ネプラス・ユー2025 #08
SOMPOひまわり生命CDOが語る、顧客の健康とLTV向上を実現したデータ活用【ネプラス・ユー2025レポート】
データ活用で顧客体験高め、変革を楽しむ
八木:SOMPOひまわり生命の今後の展開についてお伺いさせてください。
西川:これからデジタルやAIの時代に入っていくにあたり、いかに良質なデータを蓄積できるか、データマネジメントが一丁目一番地だと思っています。データの取得だけではなく、得られたデータをマーケティングとR&Dに活用して顧客体験を高めていくことを目指しています。
また、お客さまと太く長くつながっていくためには、自社のアセットだけでは足りない部分がありますから、外部の企業とエコシステムを作って、そこからデータを蓄積することも必要だろうと感じています。
八木:外部と共に集めていくデータの種類、領域として注目されているものがあれば教えてください。
西川:保険とヘルスケアサービスのデータは、自社である程度取れると思いますが、たとえばお客さまの消費行動データは取れません。だから、たとえばポイント事業者と協力してポイントデータから消費行動データを取得するといったことは必要でしょう。また、行政もPHR(パーソナル・ヘルス・レコード:個人の健康・医療情報をデジタルで一元管理すること)サービスに関してマイナポータルと民間との連携を強めようとしているので、今後、PHRを活用していくことも重要だと思っています。
八木:グループ内での取り組みはいかがですか。
西川:損害保険が祖業なので、お客さまの契約数では損保事業が一番大きいです。たとえば自動車保険の契約情報が変わると、そこから契約者のライフステージが見えてきたりします。グループ内のデータをID単位で統合してビジネスに活用することが現在の課題で、そこをやり切ることが必要だと思っています。
八木:自社にとどまらずグループとして顧客を見るということですね。私も普段取り組んでいますが、苦労しています。マーケティングの高度化についてはいかがですか。
西川:会場のマーケターの皆さんも苦労されていると思いますが、「健康☆チャレンジ!」にしてもアプリにしても、誰にどのタイミングで、どんなメッセージを送れば最も効果的か、組み合わせを高度化したいと考えています。たとえばBMIを改善すると言っても、「一食減らしましょう」と言うか「一駅分多く歩いてみましょう」と言うのでは、全く違います。しっかり出し分けながら、お客さまが実際にどんな行動をとったかデータをいただき、AIの活用も視野に入れながら、次のマーケティングに生かす仕掛けをつくりたいです。
八木:お客さまの行動や状況に合わせ、興味関心が高まった瞬間を捉えて、1to1で情報を発信していくのが本当に大事ですよね。MYひまわりについては今後、どのように発展させますか。
西川:MYひまわりというアプリはお客さまにとって自分の健康が「見える」、頑張るために「つながる」、結果として「変えられる」という3つをコンセプトにしているんですが、たとえば「見える」における5年後の疾病予測にしても、もっと楽しく、考えていただくきっかけになるような見せ方ができないかと模索しています。
また「つながる」も、一人で健康行動を頑張るのはやはり辛いので、家族や仲間とつながるコミュニティ機能を持たせたいです。最後に「変えられる」は、頑張って良かったと思っていただける新たなインセンティブを実装し、この3つがループするアプリに成長させたいと思っています。
八木:最後に、西川さんが注目されている企業や取り組みがあればぜひ教えてください。
西川:現在、日本には生命保険事業会社が43社あり、この中で保険と健康を機能統合して販売し、その総数が200万件にのぼる会社は当社を含めて3社しかありません。ですから、他社の動向については当然、注視しています。
また、中国の平安保険グループにも注目しています。元々「平安グッドドクター」というデジタルアプリからスタートした、ある意味テックジャイアントに近い存在なのですが、損保、投資、金融の全てを持っているコングロマリットです。日本と中国で個人情報の扱いや行政の諸々は違いますが、ここが今後どう動いていくのかには、学ぶところが多くあると思っています。
八木:会場のマーケターの皆さんにメッセージをお願いできますでしょうか。
西川:現役バリバリの皆さんですから僕よりも詳しい方がたくさんいらっしゃると思いますが、自分がやってきてよかったと思うのは、日々変革してきたことです。従来の保険会社は失敗が許されない風土があり、アジャイルで何をどうつくっていくか、文化や発想を変えていくのは簡単ではありませんでした。仕事なので大変ではありますが、お客さまにとって、どのようにすれば自然で心地良い提案をしていけるかを考え、変革することを楽しんでいければいいのではないかと思っています。
八木:変革を楽しみましょうということですね。ありがとうございます。本日は、顧客データとデジタルチャネルを活用して顧客の成功を支援することで、LTVが上がり自社のビジネスも成長するという好事例を伺うことができました。別業種でも応用できるエッセンスが多数あったかと思いますので、ぜひうまく活用いただければと思います。
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