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SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA レポート #01

元レッドブル グローバルブランドディレクターが語る「レッドブルが日本市場で成功した理由と、ソーシャルイノベーション」

 エクストリームスポーツをはじめとするスポーツシーンやカルチャーシーンに大きな影響を与え、若い世代を魅了し続けるグローバルブランド「レッドブル」。同ブランドが世界の市場で、また後発となった日本市場で成功を収めてきた要因は、マーケティングにあったのか、それともイノベーションにあったのか——。

 オーストリア本社と日本支社でそれぞれレッドブルのマーケティングに携わった経験を持つラルカ・シミック氏、長田新子氏の対話を通じて、イノベーションとは何か、そしてその成功の秘訣とは何かを紐解いた。
 
Social Innovation Strategist 
Raluca Simiuc(ラルカ・シミック)
BATとMARSといった消費財大手のブランドマネジャーを務め、2006年レッドブル入社。2011年までインターナショナルブランドマネージャーとして従事し、製品、広告など含めたグローバルレベルのブランドマネジメントを担当。2012年からブラジル、南アフリカ、インド、日本やヨーロッパをはじめ、世界中の草の根レベルのソーシャル関連プロジェクトを担当し、それ以来グローバルなプロジェクトであるRed Bull Social Innovationプロジェクトを構想し主導した。2018年にSocial Innovation Strategistとして独立し、ソーシャルインパクトなプロジェクトの実現に向けてマーケティングの力やパートナーシップを引き起こし、より良い将来の鍵となる新たな世代の教育や発展に貢献を目指している。
 
一般社団法人渋谷未来デザイン/事務局次長 
長田新子(おさだ・しんこ) 
AT&T、ノキアにて情報通信及び企業システム・サービスの営業、マーケティング及び広報責任者を経て、2007年にレッドブル・ジャパン入社。最初の3年間をコミュニケーション統括、2010年から7年半をマーケティング本部長として、日本におけるエナジードリンクのカテゴリー確立及びレッドブルブランドと製品を日本市場で浸透させるべく従事し、9月末にて退社し独立。趣味はスポーツ観戦・音楽ライブ鑑賞、ゴルフ、海など。
 

ソーシャルイノベーションの要は「ストーリーを伝える」こと

シミック (いくつかの写真を見せながら)この街をご存知の方はいるでしょうか?——そう、これはオーストリア・ザルツブルクの街です。人口15万人ほどで、ヨーロッパではよく見られる小さな街のひとつですが、かの有名な音楽家・モーツァルトを全面に打ち出すことでブランディングに成功し、世界的に知られる街となりました。ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台としても有名ですね。

 全世界164カ国に展開するレッドブルですが、ザルツブルクから世界へと羽ばたいていったブランドであることをご存知の方は、意外と少ないのではないでしょうか。私はそのレッドブルで12年間にわたってグローバルマーケティングを担い、直近6年間はソーシャルイノベーションに関わる仕事に携わってきました。ソーシャルイノベーションを軸に、オーストリアにとどまらず、世界各国へと活躍の場を広げることができています。

長田 レッドブルというと、「エクストリームスポーツ」(編集部注:断崖や雪山といった厳しい環境下で行い、危険度や技術を競うスポーツ)へのスポンサードをイメージされがちですが、ほかにも多様な取り組みを行っています。スポーツ、カルチャー、社会起業……切り口はさまざまですが、いずれにせよ、コミュニティの形成や、そこに所属する人々の活躍の場づくりというものを非常に重視している企業ですよね。ラルカ(シミック)、ずばり質問です。本セッションのテーマでもある「ソーシャルイノベーション」とは何でしょうか。

シミック ソーシャルイノベーションはまだ新しい概念で、多様な解釈があります。私自身は、ジェンダー・環境・病気・貧困といった、世界に存在するさまざまな問題を解決するための取り組みであると捉えています。重要なのは、まず「目的」があって、それを達成するための手段としてソーシャルイノベーションがあるということです。

 よく言われるのが、「国や地域によって問題が起こっているコンテクストが異なるので、問題意識を共有することは難しいのでは」ということです。何をもって「問題」とするか。私は、問題の根本は「考え方」——例えば、男性が女性より優れている、貧しい人は怠け者だから貧しい、外国人とはそもそも理解し合えない——にあると思っています。根本原因となっている考え方を変えることで、問題を解決するのがソーシャルイノベーションではないかと考えています。

 フィランソロピー(編集部注:企業による社会貢献活動)やチャリティといった活動とは、似ているようで異なります。これら従来の活動は、アクションはするものの、そのことについて話をして、その活動の背景にある考え方を広めるという視点が欠けていました。ソーシャルイノベーションのポイントは、「ストーリーを伝える」ことにあります。
 
Future Design Shibuya
長田 いまの「ストーリーを伝える」という話にも関連してくるかと思いますが、どうしたらソーシャルイノベーションで世界を、地域社会を、あるいは個人を変えられると思いますか。

シミック 6年にわたってソーシャルイノベーションに携わる中で、物事を変えていくためには、次の2つの取り組み方が重要であると学びました。

 ひとつ目は、小さな“草の根”的活動から、とにかく始めてみること。問題やチャンスの所在を考え、プロジェクトとして活動をスタートし、イノベーションを起こしていく。その過程でメッセージやストーリーを広めることができれば、その時点で十分な成果があがったと言っていいのではないでしょうか。

 2つ目は、語り口を変えること。自分たちの取り組みについてより多くの人たちに理解してもらうため、語り方を工夫することが重要です。

長田 まさに、レッドブルが取り組んできたことですね。大きなイベントにスポンサードしている印象が強いかもしれませんが、実はすべてにおいて小さなことから始めて、どう伝えていくのか、関係者とともにどう一緒につくっていくのかを大切にしています。

シミック 実際にアクションを起こすとして、自分たちの周辺地域で始まったことが、果たして「世界を変える」ところまでつながるだろうかと疑問に思うかもしれません。しかし、小さな取り組みでも、それは今後のお手本になっていきます。それがまさに、レッドブルがやってきたこと。最初は小さくとも、継続することで、徐々に大きなシステムを変えていくことにつながっていきました。最初の段階では、活動の規模より、「ストーリー」「問題意識」が明確であることのほうがずっと重要です。

 企業が目的を持たない人を採用しようと思わないのと同様、消費者も目的がわからない商品、社会的な取り組みを行っていない企業の商品はほしくありません。自社が社会にとって良いことをやっているのだと、広告・コミュニケーションを通じてしっかり発信していくことは、企業にとって非常に重要なことになってきています。
 

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