CESレポート #02

P&G初出展に感銘。豊作だった「CES2019」から考察するコミュニケーションの近未来【電通 森直樹】

P&Gはコミュニケーションの変革にも言及

 P&GのChief Brand OfficerであるMark Pritchard氏は、自らの活動は全てにディスラプションをもたらしていると語る。

 「テレビ・メディアの成長が終わり、デジタル産業は成長を続けている。Eコマースも、広告ではなくアルゴリズムによって動いていて、消費者と直接小売りに関するメディアネットワークを繋いでいる。そして、テクノロジーは我々がデータ分析をどう操作するかを支配しているのだ。その中で、我々はディスラプションをリードしようとしています」と、テクノロジーの進展に伴う大きなうねりにP&Gがどのように対峙しているのかを解説していた。



 さらに同氏は、「イノベーションによって、我々がやろうとしてきた、無駄の多い膨大なマーケティングから膨大な一対一のブランド設計へと移るという展望を持てるようになっています」とし、同社のコスメブランド「Olay」を例にして解説。従来、Olayは6つの広告を全ての人に届けようとしたが、1対1に変えたのだという。OlayのスキンアドバイザーがOne to Oneで向き合い、最適な商品を届けるというのだ。

 また、DMPについても触れている。Marc氏は「私たちは何十億もの消費者のIDを持っています。そして、それはデータサイエンティストが正確に分析するために使われています」と話す。広告は単に誰かにメッセージを送るだけではなく、体験を向上させることに寄与するというのだ。
 

テクノロジーと向き合う米企業のCMO

 P&G以外の取り組みにも目を向けてみよう。CESでは、C-SPACEというエリアがあり、CMOやCDO、米国メディアやエージェンシーがパネルディスカッションに登壇して、テクノロジーとブランド、コミュニケーションについて課題意識を共有している。




 そこでの話題の中心は、AIや音声対話技術の活用、データとパーソナライズであった。CitiのGlobal Consumer Chief Marketing OfficeであるJennifer Breithaupt氏は、「今まさに、音声に取りつかれています。我々ブランドとしては、音声起動されるいずれのデバイスにも現れて、それがいかに本物であるかということが大切です」と語り、ただ音声デバイスに対応するだけではなく、音声デバイスを通じたユーザー・エクスペリエンスを高め、付加価値を与えることが重要であると語った。

 また、eBayのCMOであるSuzzy Deering氏は、彼らが取り組んだブランドキャペーンに触れ、「我々が見せようとしているのは関連性を持たせることです。単に“より良い小売”になるのではなく、今この瞬間に何かを売ろうとしていて、ユーザが興味を持っている瞬間もしくは興味がある分野にパーソナライズさせることを目指しています」と。ストーリーをリアルタイムで伝えていくためにデジタルプラットフォームを活用していることについて触れた。

 そして、メディア企業であるTunerのEVP Global Communications and Coporate Marketing OfficerであるMolly Battin氏は、テレビの概念について、「我々は、テレビの定義を変えなければなりません。今やテレビはどこにでも存在します。テレビはモバイルなのです。大切なのはコンテンツ。我々は複数のプラットフォームとコンシューマーに、いつどこで彼らがそれを見たいか、またどのように見たいかに応じたコンテンツを作っています。単に30秒の広告を作っているのではなく、周りにコンテキストを作り込んで、エクスペリエンスを作っていかなければならないでしょう」と、メディアのこれからの概念を変えなければならないと主張した。

 メディアについてCitiのJennifer氏は、自らの戦略はデジタルに集中してテレビから離れることではなく、一緒に働くパートナーでありクリエーティブが接近することが重要であると、言及をした。

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