CESレポート #03
人を察知するAIの登場、CESが指し示した「スマート家電」の明るい未来【電通 若園祐作】
米国・ラスベガスで開催される、技術・製品の世界最大のショーケース「CES」。あまりにも規模が巨大で全体を把握することが困難であるため、重点的に見たエリアや来場者の知識によって得られる知見も千差万別です。そんな中、ここ数年視察をしてきた筆者が2019年のCESを振り返り、特に注目するトピックについての一視点をご提供します。前編では暮らしとAI(人工知能)、スマートホームについて取り上げます。CESを理解する上で少しでも助けになりましたら幸いです。
LGが照らし出す、AIによる未来の暮らし
CESにおける毎年一番の注目イベントは、開催前夜のキーノートです。今年そのキーノートを担当したLGは、AIが今後、私たちの暮らしをどのように豊かにしていくのかを語りました。現状でもAmazon AlexaやGoogle Assistantといった音声アシスタントの形をしたAIは世の中に出回っていますが、それらとLGの語るAIとは何が違うのでしょうか。
ひとことで言うと、彼らは「人を察することができるAI」をつくっています。2019年時点で利用できる一般的な音声アシスタントは、「まるで“呪文”のような命令文を正しく唱えると、あらかじめ決まっている動きをしてくれる」だけに過ぎません。
もしご自宅でAmazon EchoやGoogle Homeを使っていれば、それらが私たちの本当の意図を理解してくれず、苦々しい経験をしたことが一度はあると思います。例えば、私たちが「電気を消して」と言ったとき、今から外出するので全ての部屋の電気を消してほしいのか、今いる部屋だけで他の部屋の電気は消してほしくないのか、今の音声アシスタントは判断できません。これは、私たちの意図を察するために必要な情報が“呪文”そのもの以外に、ほぼないことが原因です。
LGは、今後のより良い暮らしとして、AIプラットフォーム「ThinQ」対応の家電やサービスが私たちの生活、習慣や予定を常に見守って察する未来を提示しました。常に私たちを見守ることで、私たちが「何かをしたい」と意思表明したとき、より良い結果のための設定調整やレコメンドが行われます。あるいは、意思表明せずとも必要なことは自動で実行されるようになるでしょう。
LGの発表では、彼らのAIプラットフォームや対応家電を前提として未来を語っていますが、この未来の方向性自体は、独自性があったり目新しさがあったりするものではありません。
むしろ業界全体が共有している進化の道筋であり、LGは業界の代表者としてその具現化がもうすぐであると宣言していると考えるほうが自然でしょう。その未来がどこまで便利で快適なものになるかはLGをはじめとする家電メーカーやその他機器メーカーの腕の見せどころではあります。
ただ少なくとも、いつでもどこでも様々な機械から私たちの一挙一動を把握される未来がやってくることはほぼ間違いないのではないでしょうか。