マーケティングアジェンダ東京2025レポート #02
業績好調 カンロ村田哲也社長と考える「AI時代のマーケティングと経営」【マーケティングアジェンダ東京2025レポート】
2026/09/28
日本最高峰のマーケティングカンファレンス「マーケティングアジェンダ東京」(主催:ナノベーション)が2025年11月26~27日、東京都新宿区の新宿住友ホールで開催された。テーマは同年5月に沖縄で開催した「マーケティングアジェンダ2025」に引き続き「AIは市場を創造するのか?」。ブランド企業のトップマーケター250人以上が一堂に会し、AIとの共創が深まる現在と未来におけるマーケティングの役割を多角的に議論した。
初日のキーノートでは「AI時代の経営とマーケティング」と題し、カンロ 代表取締役社長CEOの村田哲也氏が登壇。2023年の社長就任以降、「カンロ飴」「ピュレグミ」といったロングセラーブランドの価値を高めながら直営店やデジタルチャネル、グローバル展開など多様な領域に取り組み、3期連続の増収増益という着実な事業成長を実現している村田氏は、マーケティングをどのように捉えているのか。キンドリルジャパン Vice President, CMOの加藤希尊氏がモデレーターを務め、激しい環境変化にさらされる時代の経営とマーケティングによる価値創造を深掘りしたセッションをレポートする。(肩書き・データは登壇当時のもの)
初日のキーノートでは「AI時代の経営とマーケティング」と題し、カンロ 代表取締役社長CEOの村田哲也氏が登壇。2023年の社長就任以降、「カンロ飴」「ピュレグミ」といったロングセラーブランドの価値を高めながら直営店やデジタルチャネル、グローバル展開など多様な領域に取り組み、3期連続の増収増益という着実な事業成長を実現している村田氏は、マーケティングをどのように捉えているのか。キンドリルジャパン Vice President, CMOの加藤希尊氏がモデレーターを務め、激しい環境変化にさらされる時代の経営とマーケティングによる価値創造を深掘りしたセッションをレポートする。(肩書き・データは登壇当時のもの)
パーパスドリブン経営進めるカンロの「価値創造ゾーン」とは?
加藤 キンドリルジャパンの加藤です。世界約60ヵ国以上でITサービスやITコンサルティングを提供する企業で、私は日本事業のマーケティングを率いています。私自身はこれまでのキャリアの中で、単価数百円から数百億円規模の商材までカバーするマーケティングをリードしてきました。本日は「AI時代の経営とマーケティング」というテーマで、カンロの村田社長にお越しいただいています。
さまざまな市場・環境の変化を踏まえて、3期連続の増収増益を実現されている背景、CEOという立場からマーケティングにどのような役割を期待するか、他部門を含めた連携、そしてAI活用まで幅広くお聞きしたいと思います。
村田 カンロの村田です。当社は山口県光市で創業し、2025年で創業113年目となりました。国内に3工場があり、キャンディ専業メーカーとしては珍しく東証スタンダードに上場している企業です。2022年に策定したパーパスは「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」。これはトップダウンではなく、当時の社長や役員、社員同士でインタビューやグループワークを重ね、カンロが歴史の中で培ってきた強みや企業文化を言語化する中で、導き出した言葉です。2025年に発表した中期経営計画では企業ブランディングの強化を掲げており、カンロという企業ブランドの価値向上に取り組んでいます。その一環でテレビCMを出稿した他、中長期的なブランディング施策にも取り組もうとしているところです。
私自身は30年近く総合商社の食品流通事業に携わったのち、2019年に社外取締役としてカンロの経営に参画しました。2021年に入社し、2023年に社長を拝命しています。「微細は大差」を座右の銘に、小さな努力を積み上げ続けることを心がけています。

カンロ 代表取締役社長CEO
村田 哲也 氏
1992年、慶應義塾大学法学部を卒業後、三菱商事に入社。食品流通事業をはじめ生活流通分野で豊富な経験を積み、2018年に三菱商事生活流通本部食品流通部長に就任。2019年にカンロ社外取締役、2021年に執行役員、2022年に取締役執行役員を経て、2023年1月より代表取締役社長。
村田 哲也 氏
1992年、慶應義塾大学法学部を卒業後、三菱商事に入社。食品流通事業をはじめ生活流通分野で豊富な経験を積み、2018年に三菱商事生活流通本部食品流通部長に就任。2019年にカンロ社外取締役、2021年に執行役員、2022年に取締役執行役員を経て、2023年1月より代表取締役社長。
加藤 ありがとうございます。本題に進む前に、会場の皆さんとひとつ視点を共有したいと思います。2025年夏に刊行されたトーマス・バルタ著『世界のトップマーケターだけが知っている「12の成功法則」』では、顧客ニーズと企業ニーズが重なる領域を「Value Creation Zone(価値創造ゾーン)」と定義しています。
同書では、優れたマーケターほど、この領域で利益創出やコスト削減に貢献しながら、CEOやCOOなど経営層との対話を通じて経営に価値をもたらしているとされています。

本日はこのフレームワークをヒントに4つの質問を用意しています。ひとつ目は村田社長の経営スタンスとマーケティングへの期待、2つ目は顧客ニーズ、つまり消費者価値やライフスタイルの変化をどう理解をしているか。3つ目が企業ニーズ、ブランド資産や新市場の開拓、組織変革について。4つ目はValue Creation Zoneとして、顧客ニーズと企業ニーズをどのように結びつけて最終的な価値に落とし込んでいるか。皆さんにも自社のValue Creation Zoneを思い描きながら、話を聞いていただけたらと思います。
まず、ご自身の経営スタンスとマーケティングへの期待をお伺いします。社長就任以降、社会や市場の変化をどのように読み解いてこられましたか?

キンドリルジャパン Vice President, CMO
加藤 希尊 氏
マーケティングを通じて事業成長とブランディングを推進し、現在は世界60ヵ国以上でミッションクリティカルなエンタープライズ・テクノロジー・サービスを展開するキンドリルジャパンにてVice President兼CMOを務める。20年以上にわたり、WPPグループ、Salesforce、チーターデジタルなどグローバル企業でマーケティングをリード。B2CとB2B双方の知見を活かし、特にSaaSや無形サービスの市場投入から成長戦略の設計、エンタープライズマーケティングやアカウントベースドマーケティングに強みを持つ。著書『はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ』をはじめ、マーケティングと顧客体験に関する知見を広く発信し、実務と理論をつなぐ専門家として活動している。
加藤 希尊 氏
マーケティングを通じて事業成長とブランディングを推進し、現在は世界60ヵ国以上でミッションクリティカルなエンタープライズ・テクノロジー・サービスを展開するキンドリルジャパンにてVice President兼CMOを務める。20年以上にわたり、WPPグループ、Salesforce、チーターデジタルなどグローバル企業でマーケティングをリード。B2CとB2B双方の知見を活かし、特にSaaSや無形サービスの市場投入から成長戦略の設計、エンタープライズマーケティングやアカウントベースドマーケティングに強みを持つ。著書『はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ』をはじめ、マーケティングと顧客体験に関する知見を広く発信し、実務と理論をつなぐ専門家として活動している。
村田 キャンディ市場は、いわゆるハードキャンディと呼ばれる「飴」、「グミ」、タブレットあるいはラムネにあたる「錠菓・清涼菓子」、キャラメルやソフトキャンディなどの「その他」で構成されています。これら国内のキャンディ市場の動向は右肩上がりで伸びてきていた中、コロナ禍で少しダウンし、22年から戻ってきています。2024年は小売販売金額3501億円とコロナ前を超えて伸び、過去最高を記録しました。特にグミのCAGR(年平均成長率)が10.8%と、市場全体を大きく牽引しています。
当社はコロナ禍前にグミを成長エンジンと定めて製造ラインを増やしていた背景があり、環境要因とも合わさった結果、業界に先んじてグミに特化して市場をリードできました。2019年当時はグミが売上の29%、飴が65%だったのが、2024年は48%対50%と、ほぼ半々となっています。キャンディ市場全体では当社のシェアは約12%で1位(※1)ですが、グミ単独で見れば2位(※2)です。市場環境はここ2~3年でさらに激しく変化しているため、当社は今後、いかにグミ事業を拡大して1位のポジションを勝ち取れるか、チャレンジしている状況です。
※1:インテージSRI+ キャンディ市場 2023年・2024年(各年1~6月計)販売金額シェア
※2:インテージSRI+ グミ市場 2023年・2024年(各年1~6月計) 形態(組成)別販売金額シェア
加藤 拡大を続けるキャンディ市場において、主力である飴とグミの売上構成を半々にまで成長させ、さらに現在業界2位のグミ事業を1位へと押し上げていく。そうした成長を実現する上では、商品やマーケティングの戦略だけでなく、それを支える経営そのもののあり方が重要になると思います。こうした目標を、経営としてどのような戦略や方針に落とし込み、さらに現場の具体的なアクションへとつなげているのでしょうか。
村田 経営のスタンスとしては企業パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」を軸にパーパスドリブン経営を推進しています。私は2023年に社長になってから、このパーパスと行動規範、クレド(従業員の基準となる企業の価値観)の話をあらゆる場面で行っています。従業員のパーパス自体への理解や浸透が進んでいることは、スコアからも確認できますが、パーパスを自分事として捉えて行動を合わせていく行動浸透となると、まだまだ足りていないと感じています。
加藤 その旗振りはどの部署が担っているのでしょうか。
村田 マーケティングの中にCX推進部門があり、そこがインナーコミュニケーションの役割を担っています。マーケティングは、社会価値と企業価値、そして顧客価値への貢献を進める、パーパスドリブン経営における推進力です。顧客満足度を上げ、競争力を向上して持続可能な成長につなげ経済価値を生む。そのために当社ではマーケティング戦略・体制の整備に注力しています。
加藤 パーパスドリブン経営においてマーケティングが重要な推進役を担っているのですね。会場の皆さんの会社では、マーケティングが経営の中核的な役割を担っているでしょうか。考えながら聞いていただけたらと思います。
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