ネプラス・ユー2025 #08

SOMPOひまわり生命CDOが語る、顧客の健康とLTV向上を実現したデータ活用【ネプラス・ユー2025レポート】

前回の記事:
パナソニック コネクトが全社員1.3万人のAI導入に成功した3つの秘訣【小林製薬 大槻氏によるネプラス・ユー振り返り】
 関西のマーケターを中心に「知識と情報、経験を繋ぎ、共創を生み出すこと」を目的として7月16、17日に大阪市中央公会堂で開催されたマーケティングカンファレンス「ネプラス・ユー2025」(主催:ナノベーション)。

 2日目に行われたセッションでは、SOMPOひまわり生命保険CDOの西川素之氏が登壇。阪急阪神ホールディングスDXプロジェクト推進部の八木一平氏がモデレーターを務め、健康を軸にしたデータの活用、CRM戦略の構築を実践的な事例とともに紹介した。
 

顧客の健康増進に着目する3つの理由


八木:本日は「生活者の心に届く健康マーケティングとは」というテーマで、SOMPOひまわり生命保険の取り組みをお話しいただきます。40兆円もの巨大市場で競争も激しい生命保険業界で、デジタルとデータを活用し、顧客の「健康」を支援することでLTV向上に貢献した事例を西川さんに伺いたいと思います。

西川:SOMPOひまわり生命保険CDOとして、デジタル・データ戦略、DX推進を統括しています。ヘルスケアサービスや新規事業の開発も担当しています。

八木:今回のテーマは「健康」です。阪急阪神も創業時からのスピリットとして、健康的で文化的な暮らしの提供を掲げています。思いを同じくする企業として、本日はよろしくお願いします。まず、SOMPOひまわり生命保険についてご紹介ください。

西川:私たちSOMPOグループは大きく、SOMPO P&Cという損害保険事業と、SOMPOウェルビーイング事業の2つに分類され、SOMPOひまわり生命保険はウェルビーイング事業の中でも国内生命保険事業を担っています。生命保険は契約者に万一のことがあった時に安心をお届けするものですが、我々はその「万一」をさらに減らすことを命題に、ヘルスケアをセットにした保険商品を提供しています。会社規模としては中堅ですが、業界全体のお客さまの増え方と比較すると、成長の伸びが大きいです。
 
SOMPOひまわり生命保険
常務執行役員 チーフ・デジタル・オフィサー インシュアヘルス開発部長 兼 DX推進室長
西川 素之 氏

1995年4月 アイ・エヌ・エイ生命(現SOMPOひまわり生命)入社後、神奈川での営業を経たのちに、2000年から12年間、ダイレクトマーケティング部門でデジタルマーケティングに従事する。その後、企画部門(FD企画、事業企画、CX開発)、静岡での営業を経て、2022年4月より現職。

八木:契約件数は2020年度末から比べると、業界全体では1.03倍のところ、SOMPOひまわり生命は1.19倍に成長していますね。業界の中でどのような特徴を持ち、どのようなポジションを占めていますか。

西川:契約規模は中堅ですが、保険という同質的な競争になりがちな業界で健康分野に特化していることもあり、新規顧客の伸びに関しては現在トップ10に入っています。

八木:ヘルスケアに着目されている理由はなぜでしょうか。
 
阪急阪神ホールディングス DXプロジェクト推進部
八木 一平 氏

大学在学中、自営業(フライヤー・DM等の印刷業、テクノ・ハウス系DJ向けの中古レコード店)、アスキー「日本のホームページ5000」等の制作などを経験。2004年リクルート入社。海外旅行サイトなどのシステム開発、マッシュアップ開発コンテストやラボの立ち上げ業務、リフォーム関連のメディアプロデュース等を担当。2011年大阪ガス入社。B2C・B2B部門にてWEB・CRM・デジタルサービスの企画運営などを担当。2023年4月より阪急阪神ホールディングスに入社しグループ共通IDやデジタルマーケティング等を担当。

西川:理由は3つあります。ひとつ目は、顧客の本質的なニーズです。我々保険会社は、万一のことがあればお客さまに保険金をお支払いします。しかし多くのお客さまにとって、保険金の受け取り以上に「幸せで健康な時間を長く過ごすこと」が重要な価値となっています。このニーズに応えようというのが第一の目的です。

2つ目は、社会課題へのアンサーです。2016年当時、国民医療費は約40兆円でしたが、2030年には60兆円になるとの試算がありました。高齢者の数が最も増えるとされる2040年には80兆円を超えるという試算もあります。保険の受け手でなく支え手を増やすため、お客さまに健康になってもらう必要があったというのが2点目です。

3点目は当社におけるビジネスとして成立することです。生命保険事業には今まで、CRM(顧客関係管理)の考え方があまり浸透していませんでした。生命保険の契約期間は10年や20年を超えることも多く、ひいては一生涯にわたります。加入時にお客さまと接触し、実際に保険金が支払われる何十年後かにまた接触する、この間にはブランクが生じます。このブランクの間にヘルスケアの側面から、お客さまとコンタクトを取り、心地よい体験を重ねていただくことで、アップセルや新規顧客の紹介も見込めます。すなわちLTVの向上により効果が波及し、トップライン(売上)の向上につながるということです。さらに、お客さまが健康になることは将来の保険金の支払いの減少につながるため、ボトムライン(純利益)の改善にもなりますし、サービスの向上などお客さまのメリットにもつながっていきます。以上の理由から私たちはヘルスケアに着目しました。

八木:それが、「インシュアヘルス」の考え方にもつながるのですね。

西川:そうですね。保険会社は通常、万一の際の保障をするだけですが、本質的なニーズに応えていくには、そもそもその万一の事態を回避、減少させるためのヘルスケアを一緒に提供するのが最善だと考えました。保障とヘルスケアをセットにした造語「インシュアヘルス」を提供していくことを決めました。

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