リテールアジェンダ2025レポート #04

平和堂とパルが語る、データ・AI活用が導く「勝てるリテールビジネス」とは【リテールアジェンダ2025レポート】

 

AI活用とスタートアップとの共創


郡司 ではAIの話に移ります。7月に米国のウォルマートに行き、アプリのチャットボットで「ドジャースグッズはありますか?」と日本語で質問してみました。するとまだ英語で返ってくるのですが、見たい商品の詳細や地図を示してくれる。既存機能に生成AIをつけることで顧客体験をより良くしようとしていることが分かります。
 

AI専門部署がある世界の企業(年商500億円以上)2642社へのアンケートでは「期待以上の効果を得た」と回答した企業の割合が、米国51%、英国50%、ドイツ28%、中国24%に対し、日本はわずか13%となっています。(PwCコンサルティング「生成AI活用実態調査」2025年2-3月実施)

私は、日本が出遅れている理由は3つあると考えています。まず1つは、合意形成を重視するあまり意思決定が迅速に行えないこと。次に、失敗への過度な懸念。3つ目に、生成AIを単なる「便利ツール」と捉えて、活用における目標設定がそもそも低いこと。海外企業のように改善を重ねる姿勢が、日本にはまだ不足していることが挙げられます。パルグループは積極的に生成AIを活用されていますが、どのように行っていますか?

堀田 生成AI活用においては、複数のPOC(実証実験)を行っています。スタッフのInstagramのデータを学習した「AIスタッフ」に相談する体験や、自分に近い体型のスタッフがレコメンドされ、選んだ商品の画像を生成AIで合成し、試着しているような体験ができるサービスもあります。これらの開発はすべてスタートアップ企業と協業しているものです。

私はデータやAIを生かす際に、人間のパーソナリティや創意工夫がすごく重要だと思っています。スタッフが発信する際も、たとえば「コンプレックス」と思う部分は個性であり、共感を生む源だと呼びかけています。その共感がデータとなって次のアルゴリズムにつながっていきます。データドリブンで勝ちパターンは分かっても、最後は個人の経験や感性を出したほうが絶対に面白いものが出てくると考えています。

群司 宮領さんはいかがですか。

宮領 堀田さんのお話にもありましたが、AI活用は単なる技術導入ではなく、万能ではありません。課題に対する論理的思考やAI活用を含めた応用力が重要と考えます。たとえば、経営課題を解決するのにAI活用が必要なのであれば、AIで解けるデータ上の問いにすべく新たに必要なデータは何か。AIを用いた新サービスを企画する場合、不足するデータは何か。お客さまがご納得されて、それらのデータを提供していただくためには何が必要か。自社の課題に最適なAI技術の目利きやリサーチ力含め、まだまだ勉強が必要と考えています。
 

群司 2企業ともIT企業やスタートアップ企業と積極的に協業していますが、リテールがこれらの企業と協業するにあたってのポイントはありますか?

堀田 当社は投資ラウンドにおいてかなり初期段階のスタートアップ企業と連携することもあります。答えのない取り組みを行う上で重視するのは、お客さまに喜んでいただくというゴールを一緒に目指す姿勢です。私はスタートアップ企業の自律性を尊重しつつ、相手企業の成長や上場・M&Aへの貢献を意識して関係を築いています。さらに、共同開発した技術やサービスは発信・宣伝することで、相手企業の価値向上にもつなげ、応援したいと考えています。

宮領 実は私は、前職のSBI時代にカード会社を起業したことがあります。その際に、スタートアップの資金繰りと安定した事業運営、エグジットの難しさがよく分かりました。だからこそ、まずは効率的な商談と適正なコスト設定を心がけていました。そして何よりスタートアップ企業の方々にとって最も励みになるのは「名のある企業での成功事例」ではないかと考えます。成功事例をノウハウ含め発信し、同業他社にも興味を持っていただき汎用的にご利用いただける仕組みを整えるなど、知見を共有しながら一緒に成長していく姿勢こそが大切でしょう。

群司 最後にメッセージをいただけますか。

堀田 最近、ChatGPTをはじめとした生成AIの利用が急増したことにより、検索はもちろん、InstagramやXに触れる時間すら減ったといわれます。これはマーケティングにも大きく影響を与えます。私たちもお客さまとの接点をどうつくるかを考え直す時期に来ていると感じます。

宮領 小売業には膨大な顧客の消費購買行動データがあるものの、ケイパビリティの不足等から生かしきれていない企業も多いように感じます。小売業、メーカー、AIベンダーがアライアンスを組み、さまざまな取組みを進めることによって、成功事例やノウハウの共有が実現し、データ・AI活用によるビジネスの伸びしろにつながるのではないかと思っています。

群司 本日のセッションを通じて、「データで物事を考える」ことのイメージをより強く持てた方も多いのではないかと思います。お二方、ありがとうございました。
 
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