クリエイティブ

ACC賞 注目部門リニューアルで広げる「広告の可能性」 新旧審査委員長 特別対談【前編】

 あらゆる領域のクリエイティブを対象とした日本最大級のアワード「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS(ACC賞)」。なかでも「ブランデッド・コミュニケーション部門(BC部門)」は、2018年の設置以来、他のどの部門にも当てはまらない「その他」の幅広い作品の受け皿となってきた。

 いわゆる「広告」の形をしていないものを含め、コミュニケーションのためのアイデアや技術が詰まっていればそれは「広告の拡張」であると定義し、プロモーション、アクティベーション、デジタル・ソーシャルなどの領域でブランドの価値を向上させた施策を広く募集している。

 今年BC部門は、広告の可能性をさらに広げていくために、そしてACC賞という広告賞の価値をさらに高めていくために、部門内のカテゴリーのリニューアルを行った。カテゴリー再編に込めた意図・狙いとは? ACC賞がクリエイティブおよびマーケティング領域において果たすべき役割とは? BC部門の前審査委員長・尾上永晃氏と、現審査委員長・栗林和明氏の2人に話を聞いた。
 

ACC賞を通じて「広告」の力を証明したい

  
左:CHOCOLATE チーフコンテンツオフィサー 栗林和明氏(新審査委員長)、右:電通 zero プランナー・クリエイティブディレクター 尾上永晃氏(前審査委員長)

ー 2023-2024年の2年間、尾上さんがブランデッド・コミュニケーション部門(BC部門)の審査委員長を務め、今年から栗林さんがそのバトンを受け取られました。どのような経緯で、栗林さんが新たな審査委員長に選任されたのでしょうか?

尾上 審査委員長は、前任の審査委員長が指名することになっているんです(編集部注:本記事公開時点のBC部門における運用であり、全体の共通ルールではありません)。BC部門が設置されて最初の審査委員長が菅野薫さん(2018-2020年)、その後に橋田和明さん(2021-2022年)、僕(2023-2024年)と続いて、栗林さんは4代目審査員長となります。

栗林さんは、部門がスタートして2年目からBC部門の審査員を務めていて、長くこの部門を見続けているという経験は大きいですね。必ずしも経験が長い人を選ぶ必要はないのですが、この部門の審査委員長は、受賞作品を選ぶのがかなり難しいんです。「プロモーション・アクティベーション」「デジタルクラフト」「ソーシャル」という3つの領域にまたがって審査するので、どれかに専門特化している人ではなく、全体をバランスよく見られる人である必要があります。また、その人が審査委員長になった時に何か変化が起きそうだなと思えること、そして他の審査員や応募者にとって納得度が高いプロフェッショナリティを持っていることも重要です。

栗林さんは、「ソーシャル」の分野を切り開いてきた人であることは間違いありませんし、そこを入口にデジタルクラフトや、プロモーション・アクティベーションにもカバー領域を広げてきました。経験・実力・実績ともに申し分なく、審査委員長をやらない理由がないと思いました。
 
尾上 永晃 氏
電通 zero 
プランナー・クリエイティブディレクター

なんでもありで臨機応変なコミュニケーション設計を得意としている。最近の主な仕事は「もしも東京の真ん中に、山があったら。」「みんなでピノゲー」「カップニャードル」「藤原竜也CookDo」「#667通のラブレター」「サンクチュアリ:ジャイアント猿桜像」など。ACC BC部門審査委員長や「コピー年鑑2022」編集長も務め、そのストレスの影響からか痛風発作が頻発。体質改善に挑みながら8時間寝ている。

栗林 尾上さんが誰を後任に選ぶか予測して、おおよその目星をつけていたくらいなので、指名いただいた時はとても驚きました。だいぶ長く審査員をやっているし、そろそろ呼ばれなくなってもおかしくないな…と覚悟していたので、驚くと同時に嬉しかったです。

自分なりに、BC部門を「こうしていきたい」というイメージも持っていました。僕は、自分自身を育ててくれた「広告」というものを、もっともっと面白くしていきたいと思っているんです。現在は広告制作よりもコンテンツや事業づくりに携わることが多いのですが、広告・コミュニケーション領域で培った知恵は非常に汎用的で、極めて有用で、世の中を良くしていけるものだという確信があります。

でも、世の中一般では、広告はそのように捉えられていないんですよね。コンテンツやWebを含むデジタル体験など、あらゆるものに広告の知恵・技術は注入されているにもかかわらず、「具体的に、どこが広告の知恵・技術か」が可視化されていないために、正しく評価されていないと感じています。「こういうものも、広告の一種なのか」「広告の知恵や技術で、こんなに面白いものがつくれるのか」ということを可視化できたら、関わる人全員がハッピーになるはず。広告に育ててもらったからこそ、その力を証明したいという思いがあります。

また、広告を“嫌われ者”にしたくないという思いもあります。コンテンツづくりをしていると強く思うのですが、「広告業界」「広告屋」といったレッテルは、時にユーザー(消費者)から穿った見方をされてしまうことがあります。裏でお金が動いているとか、大人の事情が働いているとか……。それ以上に、こんなに面白い人が集まっていて、こんなに面白いものが生み出されているんだという側面を、業界内外に向けて証明したいと思っています。
 
栗林 和明 氏
CHOCOLATE
チーフコンテンツオフィサー

CHOCOLATE Inc.のチーフコンテンツオフィサー/クリエイティブディレクター。
映像企画を中心として、空間演出、商品開発、統合コミュニケーション設計を担う。
【受賞歴】
Ad Age「40 under 40」、ACCグランプリ、JAAA CREATOR OF THE YEARメダリスト、Cannes Lionsゴールド、国際短編映画祭SSFF&ASIA部門大賞ほか、Spikes Asia、文化庁メディア芸術祭、ACC、釜山国際広告賞、など
【審査委員歴】
ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS、YouTube Works Awards Japan
【主な作品・お仕事】
映画『KILLTUBE』開発中、映画『14歳の栞』企画プロデュース、映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』宣伝、サントリー「GEKIAWA THE STRONG」「️スパークリングパーク」、「6秒商店」、lyrical school「スマホジャックMV」、「相鉄レコードプロジェクト」、Vlog映画「もう限界。無理。逃げ出したい。」、「#とろねこチャレンジ」、「クリープハイプのすべ展」など

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録