曜日の購買が突出していますが、それは購買機会が月曜日に限定されているということではありません。他の曜日でも想定通りの遅い時間の購買が多い傾向もあり、きちんとデータを見ていくと木曜日や金曜日にもさらにチャンスがあると思います。

さらなるチャンスがあるところで、どのような新しいコミュニケーション戦略を構築するかというテーマは、とてもわくわくします。消費者に「意識していなかったけれど、確かにそうだ」と新たな気づきを提供できれば、よりハッピーな体験を届けられます。それは私たちにとっても大きな喜びです。

リテールメディアには、このような新しい顧客体験を創出するチャンスがあると、データ分析を通じて強く実感しています。

杉浦 リテールの立場からすると、お客さまに支持される商品であればあるほどありがたいので、そうした商品を一緒につくりあげる意義は大きいと感じています。こういったデータを活用いただき、より適切なターゲットに、より良い商品を楽しく販売できるようになるといいと思います。

米国のセブン-イレブンでは、メーカー、リテーラー、データ分析担当者が同じテーブルで同じデータを見ながら、商品開発や販売戦略について議論しています。日本でも同じような姿を目指したいですね。

角田 そうですね。私も個人的に、お客さまの幸せを中心に考えるべきだと思っています。そのためデータやメディアをきっかけに、メーカーやリテーラーが共創し、同じ視点で物事を考えられることが非常に重要だと感じています。

木村 リテールメディア産業全体がより盛り上がるよう、私たちも何かお手伝いできればと思います。杉浦さん、角田さん、本日は貴重なお話ありがとうございました。
  
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