ネプラス・ユー2025 #08
SOMPOひまわり生命CDOが語る、顧客の健康とLTV向上を実現したデータ活用【ネプラス・ユー2025レポート】
「健康」支援で満足アップ、LTV向上へ
八木:ありがとうございます。そんなインシュアヘルスについて、詳しくご紹介いただけますか。
西川:2016年からいろいろなヘルスケアアプリを提供しており、累計で210万人にご利用いただいています。当初は健康情報のキュレーションアプリや、ウォーキングを推奨する歩行アプリの開発から始めました。また、特徴的なもののひとつに、「笑顔をまもる認知症保険」というのがあります。
認知症は一般に完治が難しいとされますが、早期に発見し対処すると、症状が悪化しない、あるいは4人に1人は通常状態に戻れるというような学説があります。そこで、軽度な状態のお客さまに保険金をお支払いして、そのお金で治療に向かっていただく保険をつくりました。
八木:さまざまな形でヘルスケアサービスを提供されていますが、お客さまの健康状態の改善を応援するプログラム「健康☆チャレンジ!」制度が好評だと伺いました。詳しくご説明いただけますか。
西川:「健康☆チャレンジ!」は、30~40代の働き盛りの方をイメージし展開したサービスです。働き盛りですから、万一の際に向けて高額の保障に加入することが必要となります。加入後、たとえばBMIの改善や禁煙などの健康行動に取り組んでいただき、このチャレンジに成功したらお祝い金をお支払いし、かつそれ以降の月々の掛け金が割安になるという制度です。保険の中に、健康状態が改善されると受け取ることのできるインセンティブが入っているのが「健康☆チャレンジ!」制度です。

八木:それはかなり嬉しいですね。
西川:また、運用が順調だと積立金がだんだんと増え、資産が増えていく「変額保険」という商品もあるのですが、同じくBMIの改善や禁煙に成功するなどの当社の定める基準をクリアすると、積立金に加えて健康積立金というものが加わり、それも増えていくという保険も新たにつくりました。
八木:契約者からすると、お祝い金や積立金の増額、割安な保険料というのは非常に嬉しいと思うんですけれども、御社にとっては収入がダウンするわけですよね。それでもビジネスとしては成立しているんでしょうか。
西川:よくご質問いただきます。掛け金を割引することによる売上のダウンや、積立金を増やすことによるコストの増加は確かにありますが、健康になると将来払う保険金が減少します。将来病気になる確率が下がり、支払う保険金も減るので、その分を割引や増額という形でお客さまに還元しています。また、健康になっていただくことはお客さまの満足につながるので、新規のご契約を検討していただける可能性が上がります。総合的に、ビジネスとしてうまくいっているというのが現在の評価です。
八木:インセンティブがあるのは嬉しいものの、自分で日々健康に気を配るのはなかなか難しい気がします。御社では、顧客の健康を支援するための「MYひまわり」アプリを運営されているようですが、それについて詳しくお願いします。
西川:スマホのアプリで毎年の健康診断結果を撮影していただくと、5年以内に罹患する確率が高い疾患を予測し、そしてその疾患に罹患した場合に支払いが想定される医療費を予測します。そうして健康の重大さについて考えていただいたら、じゃあそのリスクを減らすためにこういう行動をしましょうというようにレコメンドし、取り組んでいただいた結果が可視化されます。それだけだとなかなか継続できないので、報酬としてポイントプログラムがセットになっています。これを使って「健康☆チャレンジ!」に取り組んでいただいています。
八木:健康診断の結果を入れるだけでリアルなリスク予測ができ、そこから行動促進につながるとは面白いですね。ただ、御社にとってはポイント付与により費用が発生すると思いますが、これについてはどのようにお考えですか。
西川:アプリによって得られるものにはお客さまの健康行動データがあります。保険を契約いただくとお客さまの属性や加入時の健康状態は初期データとしてわかりますが、それ以降の状態はわかりません。アプリで健診結果を登録いただくと、毎年の健康状態や健診のデータが入ってきます。さらに、健康を目指してどんな行動をしたかという健康行動データも入ってきます。これらが全て揃うことで、次の保険商品やヘルスケアサービスの提案に生かすことができます。そういった意味で、ポイント付与はR&D(研究開発)への投資と位置付けています。
八木:必要な投資だということですね。こういった取り組みを続けられて、どれくらい実績が出ているものでしょうか。
西川:「健康☆チャレンジ!」に成功した方は年々増加しており、累計で2万人を超えました。さらに、成功した方はそうでない方に比べると入院する確率が半減するというデータが出てきました。こういうこともあって、「将来の保険金の削減につながるだろう」という確からしさが手にとってわかるようになってきました。
八木:チャレンジをされた方は、達成後も健康行動や契約を継続されているそうですね。
西川:そうですね。特筆すべきは、「健康☆チャレンジ!」に成功した方の9割以上が、その健康行動を1年後も継続していて、リバウンドしにくくなっています。これに加えて保険のリテンションについても、成功した方とそうでない方とでは、3年間で約3ポイントの差が出てきています。
八木:健康につながる行動へのインセンティブはどのように設定しているのでしょうか。
西川:人が健康になるには3つの要素が必要だと思っています。ひとつ目は健康でいたいという意志。2つ目はその意志から具体的な行動に移ること。3つ目はそれを継続してもらうこと。その中でもひとつ目の意志を持っていただくことが難しいんです。厚生労働省の調査によると、日本人は概して健康に対する関心が高くないことが示されています。健康への意志を持っていただくには、生命保険の場合と同様に、ライフステージが変わる局面を捉えて、健康になるためのニーズを喚起することが重要です。ポイント付与のように、プラスのモチベーションの引き出し方もあれば、叱咤激励などのレコメンドを行い継続を促すやり方もあります。プラスとマイナス両方のインセンティブを掛け合わせたコミュニケーションが、健康への意志をつくる一番の近道だろうと思っています。




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