ダイレクトアジェンダ特別企画 #06

デジタルマーケターは、積極的に“領海侵犯”すべき?【中川政七商店 緒方恵、ディノス・セシール 石川森生、DoCLASSE 藤原尚也 座談会】

 消費者と企業がオンライン上で直接つながる時代。ダイレクトマーケティングの知識や経験は、通販事業者のみならずあらゆる業界で必要になっている。自社で商品を企画・製造し、ECサイトやソーシャルで直接、販売するD2C(ダイレクト・トゥー・コンシュマー)も注目を集める中、1月29日から大分・別府で開催されるダイレクトマーケティングの可能性を探るカンファレンス「ダイレクトアジェンダ」(詳細はこちら)のカウンシルメンバーによる座談会が行われた。
 

トップマーケターたちが注目する最新潮流は「D2C」

――通販・EC業界に限らず、いまあらゆる業界でダイレクトマーケティングへの注目が高まっています。ダイレクトマーケティングの最前線にいる皆さんは、いまどんなことに注目していますか。


石川 SNSですかね。近年、D2C(ダイレクト・トゥー・コンシュマー:自社で商品を企画・製造し、ECサイトやソーシャルメディアで直接販売する)への注目が高まっていますが、従来型のダイレクトマーケティングとの違いは「企業発ではない情報が購買行動につながる」という点だと思っています。
石川 森生
ディノス・セシール
CECO
新卒でSBIホールディングス入社。SBIナビ(現・ナビプラス)の立ち上げに参画、営業統括の責務を担う。その後、ファッション通販サイトのマガシークにてマーケティング部門の責任者、製菓製パン向けECサイトcottaを運営するTUKURU代表取締役社長を歴任。イントレプレナーとして常に企業の課題解決に従事。2016年2月、ディノス・セシールでCECO(Chief e-Commerce Officer)に就任。同年7月よりEC本部を組織。既存の枠組みを超える、サスティナブルなECビジネスを構築するというミッションを実践している。


 D2Cにおいては、SNSでバズっているか、ブランドや商品に対する共感の輪が広がっているかが重要なポイント。ディノス・セシールとしてはまだ弱く、これから強化していかなければいけない部分だと思っています。

緒方 中川政七商店は、従来型のダイレクトマーケティングとD2Cのちょうど中間点にいる会社だと思います。「職人が一生懸命つくっている商品である」ことがブランドのコアバリューであり、その価値に対する共感の輪を広げながら市場を広げていくD2C的アプローチも重視しているので。そこでは、お客さまにどんなストーリーをどんなプロセスで理解してもらうかという「階段づくり」がカギになります。
緒方 恵
中川政七商店
取締役 コミュニケーション本部 本部長
東急ハンズにてバイヤー、ビジュアルマーチャンダイザーを経てWEBチームに異動。 ECサイト運用から始まり、デジタルマーケティング・ソーシャルメディア立ち上げ・新規デジタル施策開発などを横断的に担当する何でも屋として、さまざまなWEB/デジタル施策の開発及び運用を担当。 2016年5月末に東急ハンズを退職し、同年8月から中川政七商店にWEB/デジタル領域全てを担当するCDO(Chief Digital Officer)として入社。 2018年3月より取締役 兼 コミュニケーション本部 本部長としてWEB/デジタル領域に加えて店舗・卸事業も担当。


 例えば、ライトユーザーに対して「日本の伝統工芸の現状」をいきなり伝えたところで、“重たく”感じられるだけです。「かわいい雑貨」からスタートして、次に「日本製」であることを理解してもらい、そして「工芸」であることを理解してもらう。さらに、僕らが工芸とどう関わっているか、どう汗をかいているかを伝え、最後に「その根底にあるもの=企業・ブランドのビジョン」を伝えます。ビジョンを理解しているお客さまのLTVは非常に高く、中川政七商店を支える重要な存在です。

石川 それって、定量化できるものなんですか。

緒方 はい。現時点では、お客さまがいまどのステータスなのかは、購入商品や訪問頻度によって分類しています。

 これに加えて、「このコンテンツを読んだ人はこのステータス」と、デジタル上の反応に基づく分析の仕組みをつくろうとしているところです。さらに、店舗で得られる生の声、Webに寄せられる問い合わせ、SNSで拾える声……こうした言葉を一言一句漏らさず収集し、解析していきたいと思っています。





藤原 面白いですね。店舗、Web、SNSとオンライン/オフラインの垣根を超えた顧客理解やコミュニケーションは、僕も重要だと考えています。
藤原 尚也
DoCLASSE
グループCMO 兼 Web事業長
1996年4月カルチュア・コンビニエンス・クラブに入社。TSUTAYA店舗運営、ツタヤオンライン事業、DBマーケティング事業の立上げを経て、2012年化粧品メーカーのガシー・レンカー・ジャパンのデジタルマーケティング責任者として、事業拡大に貢献。その後、マードゥレクス取締役社長に就任。ファンデーションブランド『エクスボーテ』などの化粧品展開をしている同社にて、ブランド再構築や、CRM、店舗流通の全般を管掌し、事業拡大を行う。DoCLASSE(ドゥクラッセ)の事業拡大に向けてCMOとしてマーケティング改革を推進中。

 ファッション通販カタログからスタートした「DoCLASSE」は、近年リアル店舗の展開も推し進めていますが、単純に顧客数が倍増するわけでは当然ありません。カタログ通販を利用していた方が、店舗も訪れているというケースがかなり多い。

 2018年1月にCMO兼Web事業長として就任して以降、顧客体験のシームレス化を仕込み続けています。かつては新聞広告を出稿し、電話で問い合わせを受け、カタログを送付するという「紙」中心の施策で新規顧客を増やしてきましたが、紙でカバーできるメインターゲットが60・70代と上がる中、ターゲットのボリューム層である50代にあらためて焦点を合わせ、新規顧客を獲得しにいくためのD2Cを含めた戦略を構築する必要があるのです。
 
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