なぜ無印良品は長く愛されているのか? ブランドの価値は「正解」ではなく「センス」にあるという話
2026/02/26
センスは、才能ではなくスキルである
アジェンダノートのロゴデザインを手がけたクリエイティブディレクター/アートディレクター・秋山具義氏の著書『こうやって、センスは生まれる』が2月25日に刊行された。
『こうやって、センスは生まれる』(秋山具義著、SBクリエイティブ)
近年、「センス」は、いわゆるクリエイターやアーティストのみならず、ビジネスパーソンにとっても重要なものと認識され、関心が高まっている。とはいえ、それは特別な人だけが持つ才能で、自分とは縁遠いものだと諦めている人も少なくないのではないだろうか。
本書は、センスは生まれつきの才能でも特別な能力でもなく、身につけ、磨くことができる「スキル」であるとし、「センスがいい人」になるための方法を再現性のある形で紹介している。
マルちゃん正麺、AKB48、フェンシング日本代表の「JAPAN」の新国章デザイン、アミノサプリなど、世の中を動かすムーブメントを数多く生み出してきた秋山氏は、「センスとは、人を『ハッ』とさせる力である」と言う。 街角のポスター、SNSで偶然目にした一文、パッケージの色使い、会議での一言、自然な言い回しの営業トーク、ママ友の集まりでの話題の切り替え方、あるいは誰かのちょっとした振る舞い……そうした場面で「ハッとする体験」をしたことはがあるはず。そうした体験の裏側に共通しているのが「センス」なのだという。
本書では、センスを
①知覚 =世界の「普通」と「半歩先」を知る
②組み替え = 世界の「普通」と「半歩先」を組み替える
③表現 =「調整+伝わり方」でセンスの精度を上げる
という3つのステップに分解し、センスを身につけ、磨くための実践的な方法を提示している。
「一定以上のクオリティの成果物」や「多くの人にとっての正解」は誰もが簡単に生み出すことができるようになったAI時代。仕事でも、趣味でも、日々の暮らしでも、地域の活動でも、自分という人間が介在することの意味を見出したい、自分ならではの価値を生み出したいと考える人に必携の一冊と言える。
刊行に際して、本稿では、本書のポイントや読み方の指南、アジェンダノート読者であるマーケターがセンスを身につけることの意義、そしてセンスによって事業が伸びている企業などについて、秋山氏に聞いた。
センスとは、「十歩先」ではなく「半歩先」を提示すること

デイリーフレッシュ株式会社 代表取締役
クリエイティブディレクター/アートディレクター
1966年秋葉原生まれ。1990年日本大学芸術学部卒業。同年、株式会社I&S(現I&S BBDO)入社。1999年デイリーフレッシュ設立。日本大学芸術学部 デザイン学科 客員教授。iU情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。広告キャンペーン、パッケージ、ロゴ、キャラクターデザインなど幅広い分野でアートディレクションを行う。
主な仕事に、東洋水産「マルちゃん正麺」広告・パッケージデザイン、日本フェンシング協会「新国章」デザイン、松竹「十八代目 中村勘三郎 襲名披露」ポスター、立命館大学 コミュニケーションマークデザイン、AKB48「ヘビーローテーション」CDジャケットデザインなど。「日本パッケージデザイン大賞2017」にて「マルちゃん正麺カップ」が金賞受賞。著書に「世界はデザインでできている」「ファストアイデア25」がある。
2016年より「食べログ」グルメ著名人としても活動。テレビ朝日『キッチンカー大作戦!』にグルメ賢者としてレギュラー出演、J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』にランチの達人としてレギュラー出演中。 2025年3月にカイカイキキのギャラリー「Hidari Zingaro」にて『秋山具義の陶芸展』開催。
ーー 「センス」というキーワードだけを見れば、世の中には多くの類書があります。今回の『こうやって、センスは生まれる』は、それらとどのような違いを意識して執筆されましたか。
クリエイターだけに向けた本ではなく、ビジネスパーソンや学生や主婦など、誰にでも使える、「センスの導き方」を書きました。
「センス = 斬新・独創的・派手なもの」と思いがちですが、「センス」とは「十歩先を行くこと」ではありません。十歩も先を走ってしまえば、たとえ素晴らしいアイデアでも相手には理解されず届きません。一方で、既存の枠の中に収まってしまえば、「どこかで見たことがある」と印象に残らない。斬新すぎても凡庸すぎても人の心には届かないと思います。
「センス」が光るのは、十歩先では行き過ぎで、その手前の「半歩先」です。共感と予想外のちょうど間にある「心地よいズレ」という「半歩先」を提示できることで、「人をハッとさせるアウトプット」につながります。
センスとは「感覚的ひらめき」ではありません。センスがいい人は、無意識のうちに次のような3つのステップを踏んでいます。
① 知覚 = 世界の「普通」と「半歩先」を知る
② 組み替え = 世界の「普通」と「半歩先」を組み替える
③ 表現= 「表現+調整」でセンスの精度を上げる
「知覚」こそ、センスの出発点であり、“感性の筋肉”を鍛える場です。世界の情報をただ見ることではなく、自分の「当たり前」と世界の「当たり前」を見比べ、そのズレを感じ取ること。言い換えれば、「知覚」とは「センスの種」を拾い集める作業です。
世界を観察する目を持つことが「知覚」だとすれば、その観察で得た断片をつなぎ合わせて「意味」を生み出すのが「組み替え」です。センスとは、「関係性を組み替える力」でもあります。
・当然だと思っているものを、反転させる。
・一度バラバラにして、再構成する。
・「違和感」を手がかりに、別の形に編み直す。
このように、既存の要素の「つながり方」を変えることが、創造の本質です。
「新しい何かを作る」のではなく、「すでにある世界を別の文脈で再編集する」こと。それが、「組み替え」という考え方の核なのです。
そして、「表現」は、単なる技法ではなく、「伝わり方」を設計すること。
たとえば、デザインなら余白やバランス。コピーなら言葉の強弱。会話なら声のトーンや間。どれも「少しの調整」で結果が劇的に変わります。センスの正体は、実はこの「伝わり方」への微妙なこだわりにこそあるのです。
「知覚」「組み替え」「表現」。この3つを意識的に使いこなせば、どんな時代でも、世界の見え方を変えられると思っています。
ーー 本書のおすすめの読み方はありますか。
基本は、第1章から読んでほしいですが、すぐに活用したいという人は、第3章で「知覚」「組み替え」「表現」の概略を押さえて、第4章 知覚 – 世界の「普通」と「半歩先」を知る、第5章 組み替え – 世界の「普通」と「半歩先」を組み替える、第6章 表現 – 「調整 + 伝わり方」でセンスの精度を上げる を読んでから、第1章・第2章を読むのもいいと思います。




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