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AI時代、アプリ&Webで提供すべき価値を問い直す──博報堂グループが示す、新しい顧客接点のつくり方

 

AIによる同質化を乗り越える「ブランドCXサイクル」


 博報堂 CXクリエイティブ局長の入江謙太氏は、ブランドと生活者の接点が広がる中で、Web・アプリ開発、サービス・プロダクト開発、事業開発といった領域を主軸とする同局を率いる立場から、AI時代の課題と解決策を提示した。
 
博報堂
CXクリエイティブ局長/エグゼクティブクリエイティブディレクター
入江 謙太氏

博報堂CXクリエイティブ局長。エグゼクティブクリエイティブディレクター。テクノロジー、データ、UXUI、アートディレクションなど多様な職種のプロが所属し、生活者発想をベースに顧客体験全体の構想~開発~グロースまでを一気通貫で担うクリエイティブ組織をリード。

 まず問題提起したのは、AIによるマーケティングの自動化・最適化が進む中で生まれている「同質化」や「均質化」という新たな課題だ。ブランドマネージャーとの対話の中で、「AIを使えば使うほど他社と同じ答えにたどり着いてしまう」という声を聞くという。これはHAKUHODO BRIDGEの小田氏の指摘とも一致する。

 「マーケティングやブランディングの本質は、意味ある違いを生み出すことです。しかし、たとえば『忙しい女性のためのヘアケア商品』をAIと一緒に考えようとすると、他社と同じようなアイデアが出てきてしまうジレンマがあります。私が博報堂で働き続けている理由は、いい企業、いいブランド、いいサービスといった、ブランドの想いがこもった生活者から愛されるものを世の中に生み出していきたいと思うからです。AIを活用するのが当たり前になりつつある環境の中で、マーケティングやブランディングにどう取り組んでいくべきかは、よく考えていかなければなりません」(入江氏)

 AIが大量のコンテンツを生成するようになると、情報のカオスの中で本当にいい情報にたどり着きにくくなる。「AI Overview(AIによる概要)」に象徴されるように、企業が発信した情報をAIが要約することによって、企業が本当に伝えたいことが伝わらないという課題も生じてくる。このように顧客と商品の間の絆を結ぶことが難しくなる中で、改めてブランドの重要性が高まっている。

 こうした課題に対して、博報堂は2025年11月、独自のブランドCXをAIを活用して構築する「ブランドCXサイクル」というフレームワークをリリースした。広がる顧客接点に対して、with AIでCXを生み出していくーーCX構築の業務プロセスそのものをアップデートすることを目指すものだ。
 

  中核となるのは「バーチャル生活者」である。博報堂グループの持つ「生活者データ」と、「生活者発想」というフィロソフィーに基づくプロンプト技術を組み合わせて、ペルソナをAIでバーチャルに再現する。さまざまな生活者のペルソナを描き出し、対話型でインサイトや商品の可能性を引き出していくもので、未来の家電・モビリティ・小売店舗サービスなどの未来シナリオ開発や、インサイト発掘など活用シーンは幅広い。

 「例えば、体質の悩みを抱える方のインサイトは、リアルな調査ではなかなか引き出しにくいことがあります。そういう場面にこそ、AIの出番です。バーチャル生活者を活用することで、そのようなケースでも新しいコミュニケーションやサービスを考えやすくなります」(入江氏)
 

「対話型のブランド」を構築し、CX戦略全体を描く


 入江氏は続いて、11月25日にリリースしたAIエージェントを活用したブランディングソリューション「Branded AI Agent」について説明した。同ソリューションは、企業や商品・サービスブランドを「人格」や「生命」として捉え、ブランドらしさを宿したクリエイティブな対話が可能なAIエージェントを構築するものだ。そのAIエージェントが、あらゆる顧客接点において一貫したブランド体験を提供する“対話の場”として機能することで、生活者とブランドとの関係をより深くしていくという。

 このソリューションは、もともとAI時代を見据えた「新しいブランドガイド」をつくるという発想から生まれた。従来のように、パッケージやグラフィックといった佇まいのみでブランドを表現するのではなく、今後は対話を通じてブランドが体現される時代が来ることを想定し、対話型ブランドにも対応できるガイドを目指したという。実際、博報堂がブランド構築を支援する際に、従来型のブランドガイドに加え、ブランドエージェントとして納品するケースも増えてきているという。

 こうした流れを背景に、入江氏は「これからの時代は、ブランドに命を吹き込むことで、新しい展開が生まれていく」と語る。ブランドに命を宿すための要素として、①Aspiration(想い)、②Promise(約束)、③Behavior(行動原理)、④Communication(話し方/口癖/思考の癖)、⑤Knowledge(知識/偏愛)の5つを挙げた。これらを従来とは異なる形でインプットし、ルールとして定義することで、ブランドをAIエージェント化し、新たなブランドのあり方を形にしていけるという。

 さらに入江氏は、ブランディングにとどまらず、業務プロセスそのものにAIを組み込む「エージェントAI共創アプローチ」にも取り組んでいると話した。ソリューションのひとつが「CX AI Studio」だ。同ソリューションでは、バーチャル生活者のインサイトを起点に、アイデア発想やマーケティングを考えるパートナーとして、トップクリエイターやマーケターのAIエージェントを生成。それらと対話しながらコンセプトを磨き上げていく仕組みを提供している。こうしたツールを企業内に導入することで、商品開発の方法論そのものを変革することに挑戦しているという。
 

 「AIを使わない選択肢はありませんが、同質化されるようなブランドをつくりたいとも思いません。ブランドサイドの方々の創造力や発想力を刺激するような形で、いかにAIを使っていけるか。ブランドCXサイクルをさまざまなクライアントさんと一緒に回しながら、ブランドの価値・体験づくりの新しい方法論にトライしているところです」(入江氏)

小田氏と入江氏が示したのは、AI時代における新しい顧客接点のつくり方だ。それは「ヒトとAIに選ばれる『アプリ&Web』を考える」ことと、「AIと共創するCXデザイン」。AIを巡ってビジネス環境が急速に変化していく中で、博報堂グループは、クライアント企業とともに新しい方法論を模索し、実行していく姿勢を示した。
博報堂・HAKUHODO BRIDGEへのお問い合わせはこちら
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