クリエイティブ

なぜ無印良品は長く愛されているのか? ブランドの価値は「正解」ではなく「センス」にあるという話

センスの力が事業成長につながった「無印良品」

 

ーー 秋山さんから見て、「商品・サービスそのものや、広告・コミュニケーション施策のセンスが事業成長を支えている」と感じる企業があれば、ぜひ教えてください。

 無印良品の初期マーケティングには、「正解を示さない」という哲学がありました。

 1980年代、ブランド戦略として「こう使ってください」「これが便利です」といった説明ではなく、「『これがいい』ではなく、『これでいい』」というシンプルな理念を掲げていました。

 当時のマーケティングの常識からすれば、商品の魅力や機能を明確に伝えないことはリスクとされていましたが、無印良品はあえて「感じ取る余地」を残し、消費者が自分の感覚で選び、自分の言葉で価値を見つける。その体験そのものをデザインしたのです。

 結果として、「無印良品」というブランドは、「使う人が主役」という共感構造を持ちました。商品のデザインも、広告も、すべてに「余白」を残すことで、人の心の中に自然な想像を生む。つまり、論理的な正解を押しつけるのではなく、「感じさせる提案」で人を動かしたのです。

 これは、「センス=感性による編集力」という考え方を象徴する事例です。無印良品が提供しているのは「商品」ではなく「自分の感覚で選ぶという体験」。「正しさ」ではなく「心地よさ」を設計することこそ、センスのあるクリエイティブだと言えるでしょう。

もし当時、無印良品が他社と同じように「高品質」「低価格」「合理的」といった正解の言葉で説明していたなら、ここまで長く人々の生活に寄り添うブランドにはなっていなかったはずです。

無印良品の「これでいい」というコピーは、ただの宣伝文ではなく、感じる力を信じるブランド哲学の象徴でした。それはまさに、「正解に価値はない。センスにこそ価値がある」という考えを、最も美しく体現した例だと思います。


ChatGPTで作成

 

 ーー アジェンダノートの読者であるマーケターが「センス」を身につけると、どんな良いことがあると考えますか。

 AIの発達によって、「知っていること」そのものが優位性を持たない時代になったので、「正解を知っている」よりも、「正解にどうセンスを加えるか」がマーケターにも必要なことだと思います。

 AIはなくてはならないものになっており、仕事で活用している人は多いと思いますが、AIを動かすためには「文脈」や「感情」を明確に伝えることが大切です。

 ゴールに向けて情報を整理できる「構成力」と「編集力」を持った「AIに目的を正確に伝えるディレクション力」が大事。それが「センス」で、その力を身につけることがますます必要になっています。



※記事内で紹介した書籍をリンク先で購入すると、売上の一部がアジェンダノートに還元されることがあります。
他の連載記事:
クリエイティブ の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録