B2Bアジェンダ2025レポート #01
オムロンヘルスケアと考えるブランド再構築の要諦とマーケティング組織の貢献【B2Bアジェンダ2025レポート】
カルチャー変革がブランドに
小倉 外部向けのコミュニケーションの統一的なアセットを構築したというお話ですが、いろいろとお話を聞いていると、カルチャーやインターナルブランディングの重要さを認識しながら進めてこられたことが分かります。
富士通 グローバルマーケティング本部 デジタルエクスペリエンス統括部 C&EX部 部長
小倉 遵也 氏
2023年11月に富士通に入社。デジタルエクスペリエンス統括部にてB2B領域のデジタルマーケティングを担当。前職の日産自動車では、2020年に新ブランドキャンペーンを立ち上げ。ブランド戦略、メディア戦略、クリエイティブ開発などマーケティングコミュニケーションのリードから、マーケティングマネージャーまで、マーケティングの主要ポジションを歴任。B2Xの時代に向け、B2CやB2Bという枠を超え、あらゆる接点で一貫した体験提供に取り組む。
小倉 遵也 氏
2023年11月に富士通に入社。デジタルエクスペリエンス統括部にてB2B領域のデジタルマーケティングを担当。前職の日産自動車では、2020年に新ブランドキャンペーンを立ち上げ。ブランド戦略、メディア戦略、クリエイティブ開発などマーケティングコミュニケーションのリードから、マーケティングマネージャーまで、マーケティングの主要ポジションを歴任。B2Xの時代に向け、B2CやB2Bという枠を超え、あらゆる接点で一貫した体験提供に取り組む。
カルチャーの変革は、それ自体がブランドとして機能することがあると思います。たとえば、マイクロソフトのBtoB SaaS系では、CEOが「グロースマインドセット」という共感・学習・挑戦を軸とする文化を導入し、そのことが同社を「競合に攻撃的な企業」から「顧客のパートナーになる企業」へとイメージを転換させ、BtoBブランドとして信頼を獲得した事例があります。また、アウトドアブランドのPatagoniaでは「よい波が来たらサーフィンに行ける」という文化があり、制度の域を超えて「環境と自由を尊重する企業」というブランドを体現しています。私が以前勤務していたトヨタ自動車では「KAIZEN(カイゼン)」という言葉自体がブランドになっている感があります。
こういったインターナルブランディングは、特にBtoBにおいて信頼を獲得するために非常に重要なのではと思います。オムロンヘルスケアではどのように取り組まれていますか。
大川 当社は、従業員の企業理念の実践を支える取り組みとして「知る」「学ぶ」「気づく」「探究する」「共有する」の5つの流れを設けています。「知る」は社内広報と、映像などを使った理念ツールを活用し、グローバルで企業理念の共有を図っています。「学ぶ」は階層別研修、「気づく」ではダイアログや「車座」と呼ばれる社長との対話を行っています。各エリアでの理念実践の成功事例を表彰する「TOGA」というアワードも行っています。他に、2022年からは「TAKIBI」という対話を全ての組織で推奨しており、焚き火型クッションを真ん中に置いて忌憚のないディスカッションを行っています。近い立場の社員だけでなく経営陣を交えること、また部門間でクロスする場合もあり、プライベートな話や本音を話すことで社員の相互理解を深める仕組みを会社として組み込んでいます。
小倉 企業理念などをトップから直接落とし込む機会にもなりそうですね。
大川 そうですね。中途入社した社員も4割以上いるので、フランクに話していると、企業理念やルールについて質問が出ることも多いです。
小倉 エクスターナルだけでなくインターナルのブランディングも、こういった場で徹底して実践されている印象を受けました。
AIを「誠実さの担保」として機能させる
また、本日は「AI時代にブランドはどう変わるのか?」というテーマでもお話を伺いたいと思います。オムロンで取り組んでいることはありますか?
大川 カタログなどは、コンプライアンスやレギュレーションに準じた中で、一部でAIを活用して制作しています。
小倉 現時点では効率化に活用されているのですね。AIの回答は、すごくロジカルでマットな印象がありますよね。しかし人間の発想やクリエイティブには、どうしても非ロジカルなゆらぎが入り込みます。AIを活用してクリエイティブをつくるときに重要なのは、この非ロジカルな部分をどう意図的に取り込んでいくか、どこまで人間が判断して手を加えるかだと思います。その非ロジカルさがあるゆえに、人間にしかできない作業は今後も残っていくのだろうと考えています。
また、ニューヨーク発のスキンケアブランド Isla Beautyのファウンダーが「人々は誇張されたマーケティングにうんざりしきっている。次に来るのは、正直さと誠実さ」と語ったり、「79%の顧客はブランドに対して義務以上の情報開示を求めており、3分の2の顧客は、より透明性の高いブランドに乗り換えると答えている」という分析結果があったりします。こういった潮流に対して、AIは誇張された情報をブーストさせることもできますが、逆に、誠実さの担保として機能する可能性もあると私は考えています。マーケティングは物語や世界観の設計だけではなく、裏付けとなる行動や開示姿勢が問われるようになるでしょう。

小倉 まとめに入りたいと思います。大川さんのお話を伺って考えたのは、ブランドづくりで大事なのは、まず「ブランドの根っこにあるもの」を社内に徹底的に叩き込み、関わるステークホルダー全員としっかりアライメントを取ることだということです。オムロンヘルスケアの取り組みは、そのうえで3P’s(People, Process, Physical Evidence)の要素も含めて設計されている点が、とても巧みで納得感があると感じました。
マーケティングは、CXとEXの両方に関与できる立場です。EXが良くなることでCXがドライブされ、それがやがて一貫したブランド体験へとつながっていきます。特にBtoBのように、お客さまから透明性や信頼を強く求められる領域では、外向けと内向きのコミュニケーションを両輪で回し、それを組織としてリードしていくことが、マーケティングの重要な役割だと考えています。
大川 当社はエリアごとにマーケティング機能まで内包して動くことができるのが特徴ですが、だからこそ経営とのすり合わせが欠かせません。根幹となるSINIC理論や企業倫理を踏まえて「何をやるべきか」を明確にし、徹底的に説明して根気よく決裁を取ることが重要だと感じています。現場に近い視点で自信を持ってアクションを進めることが、最終的に成果につながると考えています。
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